なんで俺のこと好きになってくれないの

「顔見ないで」

早く、帰らなきゃ。

全身が痛い。

特にあばらは、刺さってはないけど最悪折れてる。

左目、開けにくいな、腫れてんな。

病院には行きたくない。

家に帰りたい。

真琴のところへ帰りたい。



「ただいま…」

「久弥！」

真琴が走って、玄関まで来てくれた。

「大丈夫？　歩ける？」

心配してくれてるんだぁ。

嬉しくて笑ったら、切れた唇が痛んだ。

「大丈夫だよ。歩けるから」

フラフラしながらイスまでたどり着いた。

「組、抜けたよ」

真琴に笑う。

「小指、切らなくて済んだんだけどね。外出たら、イヤな先輩がいてね」

「やられたの？」

「うん、ボコられた。今度、殺すよ、あいつら」

あ、そう言えば。

「今日、雪人は？」

「さっき、ちょっと出てくるって」

「俺のこと、話した？」

「うん」

そっか。



またフラフラしながら、鏡を見に行った。

うわぁ…。

めちゃくちゃじゃん。

あいつら、絶対殺してやる。



俺は黙って、ベッドに行った。

真琴が追いかけてきた。

ベッドに横になろうとする。

痛ぇ。

くそっ。

なんとか仰向けになった。

真琴が俺の横に座った。

「大丈夫？」

顔を覗き込まれるのがつらかった。

「あんまり、顔見ないで」

こんなボロボロの顔、見ないで、真琴。

俺はつらくて、目を閉じた。

左腕で顔を隠した。