炭酸水を飲んでみよう

日比谷ナオキ

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先入観と真実の乖離

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 炭酸水と聞いて、貴方は何をイメージするだろうか。恐らく、飲んだ事はあるけど、味が無くて美味しくない…といった人が多数では無いだろうか。
 しかし、私はそれは間違いであると言いたい。そもそも、皆の頭の中には、「炭酸飲料=甘くて爽快な飲み物」というイメージがついていないだろうか?確かに、ファンタシリーズやコカ・コーラ等の飲み物はとても甘味で爽快だ。けれども、それらの甘さは人工甘味料によって付けられた、人工的な甘さなのだ。
 一方で、炭酸水はどうだろうか。これは至極単純な事であるが、水と炭酸の二つで構成された飲み物。もっと言ってしまえば、水に炭酸を注入しただけの飲み物だ。ここに、甘味料等は含まれていない。だとすれば、甘くないのは当然だ。
 私が言いたいのは、だからと言って炭酸水の方がジュースよりも不味いという訳では無いという事だ。葡萄には葡萄、蜜柑には蜜柑の味がある様に、それぞれの個性が飲み物にもあるという事だ。
 炭酸水を不味いと思ってしまう心理は、「炭酸の含まれた清涼飲料水と比べてしまう」という点にあるはずだ。現代人の多くは、炭酸水よりも先に炭酸の含まれたジュースを飲む。脳はそれを「炭酸の味」と認識するから、これが当たり前の味であると思い込む。その後、何かをきっかけに炭酸水を口にした際に、「理想との乖離かいり」が脳内で引き起こされ、「不味い」と思い込むのだ。
 確かに清涼飲料水と比べると、炭酸水は薄味で物足りないものかもしれない。しかし今一度、炭酸水というものを考え直して飲んでみて欲しい。「甘いと思っていたら、無味で美味しくなかった」。これは、先入観で描いた空想と現実が違うからこそ、脳が不快感を抱く。これは仕方が無いことだ。けれども、そのものの本質をその乖離した部分そのままだと思い込む、つまり、「炭酸水は期待していた味と違うからまずい」と思い込む事は、誠に勿体ない事だ。
 私的には、比較する対象を「水道水」へと変えてみるのがオススメだ。普通の水と比較すれば、炭酸特有の爽快感や、パチパチ弾ける喉越しを存分に堪能出来るはずだ。
 無論、そう思い込んで炭酸水を飲む事は難しいだろう。ただ、「炭酸」と一括りで済ませる事で引き起こされる「味」の乖離。もしこれが、他の物事にも起こされているとしたらなかなかの大問題だ。こんなもん読んだ所で、炭酸水なんて飲めるか。と思った人でも、考えて欲しい。先入観と現実が違うからと言って、どうかそれをそのままに受け止めないで頂きたい。貴方の知り得る真実は、よりもっと深い所にあるのかもしれない。物事への乖離を受け止め、それを理解した上でしっかりと飲み干す事で、本当の味を掴んでいけるはずだ。
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