自分の飯すら守れねえ奴が家族なんか作んなよ

一枚の手紙

｢なに……これ？｣

紙を広げてみると、続きが書いてあった。達筆な、前々から考えていたかのような、灰色のカラスくんの字だ。

『近々、結婚するんだってな。おめでとう。でもさ、俺はお前を見てるとどうも不安な予感がしてならないんだ。だから、こういう形でお前に忠告する事にした』

そんな、忠告だって？人の家のご飯を食い散らかしておいて、そんな無茶苦茶な進言があるか。僕は怒りに燃える頭の炎を何とか鎮めて、彼の手紙を読み進めた。

『この世界は弱肉強食だ。お前みたいな優男なんて、あっという間に卑怯者の食い物にされちまう。増してや、妻子持ちなんて尚更だ。良いか、俺でさえ裏切るんだ。他人を疑う事を忘れるなよ』

僕はこの文章を読んだ途端、おどろおどろしい負の感情の中に、なにか別のものが生まれるのを感じた。けど、それが何かはわからなかった。僕は手紙を破り捨てて、苛立ったままベットに入った。