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白い風船の下で
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雲の海を割くように、白い飛行艇は静かに進んでいた。
細長い風船の中央に描かれた大きな赤い十字が、青空によく映える。
この飛行艇《アルバ・サルース号》は、国も種族も問わず、争いや災厄に巻き込まれた人々を救うためだけに飛ぶ船だ。
世界には国境がある。
だが空には、線など引けない。
操縦席では、若い操縦士が風を読む。
船内では魔法符師が符を生成し、医師が包帯を巻き、
時には魔法、時には純粋な知識だけで命をつなぐ。
今日の目的地は、山と山に挟まれた小さな谷の村。
二つの国の境界線上にあり、どちらの国からも
「関係のない場所」として見捨てられていた。
争いで壊れた橋。
薬の届かない子どもたち。
助けを呼ぶ声すら、どこにも届かなかった場所。
だが、空からは違った。
「見えた。あそこだ」
誰かが言うと、船内の空気が引き締まる。
ランプが灯り、医療箱が並べられる。
飛行艇《アルバ・サルース号》が高度を下げると、
村の人々は最初、怯えたように空を見上げた。
だが、白い風船と赤い十字に気づいた瞬間、
その表情は希望に変わった。
彼らは知っている。
あの印は、敵ではないという証。
助けに来たという合図。
飛行艇は地面すれすれで停止し、
ロープが下ろされる。
誰かの命を救うために、
誰かの痛みを減らすために、
この船は今日も国境を越える。
帰る国はない。
守る旗もない。
あるのはただ――
「助けを必要とする人のもとへ行く」
その覚悟だけ。
雲の上で、白い風船は静かに揺れていた。
細長い風船の中央に描かれた大きな赤い十字が、青空によく映える。
この飛行艇《アルバ・サルース号》は、国も種族も問わず、争いや災厄に巻き込まれた人々を救うためだけに飛ぶ船だ。
世界には国境がある。
だが空には、線など引けない。
操縦席では、若い操縦士が風を読む。
船内では魔法符師が符を生成し、医師が包帯を巻き、
時には魔法、時には純粋な知識だけで命をつなぐ。
今日の目的地は、山と山に挟まれた小さな谷の村。
二つの国の境界線上にあり、どちらの国からも
「関係のない場所」として見捨てられていた。
争いで壊れた橋。
薬の届かない子どもたち。
助けを呼ぶ声すら、どこにも届かなかった場所。
だが、空からは違った。
「見えた。あそこだ」
誰かが言うと、船内の空気が引き締まる。
ランプが灯り、医療箱が並べられる。
飛行艇《アルバ・サルース号》が高度を下げると、
村の人々は最初、怯えたように空を見上げた。
だが、白い風船と赤い十字に気づいた瞬間、
その表情は希望に変わった。
彼らは知っている。
あの印は、敵ではないという証。
助けに来たという合図。
飛行艇は地面すれすれで停止し、
ロープが下ろされる。
誰かの命を救うために、
誰かの痛みを減らすために、
この船は今日も国境を越える。
帰る国はない。
守る旗もない。
あるのはただ――
「助けを必要とする人のもとへ行く」
その覚悟だけ。
雲の上で、白い風船は静かに揺れていた。
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