ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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My important friend

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「ちょっと、采! あの子はどうしたのよ!? 」

 叔母である恵美に問い質され、采は言葉に詰まった。

 今日は四十九日法要の当日であるのに、親族席に達実の姿はない。

 とうとう法要が終わりになっても達実は現れないことに、恵美はずっとヤキモキしていたようだ。

 施主役を務めている采が法要に集まった面々へと会食へ移る挨拶をして、一区切りついたタイミングを計りながら、隣で端座していた恵美は小声で問い掛けてきた。

「あの子、このまま姿を現さない気なのかしら……あんた、連絡したの? 」

「――電話はしてるんだが、電源を切っているみたいで……」

「やっぱり、奏の所へ帰ったのかしら……それなら、せめて一言くらい連絡くらいはあってもいいと思うけど――ったく、またあんたが何か怒らせるような事を言ったんじゃないでしょうね? 」

「……」

 恵美の追及に、采は無言になった。

 達実を怒らせた心当たりなら、充分過ぎる程にある。

 故に、采は恵美と視線を合わせる事が出来ずに、スッと顔を逸らした。

「――――騙されて日本に来ただの、早々に奏の所へ帰るんだと散々文句を言っていたから、きっと北欧へ帰ったんだろう」

「でも、変じゃない? 」

「……」

「何だかんだ言って、あの子は兄さんに懐いていたんだ。直ぐに帰るにしても、この法要くらいは出席するハズじゃないのか? 」

 恵美の追及をはぐらかすように、采は席を立って、招待客との会話に移った。

 背中に突き刺さるような、恵美の怪しむような視線を強く感じながら、采は張り付いた笑みを浮かべて招待客をもてなす。

 そうしながら、采は内心で反論を展開していた。

(正直に言えるわけがないじゃないか! 義理の弟に迫られた上、殴り合いになったなんて! それにしても、達実――――お前いったいどこにいるんだ!? )

 まさか、本当に北欧へ帰ったのだろうか?

 采は、努力して微笑みをキープしながら、涙を浮かべて去って行った達実のことがどうしても気になってグッと拳を握り締めた。

   ◇

 そのころ達実は、成田空港にいた。

 しかし荷物はなく、手ぶらだ。

 何故なら、彼はここから出国するのではなく、これから来日するゲストを迎える立場であるからだ。

 目立たないようにキャップを被り、色褪せたタンクトップと擦り切れたダメージジーンズを履いた達実は上手く一般人に紛れ込んでいるつもりであるが、抜群のボディーバランスと、アルファ特有の華やかなオーラは隠しきれるものではない。

 誰もが達実を見ては、驚嘆の溜め息をついて足を止めている。

 だが、達実はそんな事には気付かない。

――――何故なら、それはいつもの現象であったからだ。

 どこにいっても注目を集める彼は、他人に視線を向けられることにすっかり慣れてしまい、それを一々気に掛けることもなくなっている。

 母の奏などは、今でも衆目を浴びる事には慣れず、学会で様々な人物に囲まれる事を苦手としているのに。

 これが、庇護者であるオメガと、征服者であるアルファの違いかというばかりに差がある。

「そろそろだと思うけど……遅いな」

 苛立つように呟いた声も小さいのに、遠巻きになって彼に見惚れていた人々はビクリと身を縮める。その一挙手一投足に、誰もが魅せられていた。

 だが、当然のように達実はそれらに気付かない。

 彼はただ、入国ゲートをジッと見て――――そして、目当ての人物を見つけると、パッと笑顔になって手を振った。

「アレン――! 」

「タツミ!!  My dear sweetheart! 」

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