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Cross-purposes of the love
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しおりを挟む煌々と照らすライトの下で、熱い息遣いを繰り返しながら二人の人物が絡まり合っていた。
よほど激しく動いたのか、枕もクッションもベッドの上から放り投げられ、上掛けも床に落ちている。シーツも、既にグショグショの皺だらけだ。
互いの体液が飛び散ったそれに顔を埋めながら、下になっていた青年は「ああ、ああ! 」と切ない声を絶え間なく上げている。
少女のような容姿をしたその青年は、采の愛人を務めていた、あのオメガであった。
「あ――いいぃ! 」
「くっ……」
ひときわ高く上がった嬌声に、采も腹筋を閉めて二度、三度と腰を突き上げる。
男の熱を体内で受け止めながら、青年もまた激しく後孔を開閉して、雄芯を貪るように腰を振った。
「う……ん、最高ぉ……」
甘い息を吐き、呼吸を整える愛人から身体を離しながら、采はチッと舌打ちをする。
「どうせ、同じセリフを他のアルファにも言ってるんだろう? 」
「え~? そんな事ないよぉ。今のオレは采の専属だよ? だからこうして、采の呼び出しに直ぐに来れたんじゃないか。ねぇ、これからさ――」
「ああ、急に呼び出して悪かったな。むしゃくしゃして、どうにも一発抜きたかった」
相手の言葉を待たずにそう告げると、采はベッドから降りてシャワーを浴びに寝室を出て行った。
オメガの青年も慌てて、その後を追う。
「ちょっと! いくら何でも切り替えが早過ぎるんじゃない? 」
「……このあと、ワガママな弟を捕まえに行かなきゃあならないんだ。いきなりあの顔を見たらぶっ叩きたくなるかもしれないから、どうにか熱を発散しておきたくてな」
「それだけの理由で、オレを呼び出したの!? 」
オメガの青年は抗議するように唇をツンと上げると、両手を自分の尻に回して左右に開いた。
すると、尻の間から放たれたばかりの采の体液がトロリと流れ出す。
「ねぇ、オレの中で何回イッたと思ってるのさ? こんだけ出して……」
グチュリと自分の指でそこを掻き混ぜると、青年は淫猥に微笑む。
「本当は、このままベッドに戻って二回戦がしたいんじゃないの? オレはOKだよ。弟なんてどうでもいいじゃない。だからさ――采、聞いてるの? 」
青年の挑発に乗らずに、采はシャワーを浴びてさっさと自分の身体の汚れを落とす。
不満そうに傍らで立つ青年に「お前も身支度が整ったら帰るんだ」とだけ告げて、采はそのままシャワーブースを後にしようとした。
それに慌てて、青年は采を引き留めようと声を上げる。
「ちょっと、待ってよ! 弟って、この前マンションで行きあったあのアルファのことでしょう? 」
「ああ、そうだ」
「采は、あいつの事をどう思ってるの!? まさか、オレのように抱きたいって事はないよね? 」
「――」
言葉に詰まる采に、青年は尚も詰め寄る。
「アルファがアルファと番いになれるわけがない。だって君達は『征服者』だろう! そんなんで愛とか恋とか寝ぼけた事を言うなよな! 」
青年の言葉は、采の頭に冷や水を掛ける作用があった。
さっきまでの性交で若干残っていた欲望が、一気に鎮静化する。
傍で立っていた青年にも、それは如実に分かった。
全裸のままで媚態を尽くし、再び愛人を閨へ誘おうとしていたのだが、ものの見事に失敗してしまったようだ。
(弟の話題は鬼門だってのに、オレってば何をしゃべってるんだ)
愛人を生業として生きるオメガにとって、これはあってはならない失態だ。
ましてや、アルファの『番』の座を狙っている身としては、上手く相手の歓心を得て懐に入り込まねばならないのに。
相手を不快にさせては、本末転倒だ!
「さ、采――ごめんね……この前の記念日に、一緒にご飯に行けなかったから……オレ、今日こそはって結構期待していたんだ。それでつい、ヤキモチ焼いちゃった」
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