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Cross-purposes of the love
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可能な限りいじらしい素振りで言うと、青年は上目遣いになって采を見上げる。
「ねぇ、もう少しだけ一緒にいようよぉ」
「――悪いが……」
断りかけるところを、すぐさま縋りついてそれを阻止する。
「お願い! ね、ね、いいでしょう? 」
そう甘く囁き、青年は婀娜っぽく髪を掻きあげた。
オメガフェロモンは、項から濃厚に放たれる。
青年は、意図的に発情抑制剤を飲んでいない。
そして、数日後にはヒートの周期がやって来る……最高潮ではないが、それでも十分に現在オメガフェロモンは発散されている筈だ。
誘惑するように、ピンク色の舌を出して己の唇をゆっくりと舐めてみせながら、伺うように言う。
「……采だって――――そんな面倒臭い弟の世話なんて、本心では嫌なんでしょう? 怖い叔母さんの命令? 」
「まぁ……それもあるが」
「そんなの、無視してもいいんじゃないのぉ? だって采はアルファなんだよ? オメガの叔母さんに命令されて従うのは変だよ」
「――」
「采は、皆に寄ってたかっていいようにこき使われているようにオレからは見えるよ。そんなの、アルファの沽券に係わる問題じゃないの」
青年の言葉は、上手い事、采のアルファとしてのプライドを刺激する。
恵美から一ヵ月の休暇を言い渡され、義弟の達実の面倒を見てやれと命令された。
しかし肝心の達実は、父である九条凛の法要にはとうとう顔を出さずに、皆が引き払った後にのこのこと墓を訪れたらしい。
どこかの、知らない外人男性と一緒に。
大輪の薔薇の花束を持って。
残って墓周りの片付けの手伝いをしていた恵美の部下が、それを見たそうだ。
――――その外人は、一目でアルファと分かる堂々とした体躯の青年だったらしい。
時を置かず、采の元へ情報が届いた。
その青年の名はアレン・シン・アウラ。
アメリカの大財閥であるアウラ一族の御曹司で、将来間違いなくアウラを率いると目されている男だ。
年齢はまだ23歳だが、大学に通いながら、既に会社を幾つか経営しているらしい。
達実との接点を調べたところ、達実がミドルスクールの夏季休暇の時に、何らかのフィールドワークとしてアリゾナを訪れた際に現地で知り合ったようだ。
その他の詳しい経緯までは分からなかったが、とにかく二人は5歳の年齢差をものともせずに、直ぐに意気投合して友人になったらしい。
その友人が急遽日本へ来日したので、達実はそちらを優先させて行動したようだ。
葬儀に続き、今度は四十九日だ次は一回忌だという話を聞かされても、外国育ちの達実にとっては困惑するばかりだったろう。
日本人ではあるが、外国育ちの達実は何とも不可解な習わしだと感じたかもしれない。
それこそ、慣れない土地にわざわざ来る友人を優先して迎えに行ったとしても、仕方がないと采も思う。
――――だが、こちらとしては、やはり父親の法要をもっと重要事と考えて行動してほしかった。
僧侶も関係者も帰った後になって、豪勢な花束を以って訪れるでは……九条としても格好がつかないではないか。
「……とにかく、オレはこれからあいつの首根っこを捕まえて説教しなけりゃならん。今日は帰れ」
誘惑には乗らずに、采はバスルームを出て行った。
その後ろ姿を、思いつめたような顔で、オメガの青年がジッと見つめていた事にはとうとう気付かずに。
「ねぇ、もう少しだけ一緒にいようよぉ」
「――悪いが……」
断りかけるところを、すぐさま縋りついてそれを阻止する。
「お願い! ね、ね、いいでしょう? 」
そう甘く囁き、青年は婀娜っぽく髪を掻きあげた。
オメガフェロモンは、項から濃厚に放たれる。
青年は、意図的に発情抑制剤を飲んでいない。
そして、数日後にはヒートの周期がやって来る……最高潮ではないが、それでも十分に現在オメガフェロモンは発散されている筈だ。
誘惑するように、ピンク色の舌を出して己の唇をゆっくりと舐めてみせながら、伺うように言う。
「……采だって――――そんな面倒臭い弟の世話なんて、本心では嫌なんでしょう? 怖い叔母さんの命令? 」
「まぁ……それもあるが」
「そんなの、無視してもいいんじゃないのぉ? だって采はアルファなんだよ? オメガの叔母さんに命令されて従うのは変だよ」
「――」
「采は、皆に寄ってたかっていいようにこき使われているようにオレからは見えるよ。そんなの、アルファの沽券に係わる問題じゃないの」
青年の言葉は、上手い事、采のアルファとしてのプライドを刺激する。
恵美から一ヵ月の休暇を言い渡され、義弟の達実の面倒を見てやれと命令された。
しかし肝心の達実は、父である九条凛の法要にはとうとう顔を出さずに、皆が引き払った後にのこのこと墓を訪れたらしい。
どこかの、知らない外人男性と一緒に。
大輪の薔薇の花束を持って。
残って墓周りの片付けの手伝いをしていた恵美の部下が、それを見たそうだ。
――――その外人は、一目でアルファと分かる堂々とした体躯の青年だったらしい。
時を置かず、采の元へ情報が届いた。
その青年の名はアレン・シン・アウラ。
アメリカの大財閥であるアウラ一族の御曹司で、将来間違いなくアウラを率いると目されている男だ。
年齢はまだ23歳だが、大学に通いながら、既に会社を幾つか経営しているらしい。
達実との接点を調べたところ、達実がミドルスクールの夏季休暇の時に、何らかのフィールドワークとしてアリゾナを訪れた際に現地で知り合ったようだ。
その他の詳しい経緯までは分からなかったが、とにかく二人は5歳の年齢差をものともせずに、直ぐに意気投合して友人になったらしい。
その友人が急遽日本へ来日したので、達実はそちらを優先させて行動したようだ。
葬儀に続き、今度は四十九日だ次は一回忌だという話を聞かされても、外国育ちの達実にとっては困惑するばかりだったろう。
日本人ではあるが、外国育ちの達実は何とも不可解な習わしだと感じたかもしれない。
それこそ、慣れない土地にわざわざ来る友人を優先して迎えに行ったとしても、仕方がないと采も思う。
――――だが、こちらとしては、やはり父親の法要をもっと重要事と考えて行動してほしかった。
僧侶も関係者も帰った後になって、豪勢な花束を以って訪れるでは……九条としても格好がつかないではないか。
「……とにかく、オレはこれからあいつの首根っこを捕まえて説教しなけりゃならん。今日は帰れ」
誘惑には乗らずに、采はバスルームを出て行った。
その後ろ姿を、思いつめたような顔で、オメガの青年がジッと見つめていた事にはとうとう気付かずに。
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