ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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Cross-purposes of the love

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「わかった、僕の負けだよ。ただし、一杯だけだぞ」

「Jesus! そうこなくっちゃ! 」

 アレンは嬉しそうに笑ってグラスを渡そうとするが、

「……う~ん、それはもしかして強いんじゃないのか? 僕にはもっと弱いので頼むよ」

 と、達実は先制するように言う。

「僕は去年、フランス人の友達に勧められて3%の低アルコール飲料を飲んだけど……すっかり酔っ払って、せっかくのホームパーティーを退席してカウチで寝入ってしまったんだ。どうも、僕は酔いやすいタイプなのかもしれない」

「それは初耳だ。知らなかったよ」

「奏も酔いやすいから、もしかしたら僕のこれも遺伝かもな」

 ハハっと零れるような笑みをもらす達実を、アレンは眩しいもののように見遣る。

「君は、母上が本当に大好きなんだねぇ。君達親子を見ていると、じつに羨ましいよ」

「そうかい? いたって普通じゃないのか? 」

「とんでもない。私の父など、オメガの妻が3人、外にもオメガの愛人が4人もいるんだ。そして子供たちは全員が家庭教師とメイドが育てて、揃って寄宿舎行きだ。ウチには親子の情も何もあったもんじゃない。アルファとオメガというのは――――間には肉欲しかないのかとうんざりするね」

 吐き捨てるように言うアレンに首を傾げ、達実は口を開く。

「でも、アレンだってオメガの愛人を何人か囲っているじゃないか」

「そんなもの――――」

 言葉を区切り、アレンは達実をジッと見つめる。

「日本に来る時に、全員切ってきたよ」

「ウソだろう!? 」

「本当だ」

「ピアニストの姫君は? ハリウッド女優は? 」

「みんなお別れをしたよ」

「アレン~、君はアウラ家の後継者だろう? そうやっていつもフラフラして本命も決めないで――――秘書のマイクは、彼女達と別れたって知ってるのかよ? 」

「秘書などアメリカに置いてきたよ。君と会うというのに、あいつは無粋な事を言い出しそうだし」

 そう言いながら、アレンはミニバーに陳列してあった幾つかの酒やソフトドリンクを使って、器用にシェーカーを振った。

「さ、君の為に作ってみたよ」

「すごいな! 本物のバーテンダーみたいだ。アレンは何でも出来るんだな! 」

 綺麗な紅茶色のカクテルを、達実は上機嫌になって受け取る。

「このカクテル、名前は何て言うんだ? 」

「ロングアイランド・アイスティーだよ。どうだい? 甘くて飲みやすいだろう? 」

 勧められるままに、一口飲んでみる。

 確かに、甘くておいしい。

 それにアイスティー・・・・・・だというし、本当にアルコールはあまり入っていないのだろう。

 達実はそう判断すると、グラスを眼前へ掲げた。

「じゃあ、乾杯! 」

「乾杯」

 チンッとグラスの触れる音がして、達実はカクテルを、アレンはウイスキーを飲んだ。

 達実が飲んだロングアイランド・アイスティーは、紅茶を一滴も使わずに、見た目と味を紅茶に近づけた点が特徴のロングドリンクである。

 砂糖やコーラを使うので甘くて飲みやすいが――――じつは、その正体はウォッカベースのカクテルであり、他にもジンやテキーラなども使用するので、大変アルコール度数は高いカクテルであった。


――――そう、レディー・キラー女殺しカクテルと異名を持つほどに。


「う……ん……何だか、ちょっと眠くなってきたかも……」

 勢いよくカクテルを飲み干した達実は、言葉通り眠そうな様子で眼を擦った。

 それを見ながら、アレンはニコリと笑う。

「そうかい? それじゃあ少し横になったらいい。……夕食はしばらく遅らせるように連絡しておくよ」

「うん……ごめん……」

 美しい瞳をパチパチと瞬かせながら、達実は愛らしい唇を開いて欠伸をする。

「ふぁ……奏のところにも――早く戻らないとダメなんだけど……」

 奏は大切な母だ。可愛いオメガだ。自分が近くで守ってやらねば――――。

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