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Cross-purposes of the love
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「ん……? 」
「だから、君は女性としか付き合う気はないのかと訊きたいんだけど」
「oh! そんな事、あるワケがないじゃないか。私は――」
「だったら、ちょっと会ってほしい人がいるんだ! すごくいい人なんだよ。奏の研究施設に勤めている人で……」
「私の事よりも、今は、君の恋の話だ」
アレンはキッパリとした口調で達実のセリフを遮ると、真剣な眼差しになってジッと達実を見つめる。
「君は――その義理の兄上に、本気で惚れているのか? 」
直球の質問に、達実は曖昧な様子で微笑を浮かべ、視線を伏せた。
その仕草が何とも嫋やかで儚げで、普段の天真爛漫とした達実とは激しい落差が生じる。
そのギャップに、アレンの中の獣が刺激されるという事に気付かず、達実は小さな声で呟いた。
「…………うん……僕は、采の事が好きなんだ……」
「Oh my God!……あぁ――何という事だっ! 」
アレンは大仰に嘆くようなリアクションをすると、目頭を片手で押さえながら、グラスに酒を注いだ。
「私は、何と不幸な男なんだろう。君の口からハッキリと、そんな残酷な事を告げられるとは」
「えぇ!? 訊いてきたのは、そっちじゃないか」
達実の抗議に、アレンは首を振りながら「でも私は聴きたくなかった」と恨めし気にグラスを差し出す。
「――――せめて今は、手酷い失恋をした私を慰めてほしい」
「はぁ? 」
「さぁ、乾杯しよう。君の前途多難な恋と、私の失恋に」
アレンのセリフに、達実は呆れたように抗議の声を上げる。
「言い方!……それにさ、僕はまだ18だから飲酒は禁止なんだけど? 」
「ハハハ、それは日本の話だろう? フランスなどは16歳から飲酒は可能だよ」
「アレンはアメリカ人だろう? アメリカの多くの州では21から――」
「No No!! この際、そんな野暮な事は言いっこなしだ。さぁ、長いフライトを我慢して会いに来たこの親友の為に、一杯くらい付き合ってもいいんじゃないのかい? 」
「まったく……アレンはおねだり上手だね、相変わらず……」
そう言われては、無下にも出来ない。
事実、達実はアレンに対して負い目がある。本来なら今回の休暇はアレンの居るアメリカで過ごす予定だったのだ。
自分もそれを楽しみにしていたし、アレンも期待して待っていてくれたようだった。
それが急遽変更になり、達実はアメリカではなく日本へ来たワケだが――――だが、こうしてわざわざアレンの方からここまで足を運んでくれるだなんて、世間の人が聞いたら腰を抜かすほど驚くだろう。
しかも、アレンがフライトに利用したのはプライベートジェットではなく、民間機である!
例えファーストクラスでも、彼のようなセレブにとっては、それは棺桶に身体を突っ込まれるような感覚に近く、ひどく狭く感じただろう。
アレンは、並のアルファではない。
金融業で巨万の富を得た、アウラ財閥の御曹司だ。
その彼が、こうしてわざわざ日本まで達実の為に来日した。しかも今は、しおらし気に首を垂れて、晩酌の相手をしてくれと達実へねだっているのだ。
これを断ったら人としてどうかと思うし、達実のことを不遜な若造だろうとアレンでなくとも眉をひそめるだろう。
――――だが、そんな事は、普段の達実ならば気にもしない。
自分の価値は自分で決める。
見も知らぬ他人の評価など興味もない。
相手が例え浮浪者だろうと王様だろうと、分け隔てなく公平に対応するように奏によって教育され、達実は健やかに育った。
いつもの彼であれば、
『ダメだ。ルールは守らないと。悪いけど僕にはノンアルコールの物を頼む』
と言って、断っただろう。
しかし、達実よりも大柄な体を縮めるようにしてこちらを伺うアレンを見ると……今回だけは、付き合ってやるかと思ってしまった。
「だから、君は女性としか付き合う気はないのかと訊きたいんだけど」
「oh! そんな事、あるワケがないじゃないか。私は――」
「だったら、ちょっと会ってほしい人がいるんだ! すごくいい人なんだよ。奏の研究施設に勤めている人で……」
「私の事よりも、今は、君の恋の話だ」
アレンはキッパリとした口調で達実のセリフを遮ると、真剣な眼差しになってジッと達実を見つめる。
「君は――その義理の兄上に、本気で惚れているのか? 」
直球の質問に、達実は曖昧な様子で微笑を浮かべ、視線を伏せた。
その仕草が何とも嫋やかで儚げで、普段の天真爛漫とした達実とは激しい落差が生じる。
そのギャップに、アレンの中の獣が刺激されるという事に気付かず、達実は小さな声で呟いた。
「…………うん……僕は、采の事が好きなんだ……」
「Oh my God!……あぁ――何という事だっ! 」
アレンは大仰に嘆くようなリアクションをすると、目頭を片手で押さえながら、グラスに酒を注いだ。
「私は、何と不幸な男なんだろう。君の口からハッキリと、そんな残酷な事を告げられるとは」
「えぇ!? 訊いてきたのは、そっちじゃないか」
達実の抗議に、アレンは首を振りながら「でも私は聴きたくなかった」と恨めし気にグラスを差し出す。
「――――せめて今は、手酷い失恋をした私を慰めてほしい」
「はぁ? 」
「さぁ、乾杯しよう。君の前途多難な恋と、私の失恋に」
アレンのセリフに、達実は呆れたように抗議の声を上げる。
「言い方!……それにさ、僕はまだ18だから飲酒は禁止なんだけど? 」
「ハハハ、それは日本の話だろう? フランスなどは16歳から飲酒は可能だよ」
「アレンはアメリカ人だろう? アメリカの多くの州では21から――」
「No No!! この際、そんな野暮な事は言いっこなしだ。さぁ、長いフライトを我慢して会いに来たこの親友の為に、一杯くらい付き合ってもいいんじゃないのかい? 」
「まったく……アレンはおねだり上手だね、相変わらず……」
そう言われては、無下にも出来ない。
事実、達実はアレンに対して負い目がある。本来なら今回の休暇はアレンの居るアメリカで過ごす予定だったのだ。
自分もそれを楽しみにしていたし、アレンも期待して待っていてくれたようだった。
それが急遽変更になり、達実はアメリカではなく日本へ来たワケだが――――だが、こうしてわざわざアレンの方からここまで足を運んでくれるだなんて、世間の人が聞いたら腰を抜かすほど驚くだろう。
しかも、アレンがフライトに利用したのはプライベートジェットではなく、民間機である!
例えファーストクラスでも、彼のようなセレブにとっては、それは棺桶に身体を突っ込まれるような感覚に近く、ひどく狭く感じただろう。
アレンは、並のアルファではない。
金融業で巨万の富を得た、アウラ財閥の御曹司だ。
その彼が、こうしてわざわざ日本まで達実の為に来日した。しかも今は、しおらし気に首を垂れて、晩酌の相手をしてくれと達実へねだっているのだ。
これを断ったら人としてどうかと思うし、達実のことを不遜な若造だろうとアレンでなくとも眉をひそめるだろう。
――――だが、そんな事は、普段の達実ならば気にもしない。
自分の価値は自分で決める。
見も知らぬ他人の評価など興味もない。
相手が例え浮浪者だろうと王様だろうと、分け隔てなく公平に対応するように奏によって教育され、達実は健やかに育った。
いつもの彼であれば、
『ダメだ。ルールは守らないと。悪いけど僕にはノンアルコールの物を頼む』
と言って、断っただろう。
しかし、達実よりも大柄な体を縮めるようにしてこちらを伺うアレンを見ると……今回だけは、付き合ってやるかと思ってしまった。
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