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Tender criminal
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そうして露骨に流し目をしながら、林檎はアレンに擦り寄ろうとした。
だが、アレンはそんな林檎を軽蔑したように見下ろして、スッと身体を引く。
「……さすがはオメガだ。お前達は、いつもそんな事しか頭にないんだな」
「はぁ? 」
「考えるのは、常に自分の保身だけか。見下げ果てたものだ」
「――」
「お前は本当にサイのことを愛しているから、私の話に乗ってあんな計画に協力したのだと思ったが……とんだ買い被りだったようだ。呆れたよ」
侮蔑の視線と言葉で一閃し、アレンは林檎を突き放す。
「――――望み通り、欲しいだけのカネは用意しよう。しかし愛人は間に合っている。お前とは、ここでお別れだ」
そう言い捨てて、SPに林檎を追い出させようとしたところ――――。
「待てよ! 」
林檎はそう強い声で言うと、なんと、アレンに形振り構わず縋り付いてきたのだ。
まさか林檎がこんな行動に出るとは思っていなかったアレンは、それを躱す間もなく抱き付かれてしまう。
距離を置いて見守っていたSPや侍従が、慌てて林檎を引き離そうと駆け寄る。
「貴様! アレン様から離れろ! 」
「いやだー!! 」
この華奢な身体のどこにこんな力があったものか。
そう思わずにはいられない程の力で、林檎はアレンに抱き付く。
「アンタのやりたいようにヤらせてやるから! フェラだろうとフィストだろうと何でも好きなようにやっていいから! だから――」
「だから、愛人は間に合ってると言っているだろう! 」
忌々し気に言い捨て、アレンは林檎を無理やり引き離そうとするが、それより先に林檎は思わぬことを言い出した。
「だから、頼むから――――あのアルファをあきらめてくれよ! 」
「……なに? 」
「っ! 」
SPに容赦なく腕を捻り上げられ、林檎の苦痛の声が上がる。
そのSPを片手を上げて制止すると、アレンは問うた。
「お前――自分が何を言っているのか分かってるのか? 私がタツミから手を引いたら、タツミは自由を手にした鳥のように、サイの元へと飛び立ってしまうかもしれないんだぞ? そうなれば、もうお前はサイの番になることは……」
そこでアレンは、言葉を飲み込んだ。
狡猾でもなければ、淫蕩でもない――――そこに素顔の林檎を、目の当たりにしたから。
林檎は、驚くほど真っ直ぐな目線でアレンを見つめている。
その目線を正面から受け止めると、アレンは無言になった。
林檎は、達実に比べると、全ての面ではるかに劣っている。
それなりに可愛い容姿だが、達実とは比べようもない。
最初からアルファとオメガでは、種族の能力ランクが違い過ぎるのだ。
もちろんオメガの中にも、結城奏や七海達樹のような特異な例もあるが……。
しかし、多くのオメガには何か特別秀でた面もなく、平々凡々な者が殆どだ。
中でも、オメガとしてもかなりの底辺で生きて来た林檎には、基本的な学問の知識も乏しく、そもそも頭脳は達実よりはるかに劣る。
体格も――――これはオメガだから仕方がないが、おおよそ力仕事も任せられそうもない程に頼りなく華奢だ。
頭が悪いくせに、力仕事も出来ない。
そのくせ、野心ばかりは人一倍で、ずる賢く抜け目ない。
典型的な、昔ながらの下等なオメガだ。
――――そう罵倒され軽んじられ、大抵の者から虐げられて林檎は一人で生きて来ただろう。ベータの両親は、林檎がオメガだと分かった段階で家から追い出しにかかったらしい。
オメガの……女ならともかく、男などただのごく潰しなのだから。
しかし林檎はへこたれずに、愛人業を生業にして『だから何だよ』と自分を侮蔑する相手をせせら笑い、逆に手玉に取る事でここまで生きて来た。
だが、その林檎が……念願叶い『番』の地位を手に入れるチャンスをついに掴んだのに。
しかし彼は、それを放棄すると言う。
「――――そんなに、サイが好きなのか? 」
だが、アレンはそんな林檎を軽蔑したように見下ろして、スッと身体を引く。
「……さすがはオメガだ。お前達は、いつもそんな事しか頭にないんだな」
「はぁ? 」
「考えるのは、常に自分の保身だけか。見下げ果てたものだ」
「――」
「お前は本当にサイのことを愛しているから、私の話に乗ってあんな計画に協力したのだと思ったが……とんだ買い被りだったようだ。呆れたよ」
侮蔑の視線と言葉で一閃し、アレンは林檎を突き放す。
「――――望み通り、欲しいだけのカネは用意しよう。しかし愛人は間に合っている。お前とは、ここでお別れだ」
そう言い捨てて、SPに林檎を追い出させようとしたところ――――。
「待てよ! 」
林檎はそう強い声で言うと、なんと、アレンに形振り構わず縋り付いてきたのだ。
まさか林檎がこんな行動に出るとは思っていなかったアレンは、それを躱す間もなく抱き付かれてしまう。
距離を置いて見守っていたSPや侍従が、慌てて林檎を引き離そうと駆け寄る。
「貴様! アレン様から離れろ! 」
「いやだー!! 」
この華奢な身体のどこにこんな力があったものか。
そう思わずにはいられない程の力で、林檎はアレンに抱き付く。
「アンタのやりたいようにヤらせてやるから! フェラだろうとフィストだろうと何でも好きなようにやっていいから! だから――」
「だから、愛人は間に合ってると言っているだろう! 」
忌々し気に言い捨て、アレンは林檎を無理やり引き離そうとするが、それより先に林檎は思わぬことを言い出した。
「だから、頼むから――――あのアルファをあきらめてくれよ! 」
「……なに? 」
「っ! 」
SPに容赦なく腕を捻り上げられ、林檎の苦痛の声が上がる。
そのSPを片手を上げて制止すると、アレンは問うた。
「お前――自分が何を言っているのか分かってるのか? 私がタツミから手を引いたら、タツミは自由を手にした鳥のように、サイの元へと飛び立ってしまうかもしれないんだぞ? そうなれば、もうお前はサイの番になることは……」
そこでアレンは、言葉を飲み込んだ。
狡猾でもなければ、淫蕩でもない――――そこに素顔の林檎を、目の当たりにしたから。
林檎は、驚くほど真っ直ぐな目線でアレンを見つめている。
その目線を正面から受け止めると、アレンは無言になった。
林檎は、達実に比べると、全ての面ではるかに劣っている。
それなりに可愛い容姿だが、達実とは比べようもない。
最初からアルファとオメガでは、種族の能力ランクが違い過ぎるのだ。
もちろんオメガの中にも、結城奏や七海達樹のような特異な例もあるが……。
しかし、多くのオメガには何か特別秀でた面もなく、平々凡々な者が殆どだ。
中でも、オメガとしてもかなりの底辺で生きて来た林檎には、基本的な学問の知識も乏しく、そもそも頭脳は達実よりはるかに劣る。
体格も――――これはオメガだから仕方がないが、おおよそ力仕事も任せられそうもない程に頼りなく華奢だ。
頭が悪いくせに、力仕事も出来ない。
そのくせ、野心ばかりは人一倍で、ずる賢く抜け目ない。
典型的な、昔ながらの下等なオメガだ。
――――そう罵倒され軽んじられ、大抵の者から虐げられて林檎は一人で生きて来ただろう。ベータの両親は、林檎がオメガだと分かった段階で家から追い出しにかかったらしい。
オメガの……女ならともかく、男などただのごく潰しなのだから。
しかし林檎はへこたれずに、愛人業を生業にして『だから何だよ』と自分を侮蔑する相手をせせら笑い、逆に手玉に取る事でここまで生きて来た。
だが、その林檎が……念願叶い『番』の地位を手に入れるチャンスをついに掴んだのに。
しかし彼は、それを放棄すると言う。
「――――そんなに、サイが好きなのか? 」
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