ワガママで意地悪で、どうしようもなく純愛。

亜衣藍

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All for lovers

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「そうそう! 全然興味ありませんってカンジでさ。あれじゃあ、誰も采のトコに残りゃあしないさ」

 采が未だに独身の理由をあげつらい、林檎は最後に舌打ちをした。

「自分に興味もないヤツを相手にするのも、いい加減に虚しくなるってんだよ。それがいくら金持ちでも、冗談じゃないね! だから、オレもこれでサヨナラだ」

「oh……それじゃあ、サイはこの先――タツミと和解しない限り、ずっと独りということか。なんて可哀想な人生だろう」

 アレンの言い草に、采はカッとする。

「何だと!? 」

to be or not to be, that is the question進むべきか退くべきか、それが問題だ

 アレンは天を仰ぐと、ハムレットのセリフを引用して嘆く。

「君はこれからの長い人生、孤独に生きて行くのか――さもなくば、愛するタツミに思いを告げて共に生きていくのか。せっかく手に入れかけていたリンゴも、残念な事に君の元から離れると言っているんだ。きっと、君は同じことをこれから何度も繰り返すのだろうね」

「う……」

 何となく自覚はあるだけに、采は言葉に詰まる。

 確かに今まで、多くの恋人とそれなりに良い・・関係までは発展した。

 しかしそれ以上にはならなかった。

――――成れなかった。

 達実が異国で事故に遭っただの、ケンカに巻き込まれただの。そんな情報が飛び込んでくるたびに、采の頭の中は達実のことで一杯になったからだ。

 その度に、采と付き合っていた筈の相手は、いつの間にか姿を消していた。

 いつ消えたのかも知らないし、覚えてもいない。

 相手に、達実ほどの興味が無かったからだ。

 これでは、恋人失格だ。

 義弟の情報一つで恋人を放っておくような、こんな不誠実な相手など、とても付き合っていけない――――きっと、そう思われたのだろう。

(林檎も指摘しているから、そうなんだろうな。そう考えると、納得する)

――――九条采とは、番になどなれない。恋人たちは、最終的にそう判断したのだろう。

 林檎もそう言っている。間違いなく確実な答えだ。

「参ったな……」

 采は降参したように嘆息すると、ジッとアレンを見つめた。

「……それじゃあオレは、この先ずっと独りでもいい」

Are you serious?本気か?

「ああ」

 激昂するわけでもなく落ち着いた声でそう言うと、采は続けて口にする。

「だが――――達実は、幸せにしてほしい。あいつだけは絶対に不幸にしてほしくない。だから、頼むから……どうか、生涯、あいつだけを愛してほしい」

「私に、タツミ以外の恋人を持つなと言うのか? 」

「そうだ。頼む――――この通りだ」



 そう言うと、采はその場に膝をつき……何と土下座をした!



 アルファのエリートとして、ずっと君臨してきた采だ。

 今まで頭を下げられたことはあっても、誰かに平身低頭したり、ましてや、こうして額づくなどした事もない。

 あり得ない!!

 だが、采は――――生まれて初めて、土下座をしたのだ。

 達実の為に!

「勝手を言っているのは分かっている。あいつも、もう18だ。いつまでも義兄として保護者面していたいが、限界が来ているのも自覚している。あいつが自らの意思でお前の『番』になるというなら、止める権利はもうオレにはない――」

 こんな書類を用意したが、そもそも采にはそんな権限など残されていない。

 でも、達実の為にどうにかしたかったのだ。

 少しでも、達実が幸せでいられるように……。

「頼む! 林檎にも充分なカネを用意するから、どうかアレンからは手を引いてくれ」

「采……」

「達実だけを愛してほしい! お願いだ!! 」

 土下座をする采を見下ろしながら、アレンは言葉を落とす。
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