88 / 116
All for lovers
5
しおりを挟む
「そうそう! 全然興味ありませんってカンジでさ。あれじゃあ、誰も采のトコに残りゃあしないさ」
采が未だに独身の理由をあげつらい、林檎は最後に舌打ちをした。
「自分に興味もないヤツを相手にするのも、いい加減に虚しくなるってんだよ。それがいくら金持ちでも、冗談じゃないね! だから、オレもこれでサヨナラだ」
「oh……それじゃあ、サイはこの先――タツミと和解しない限り、ずっと独りということか。なんて可哀想な人生だろう」
アレンの言い草に、采はカッとする。
「何だと!? 」
「to be or not to be, that is the question」
アレンは天を仰ぐと、ハムレットのセリフを引用して嘆く。
「君はこれからの長い人生、孤独に生きて行くのか――さもなくば、愛するタツミに思いを告げて共に生きていくのか。せっかく手に入れかけていたリンゴも、残念な事に君の元から離れると言っているんだ。きっと、君は同じことをこれから何度も繰り返すのだろうね」
「う……」
何となく自覚はあるだけに、采は言葉に詰まる。
確かに今まで、多くの恋人とそれなりに良い関係までは発展した。
しかしそれ以上にはならなかった。
――――成れなかった。
達実が異国で事故に遭っただの、ケンカに巻き込まれただの。そんな情報が飛び込んでくるたびに、采の頭の中は達実のことで一杯になったからだ。
その度に、采と付き合っていた筈の相手は、いつの間にか姿を消していた。
いつ消えたのかも知らないし、覚えてもいない。
相手に、達実ほどの興味が無かったからだ。
これでは、恋人失格だ。
義弟の情報一つで恋人を放っておくような、こんな不誠実な相手など、とても付き合っていけない――――きっと、そう思われたのだろう。
(林檎も指摘しているから、そうなんだろうな。そう考えると、納得する)
――――九条采とは、番になどなれない。恋人たちは、最終的にそう判断したのだろう。
林檎もそう言っている。間違いなく確実な答えだ。
「参ったな……」
采は降参したように嘆息すると、ジッとアレンを見つめた。
「……それじゃあオレは、この先ずっと独りでもいい」
「Are you serious?」
「ああ」
激昂するわけでもなく落ち着いた声でそう言うと、采は続けて口にする。
「だが――――達実は、幸せにしてほしい。あいつだけは絶対に不幸にしてほしくない。だから、頼むから……どうか、生涯、あいつだけを愛してほしい」
「私に、タツミ以外の恋人を持つなと言うのか? 」
「そうだ。頼む――――この通りだ」
そう言うと、采はその場に膝をつき……何と土下座をした!
アルファのエリートとして、ずっと君臨してきた采だ。
今まで頭を下げられたことはあっても、誰かに平身低頭したり、ましてや、こうして額づくなどした事もない。
あり得ない!!
だが、采は――――生まれて初めて、土下座をしたのだ。
達実の為に!
「勝手を言っているのは分かっている。あいつも、もう18だ。いつまでも義兄として保護者面していたいが、限界が来ているのも自覚している。あいつが自らの意思でお前の『番』になるというなら、止める権利はもうオレにはない――」
こんな書類を用意したが、そもそも采にはそんな権限など残されていない。
でも、達実の為にどうにかしたかったのだ。
少しでも、達実が幸せでいられるように……。
「頼む! 林檎にも充分なカネを用意するから、どうかアレンからは手を引いてくれ」
「采……」
「達実だけを愛してほしい! お願いだ!! 」
土下座をする采を見下ろしながら、アレンは言葉を落とす。
采が未だに独身の理由をあげつらい、林檎は最後に舌打ちをした。
「自分に興味もないヤツを相手にするのも、いい加減に虚しくなるってんだよ。それがいくら金持ちでも、冗談じゃないね! だから、オレもこれでサヨナラだ」
「oh……それじゃあ、サイはこの先――タツミと和解しない限り、ずっと独りということか。なんて可哀想な人生だろう」
アレンの言い草に、采はカッとする。
「何だと!? 」
「to be or not to be, that is the question」
アレンは天を仰ぐと、ハムレットのセリフを引用して嘆く。
「君はこれからの長い人生、孤独に生きて行くのか――さもなくば、愛するタツミに思いを告げて共に生きていくのか。せっかく手に入れかけていたリンゴも、残念な事に君の元から離れると言っているんだ。きっと、君は同じことをこれから何度も繰り返すのだろうね」
「う……」
何となく自覚はあるだけに、采は言葉に詰まる。
確かに今まで、多くの恋人とそれなりに良い関係までは発展した。
しかしそれ以上にはならなかった。
――――成れなかった。
達実が異国で事故に遭っただの、ケンカに巻き込まれただの。そんな情報が飛び込んでくるたびに、采の頭の中は達実のことで一杯になったからだ。
その度に、采と付き合っていた筈の相手は、いつの間にか姿を消していた。
いつ消えたのかも知らないし、覚えてもいない。
相手に、達実ほどの興味が無かったからだ。
これでは、恋人失格だ。
義弟の情報一つで恋人を放っておくような、こんな不誠実な相手など、とても付き合っていけない――――きっと、そう思われたのだろう。
(林檎も指摘しているから、そうなんだろうな。そう考えると、納得する)
――――九条采とは、番になどなれない。恋人たちは、最終的にそう判断したのだろう。
林檎もそう言っている。間違いなく確実な答えだ。
「参ったな……」
采は降参したように嘆息すると、ジッとアレンを見つめた。
「……それじゃあオレは、この先ずっと独りでもいい」
「Are you serious?」
「ああ」
激昂するわけでもなく落ち着いた声でそう言うと、采は続けて口にする。
「だが――――達実は、幸せにしてほしい。あいつだけは絶対に不幸にしてほしくない。だから、頼むから……どうか、生涯、あいつだけを愛してほしい」
「私に、タツミ以外の恋人を持つなと言うのか? 」
「そうだ。頼む――――この通りだ」
そう言うと、采はその場に膝をつき……何と土下座をした!
アルファのエリートとして、ずっと君臨してきた采だ。
今まで頭を下げられたことはあっても、誰かに平身低頭したり、ましてや、こうして額づくなどした事もない。
あり得ない!!
だが、采は――――生まれて初めて、土下座をしたのだ。
達実の為に!
「勝手を言っているのは分かっている。あいつも、もう18だ。いつまでも義兄として保護者面していたいが、限界が来ているのも自覚している。あいつが自らの意思でお前の『番』になるというなら、止める権利はもうオレにはない――」
こんな書類を用意したが、そもそも采にはそんな権限など残されていない。
でも、達実の為にどうにかしたかったのだ。
少しでも、達実が幸せでいられるように……。
「頼む! 林檎にも充分なカネを用意するから、どうかアレンからは手を引いてくれ」
「采……」
「達実だけを愛してほしい! お願いだ!! 」
土下座をする采を見下ろしながら、アレンは言葉を落とす。
0
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる