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最終章
最終章-5
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真壁は慌てて後を追おうとするが、さすがに運転席に座っている以上、車を路上に放置して動く事は出来ない。
急いで車を路肩に寄せ停車させるにも、前後を渋滞の車に挟まれていては無理だ。
(くそっ! 何でオレは肝心な時に、いつもしくじるんだ!)
無駄な事だとは思ったが、真壁は運転席の窓を開けて、声の限り叫んだ。
「聖さん――!! 頼むから戻って来て下さい!!」
だが、既にその姿は視界から消えていたのだった。
◇
その頃多生は、聖の用意してくれたマンションのエントランスで、壁に凭れかかりながら老人のように息継ぎをしていた。
聖は多生の言葉を信じて、関川を誘き出す手伝いをしてくれると約束してくれたが……その約束を疑うわけではないが、きっと周囲は止めに入るだろうと思う。
なので、多生は保険を掛けるつもりで、聖のスマホへGPSを仕込んでおいた。
だが、勘の良い聖は、直ぐにその事に気付いてしまうだろう。
その前に、こっちは出来るだけ直ぐに行動を開始しようと、最後の準備を終えてエントランスまで降りて来たはいいが。
そこで多生は激しい眩暈に襲われて、膝から崩れそうになっていた所だった。
「ハァ……ハァ……」
壁に手をつきながら、浅い呼吸を繰り返す。
自由に動くにも儘ならなくなってきた己の身体に、つい苦笑いを浮かべてしまう。
「参ったな……まだ、動けるかと思っていたが……思ったよりもガタが来ているようだ」
多生は、霞む目をゴシゴシと擦ると、スマホを取り出してその画面に集中した。
どうやら聖は、多生が事前に下調べをしておいた一つである、ツイン・ロードの入っているビルへと向かっているようだ。
そこへ、関川が現われるのだろう。
ならば、自分は先回りして、そこで関川を待ち受けていた方が良いだろうと決断する。
「あいつは――あの外道だけは、聖の為にも必ず始末しておかないと……」
ブンブンと頭を振って、多生は強引に身を起こした。
(あと少しだけでいいから、神様、オレに時間をくれよ)
そう願いを込め、グッと足に力を入れて、エントランスから外へと一歩を踏み出す。
目の前で、自動ドアがサーっと開く。
さらに一歩を踏み出そうとしたところ、待ち構えていたように右側から声を掛けられた。
「笊川多生だな」
「……」
「○○署の者だ。先程通報があった。……容疑は分かっているな? このまま大人しく付いて来てもらいたい」
その宣告と同時に、駆け付けて来る警官達が視界に入り、多生は全身から力を抜いてフゥと息をついた。
(最後のさいごに、どうにかして聖の為にも後顧の憂いを絶っておきたかったが……これでゲームオーバーか)
観念して、微かに笑って両手を上げる。
――――すまんな、咲夜。お前の仇も取れなかったよ。
そうして多生は、警官達に取り押さえられてしまった。
急いで車を路肩に寄せ停車させるにも、前後を渋滞の車に挟まれていては無理だ。
(くそっ! 何でオレは肝心な時に、いつもしくじるんだ!)
無駄な事だとは思ったが、真壁は運転席の窓を開けて、声の限り叫んだ。
「聖さん――!! 頼むから戻って来て下さい!!」
だが、既にその姿は視界から消えていたのだった。
◇
その頃多生は、聖の用意してくれたマンションのエントランスで、壁に凭れかかりながら老人のように息継ぎをしていた。
聖は多生の言葉を信じて、関川を誘き出す手伝いをしてくれると約束してくれたが……その約束を疑うわけではないが、きっと周囲は止めに入るだろうと思う。
なので、多生は保険を掛けるつもりで、聖のスマホへGPSを仕込んでおいた。
だが、勘の良い聖は、直ぐにその事に気付いてしまうだろう。
その前に、こっちは出来るだけ直ぐに行動を開始しようと、最後の準備を終えてエントランスまで降りて来たはいいが。
そこで多生は激しい眩暈に襲われて、膝から崩れそうになっていた所だった。
「ハァ……ハァ……」
壁に手をつきながら、浅い呼吸を繰り返す。
自由に動くにも儘ならなくなってきた己の身体に、つい苦笑いを浮かべてしまう。
「参ったな……まだ、動けるかと思っていたが……思ったよりもガタが来ているようだ」
多生は、霞む目をゴシゴシと擦ると、スマホを取り出してその画面に集中した。
どうやら聖は、多生が事前に下調べをしておいた一つである、ツイン・ロードの入っているビルへと向かっているようだ。
そこへ、関川が現われるのだろう。
ならば、自分は先回りして、そこで関川を待ち受けていた方が良いだろうと決断する。
「あいつは――あの外道だけは、聖の為にも必ず始末しておかないと……」
ブンブンと頭を振って、多生は強引に身を起こした。
(あと少しだけでいいから、神様、オレに時間をくれよ)
そう願いを込め、グッと足に力を入れて、エントランスから外へと一歩を踏み出す。
目の前で、自動ドアがサーっと開く。
さらに一歩を踏み出そうとしたところ、待ち構えていたように右側から声を掛けられた。
「笊川多生だな」
「……」
「○○署の者だ。先程通報があった。……容疑は分かっているな? このまま大人しく付いて来てもらいたい」
その宣告と同時に、駆け付けて来る警官達が視界に入り、多生は全身から力を抜いてフゥと息をついた。
(最後のさいごに、どうにかして聖の為にも後顧の憂いを絶っておきたかったが……これでゲームオーバーか)
観念して、微かに笑って両手を上げる。
――――すまんな、咲夜。お前の仇も取れなかったよ。
そうして多生は、警官達に取り押さえられてしまった。
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