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「分かりましたよ、私の負けです。橋本の幹部連中は非難轟々でしょうが、何とか説き伏せますよ。その代わりに――――」
東堂の言いたいことが分かり、竜真もどこか観念したように肩をすくめた。
「分かってます。聖を、大阪に連れて行って構わないです」
それを聞き、東堂の眼はギラギラと輝いた。
◇
何者かが部屋へ近づいてくる気配を察知し、聖は体を固くした。
それは、期待していた窓際からではない。
戸口の方で、錠を開ける音がする。
――――あの変態野郎、やっぱり今日も来やがったか。
また、今宵もどうにか切り抜けなければ。
恐怖と嫌悪で鳥肌が立つ己が身体をギュッと抱きしめ、聖はふうと息を吐いた。
(今日だけ、今夜だけだ。明日になれば、あの真壁ってヤツが上手いことやってくれる手筈になっている。上野に潜り込んでいる鉄砲玉を、今頃総出で捜しているハズだ。正弘親分だって、きっと大丈夫……鉄砲玉なんざ、近寄れもしないに決まっている)
そうしたら、きっと。
(親分は、オレの事を迎えに来てくれるだろう。いや、その前に、鉄砲玉が捕まったとなれば、こっちの屋敷で騒ぎが起こるだろうから、その気配を察知したら、オレが一人でさっさとこの屋敷から退散すればいいんだ。だから、それまで何とか逃げ切れば――)
聖がそう考えを巡らせている内に、あの忌々しい変態ヤクザが室内へ入ってきた。
例の、気味の悪いアルカイック・スマイルを浮かべている。
「おや? 私が送った西陣織の着物は着ないのかい? 」
「……」
「今日は、君の誕生日なんだろう? 十六歳、おめでとう」
「……」
「襦袢姿っていうのも、色っぽいねぇ。うん、へたに着物は着ない方がいいかもしれない。非常にセクシーだよぉ」
「~」
聖は、これ以上聞くに耐えられぬというように、両耳を塞いでソファーへ蹲った。
それを見遣りながら、東堂はニヤニヤと笑い、蹲る聖へと近寄る。
「ん? どうしたのかな~? 君は本当に恥ずかしがり屋さんだねぇ。今まで、私の相手をしてきた連中は、全員、過剰なくらいに媚び諂って、私の足の指の股まで舐めてきたものだよ。その頭を踏みつけるのも楽しかったが――ここに来て、私は初めて人に奉仕することの喜びを知ったよ。君のおかげでね」
「――」
「私に舐め回されても、閉じた膝は決して開こうとしないし、凄まじい眼で睨んでくるし……本当に、君は面白い。身動きができないように縛り上げても、一晩中音を上げないで耐え抜くし、まったくゾクゾクするよ。次はどうしてやろうかって、この一か月、私は君に夢中だ。興奮しっぱなしで、四六時中君の事ばかりを考えているよ」
本当に、気味が悪い。
聞きたくない。
聖は、クッションを頭に乗せて、貝のように丸まった。
だが、相手はそんな聖の態度にこそ燃え上がるようだ。
ニヤニヤと笑いながら、聖の蹲るソファーへ腰を下ろした。
そして、強張ったままのその体へと、手のひらを這わせる。
「っ! 」
「うん? 今、ビクッとなったねぇ。相変わらず、敏感なようだ。さては、感じているのかな? 」
――――そんなわけ、ねぇだろうが!
そう言って、その顔面に、膝蹴りをお見舞いしたい。
しかし、今はまだムリだ。
必死になって、聖は歯を食いしばって耐えた。
怒りと気味の悪さにワナワナと震える身体を、襦袢越しに愛し気に撫でさすり、東堂はまたニヤリと笑った。
「でもねぇ、私にも時間がないんだ。大阪からは、いい加減に帰ってこいと何度も呼び出しを受けている。そりゃあ、そうだよねぇ。だって、ひと月も東京から動いていないんだから」
東堂の言いたいことが分かり、竜真もどこか観念したように肩をすくめた。
「分かってます。聖を、大阪に連れて行って構わないです」
それを聞き、東堂の眼はギラギラと輝いた。
◇
何者かが部屋へ近づいてくる気配を察知し、聖は体を固くした。
それは、期待していた窓際からではない。
戸口の方で、錠を開ける音がする。
――――あの変態野郎、やっぱり今日も来やがったか。
また、今宵もどうにか切り抜けなければ。
恐怖と嫌悪で鳥肌が立つ己が身体をギュッと抱きしめ、聖はふうと息を吐いた。
(今日だけ、今夜だけだ。明日になれば、あの真壁ってヤツが上手いことやってくれる手筈になっている。上野に潜り込んでいる鉄砲玉を、今頃総出で捜しているハズだ。正弘親分だって、きっと大丈夫……鉄砲玉なんざ、近寄れもしないに決まっている)
そうしたら、きっと。
(親分は、オレの事を迎えに来てくれるだろう。いや、その前に、鉄砲玉が捕まったとなれば、こっちの屋敷で騒ぎが起こるだろうから、その気配を察知したら、オレが一人でさっさとこの屋敷から退散すればいいんだ。だから、それまで何とか逃げ切れば――)
聖がそう考えを巡らせている内に、あの忌々しい変態ヤクザが室内へ入ってきた。
例の、気味の悪いアルカイック・スマイルを浮かべている。
「おや? 私が送った西陣織の着物は着ないのかい? 」
「……」
「今日は、君の誕生日なんだろう? 十六歳、おめでとう」
「……」
「襦袢姿っていうのも、色っぽいねぇ。うん、へたに着物は着ない方がいいかもしれない。非常にセクシーだよぉ」
「~」
聖は、これ以上聞くに耐えられぬというように、両耳を塞いでソファーへ蹲った。
それを見遣りながら、東堂はニヤニヤと笑い、蹲る聖へと近寄る。
「ん? どうしたのかな~? 君は本当に恥ずかしがり屋さんだねぇ。今まで、私の相手をしてきた連中は、全員、過剰なくらいに媚び諂って、私の足の指の股まで舐めてきたものだよ。その頭を踏みつけるのも楽しかったが――ここに来て、私は初めて人に奉仕することの喜びを知ったよ。君のおかげでね」
「――」
「私に舐め回されても、閉じた膝は決して開こうとしないし、凄まじい眼で睨んでくるし……本当に、君は面白い。身動きができないように縛り上げても、一晩中音を上げないで耐え抜くし、まったくゾクゾクするよ。次はどうしてやろうかって、この一か月、私は君に夢中だ。興奮しっぱなしで、四六時中君の事ばかりを考えているよ」
本当に、気味が悪い。
聞きたくない。
聖は、クッションを頭に乗せて、貝のように丸まった。
だが、相手はそんな聖の態度にこそ燃え上がるようだ。
ニヤニヤと笑いながら、聖の蹲るソファーへ腰を下ろした。
そして、強張ったままのその体へと、手のひらを這わせる。
「っ! 」
「うん? 今、ビクッとなったねぇ。相変わらず、敏感なようだ。さては、感じているのかな? 」
――――そんなわけ、ねぇだろうが!
そう言って、その顔面に、膝蹴りをお見舞いしたい。
しかし、今はまだムリだ。
必死になって、聖は歯を食いしばって耐えた。
怒りと気味の悪さにワナワナと震える身体を、襦袢越しに愛し気に撫でさすり、東堂はまたニヤリと笑った。
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