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しおりを挟む何事だ!
不意に、東門付近で轟いた爆発音に、屋敷にいた全員が、泡を食って飛び上がる。
竜真は、それまで抱いていた女たちを足蹴にして、部屋の外へ飛び出した。
「今のは、どこからだ!! 」
「い、今、確認しているところです! 昼間、職人たちがコンプレッサーや溶接機を使用していたので、もしかしたら電気系統が原因かも――」
「いいから、早く調べろ! 消防を呼ばれたらたまったもんじゃねぇ! 」
竜真の怒号に、組員たちは右往左往する。
だが、そうしている内に、またもや東側で爆発が起こった。
「なんだぁ!? どっかの組がカチコミに来やがったのか? 」
しかし、それこそ任侠映画ならともかく、こう真正面から爆発物をもって敵陣へ攻め込むなど、普通ならありえない。
そんなこんなで間誤付いていたら、本当にどこからか火の手が上がったようだ。
「消せ!! とにかく早く火を消すんだ! 」
消防を呼ばれでもしたら、色々と具合の悪いものが見つかる可能性がある。
組員たちは慌てて、消火のために動き出した。
◇
「どこへ行くんだい、兄さん? 」
冷たい声に、真壁徹はビクリと飛び上がった。
恐ろしく厳つい顔をした年若い男が、真っすぐに徹を睨み付けている。
だが、負けじと徹は相手を睨み返し、恫喝した。
「お前こそ、何をしているんだ。この、新入りのガキが! ガタイがデカいからって大物気取りか? 早く行って、兄貴たちの手伝いをしてこいっ」
「そう言う兄さんは、どうして逆方向に行こうとしてるんだ? そっちは、離れじゃないか」
睨み合うこと、数秒。
先に折れたのは、徹の方だった。
「――――オレは、その離れに用事があるんだ。そこをどけ」
「用事、って? 」
「お前――」
どう考えても、この新入りの態度は落ち着き過ぎている。
さては、徹の狙いを察知したのか?
徹は低く姿勢を取り、背中に隠していた得物に手を伸ばす。
だが、
「兄さん、離れにいるのは――もしかして聖ってぇクソ生意気な野郎なんじゃ、ねぇんですかい? 」
(――――っ! )
徹の反応を見て、納得したのだろう。
やっぱりな、と呟き、男はスッと道を譲った。
「お前……」
「オレもバカじゃねぇ。屋敷の連中の反応や、関西からのお客人や――それに、竜真の親分の様子を見ていれば大体は察することができるってモンだ。何があったか知らねぇが、あの気合の入った野郎が大人しくこんな所にいるワケがない。大方、脅されたか何かしたんだろう。このままじゃあ、あいつはシャブ漬にされた上に首に鎖を付けられて、大阪に連れていかれちまう。あんた、あいつを助け出せって、上野から頼まれたのか? 」
「――そうだ」
「合点がいったよ。今の爆発騒ぎは、昼間来たお客人が仕掛けたんだな? 」
言いながら、男も身を翻し、離れの方へ足を向ける。
「オレの親も極道だった。汚い取引や暴力沙汰は慣れっこだが、それでも、やっぱり知っているヤツが危険な目に遭ってるとなりゃあ、さすがに目覚めが悪いぜ。あいつには散々な因縁があるが――今回ばかりは手伝ってやるよ」
「助かる」
そう返し、二人は急いで離れへと向かった。
◇
聖の口に、ゴム製の器具を押し込み、東堂は大きく安堵の息をついた。
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