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「だって、ちゃんと気持ちを伝え合って両思いになったんじゃなかった? 最後に会った時、栄太くんそう言っていたじゃない」
まどかの疑問に、栄太は酒臭い息を吐きながら、重苦しい声で答えた。
「――――奏は妊娠はしたんだが、結局オレのせいでダメになっちまったよ」
オメガ男体の妊娠初期は、非常に身体が不安定だと聞いた事がある。まどかは、そういった事が要因となって悲しい結果になったのだろうと推測した。
「そうか…………でも、あんまり思いつめないでね、栄太くん。……また次があるよ……」
「ねぇよ、そんなの」
即座に返すと、栄太は自嘲気味に笑った。
「本当に、オレが全部悪いんだ。何もかも、全部」
「栄太くん……」
「地面に頭を擦り着けて謝っても、もう取り返しなんざつかない。罪悪感でいっぱいで、奏に顔を合わせる事も出来ないでいる。オレは、どうしようもない臆病者のクズだ」
そう漏らし、グラスを一気に呷ると、また同じ酒をバーテンダーへ頼む。
自暴自棄な栄太の様子に、まどかは顔を曇らせる。
「何があったのかは知らないけど、こんな所でお酒なんか飲んでても仕方が無いよ。とにかく、奏さんのところに行ったらどうかな? それで、謝ってさ――」
「だから! オレにはもうそんな資格なんかないんだよ!! 」
ガンッと、グラスをカウンターに叩きつける音が響く。
「それに、もう――――番でも何でもなくなっちまった。あいつは、アルファの野郎に『番の上書き』をされて……掻っ攫われたんだ。手の届かない場所に行ってしまったあいつを取り戻したくて、悪足掻きをして――その結果、本当に全部を滅茶苦茶に壊してしまった」
罪悪感と申し訳なさに押し潰されそうで、ここを動けないでいると正直に言う栄太。
その告白を聞いたまどかは険しい表情になって、次に、手にしていたグラスの中身を栄太の顔へとパシャリと浴びせた。
「ふざけんじゃないわよ! 」
「――――まどか……」
「悪いと思っている、謝りたいと思っている。だけど怖くて顔を合わせられないなんて、どうしようもない性根の腐り切ったインチキ野郎じゃない! あたしの好きだった栄太くんは、そんな男じゃなかったハズよ! 」
突然の告白に、栄太は驚いて目を見張る。
まどかは、言葉の勢いそのままに、今までの自分の気持ちを口にした。
「あたし、小学校の時からずっと栄太くんの事が好きだった。だけど、久しぶりに会った栄太くんは、オメガの奏さんの事が好きで――――だから、自分の本当の気持ちは諦めて、栄太くんの恋を応援することにしたんだよ。それなのに、何よ! アルファが現われたら諦めるっていうの! 」
「諦めたくなかったさ! だからオレはあんな事を……! でも、そのせいであいつは流産したんだぞ! 」
「だからそれが、何だっていうのよ! 」
「っ!? 」
「一生子供が産めない身体になったワケじゃないなら、また頑張ればいいだけの話でしょう! 可哀想なのは奏さんなのに、一々アンタが落ち込んでどうするのよ! 」
「でも……」
「『でも』じゃない! 言い訳するな! 今すぐ奏さんの所へ行って謝って来なさいよ!! 」
――――まいった。こういう時の女は、タフだな……。
栄太はふぅと溜め息をつくと、微かに苦笑を浮かべて席へ座り直した。
「……ミスター、どうぞ」
「ありがとう」
ハラハラと成り行きを見守っていたらしきバーテンダーからタオルを受け取ると、栄太は、まどかにも座るように手で合図をした。
「すまなかった。女にそんな事を言わせるなんて、男として最低だな」
「あ、あの、あたし……」
今更ながら、長年の恋心を口にしてしまった気恥ずかしさに、顔を真っ赤にするまどかである。
栄太はそんな彼女に視線を注ぎながら、どこか憑き物が落ちたような表情で微笑んでいた。
まどかの疑問に、栄太は酒臭い息を吐きながら、重苦しい声で答えた。
「――――奏は妊娠はしたんだが、結局オレのせいでダメになっちまったよ」
オメガ男体の妊娠初期は、非常に身体が不安定だと聞いた事がある。まどかは、そういった事が要因となって悲しい結果になったのだろうと推測した。
「そうか…………でも、あんまり思いつめないでね、栄太くん。……また次があるよ……」
「ねぇよ、そんなの」
即座に返すと、栄太は自嘲気味に笑った。
「本当に、オレが全部悪いんだ。何もかも、全部」
「栄太くん……」
「地面に頭を擦り着けて謝っても、もう取り返しなんざつかない。罪悪感でいっぱいで、奏に顔を合わせる事も出来ないでいる。オレは、どうしようもない臆病者のクズだ」
そう漏らし、グラスを一気に呷ると、また同じ酒をバーテンダーへ頼む。
自暴自棄な栄太の様子に、まどかは顔を曇らせる。
「何があったのかは知らないけど、こんな所でお酒なんか飲んでても仕方が無いよ。とにかく、奏さんのところに行ったらどうかな? それで、謝ってさ――」
「だから! オレにはもうそんな資格なんかないんだよ!! 」
ガンッと、グラスをカウンターに叩きつける音が響く。
「それに、もう――――番でも何でもなくなっちまった。あいつは、アルファの野郎に『番の上書き』をされて……掻っ攫われたんだ。手の届かない場所に行ってしまったあいつを取り戻したくて、悪足掻きをして――その結果、本当に全部を滅茶苦茶に壊してしまった」
罪悪感と申し訳なさに押し潰されそうで、ここを動けないでいると正直に言う栄太。
その告白を聞いたまどかは険しい表情になって、次に、手にしていたグラスの中身を栄太の顔へとパシャリと浴びせた。
「ふざけんじゃないわよ! 」
「――――まどか……」
「悪いと思っている、謝りたいと思っている。だけど怖くて顔を合わせられないなんて、どうしようもない性根の腐り切ったインチキ野郎じゃない! あたしの好きだった栄太くんは、そんな男じゃなかったハズよ! 」
突然の告白に、栄太は驚いて目を見張る。
まどかは、言葉の勢いそのままに、今までの自分の気持ちを口にした。
「あたし、小学校の時からずっと栄太くんの事が好きだった。だけど、久しぶりに会った栄太くんは、オメガの奏さんの事が好きで――――だから、自分の本当の気持ちは諦めて、栄太くんの恋を応援することにしたんだよ。それなのに、何よ! アルファが現われたら諦めるっていうの! 」
「諦めたくなかったさ! だからオレはあんな事を……! でも、そのせいであいつは流産したんだぞ! 」
「だからそれが、何だっていうのよ! 」
「っ!? 」
「一生子供が産めない身体になったワケじゃないなら、また頑張ればいいだけの話でしょう! 可哀想なのは奏さんなのに、一々アンタが落ち込んでどうするのよ! 」
「でも……」
「『でも』じゃない! 言い訳するな! 今すぐ奏さんの所へ行って謝って来なさいよ!! 」
――――まいった。こういう時の女は、タフだな……。
栄太はふぅと溜め息をつくと、微かに苦笑を浮かべて席へ座り直した。
「……ミスター、どうぞ」
「ありがとう」
ハラハラと成り行きを見守っていたらしきバーテンダーからタオルを受け取ると、栄太は、まどかにも座るように手で合図をした。
「すまなかった。女にそんな事を言わせるなんて、男として最低だな」
「あ、あの、あたし……」
今更ながら、長年の恋心を口にしてしまった気恥ずかしさに、顔を真っ赤にするまどかである。
栄太はそんな彼女に視線を注ぎながら、どこか憑き物が落ちたような表情で微笑んでいた。
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