インチキで破廉恥で、途方もなく純情。

亜衣藍

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最終章

最終章-4

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「アメリカへ――それはつまり、将来は研究者として向こうへ移住するという事かい? 」

 九条の問い掛けに、奏はコクリと頷く。

「はい。迷いましたが、それが一番良い道だと考え直しました。もちろん、日本の研究者とはこれからも連携していきますが……僕達がどれだけ海外で評価されているのかを、日本のお偉いさん方に分かってもらうには、外からのプレッシャーが最も有効なのではないかと思います。だから僕は、僕達研究者の地位底上げの為にも、あえてアメリカへ行きます」

 奏の決意は固いようだ。

 もはや、揺るぐことはないだろう。

「そうか……でも、七海は反対するんじゃないのかな? 」
九条の疑問に、奏は首を振って答える。

「これは、七海先輩からの提案なんです。僕の将来・・・・・を考えたら、アメリカへ渡る方がいいかもしれないと」

「そうか、七海が――」

 七海が言い出したのなら、九条はそれに反対する気はない。

 愛しい番である、七海の可愛がっている結城奏。

 彼の事を、九条も気に入っていただけに残念ではあるが。

「――――寂しくなるな……」

 九条の残念そうな雰囲気に、奏はフフっと笑う。

「今はどこにいてもネットで繋がりますから、大丈夫ですよ」

「そうか――」

 二人とも穏やかな表情で、互いの労をねぎらうかのように笑みを浮かべる。

 しかしその間へ入り込むように、とうとう耐え切れずに栄太が口を開いた。

「奏! アメリカに行くという事は――――もうオレには、チャンスは本当にないのか!? 」

「栄太さん……」

 すると、正嘉も負けじと前に出た。

「オレも、これから少しずつやり直したいと思っている。自分がどんなにガキだったのか、ようやく理解した今こそ――――お前を真剣に愛して行きたい」

「正嘉さま……」

 奏が、正嘉に確かめたかった事。

 それは『本当にあなたはの自覚を持っているのか』という、そもそもの疑問だった。

 だが正嘉は、奏が問い掛ける前に自分で答えを出したようだ。

――――正嘉は、身体は大人と変わらぬほどに成長したが、心は身体に伴っていなかった。奏と出逢った、あの8つの頃から心は成長していなかったのだ。

『奏は好きだが、奏の子供の事には興味がない。そんなもの、どうでもいい』

 それは本当に、ガキのままの考えだ。

 奏は人形ではない。血の通った人間だ。

 その奏を『運命の番』だと言って愛するつもりなら、その人の全てに関心を持つのが当たり前であり、番としての義務だった。

 愛しいはずの存在である奏が身籠ったというのに『子供には興味がない』では、どうあれ道理は通らない。


――――番として、失格だ。


 正嘉は、ようやくその事に気付いた。

 恵美によって、気付かされたのだ。

 人を愛するという事の、本質と真実を。

 正嘉は、真摯な眼差しで奏を見つめ、口を開く。

「どうかもう一度、チャンスを与えてはくれないだろうか」

「……」

「それに、オレはお前の項を噛んで番にしたのだから、お前には青柳の資産を相続する権利が法的に発生している。第一、アルファの『番』になってしまったのだから、お前は、もう違う男とは――」

「その件は、大丈夫です」

 小さな声で、しかしハッキリと奏は言った。

「僕は、研究の進んでいるアメリカで、免疫に関する知識をより深めて『番』契約による他者への拒絶反応を克服する新薬も開発してみせます。オメガに科せられていた様々な負荷を、全てこの手で取り除いてみせます」

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