彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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boy

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 誉はそう言うと、名残惜しそうにしながらも、身体を移動させてベッドから降りた。

――――汗を滴らせながら立つ若い全裸の肉体は、それこそ彫刻のように美しいのだが。

 だが誉は、そんな自分の漢としての魅力には気付かぬ様子で、しどけなくベッドに横たわったままの聖の肢体へ、うっとりとした視線を落とす。

 そうして、ゆっくりと手を差し伸べると――大切な宝物のように、聖の身体をそっと抱き上げた。

「さすがにあんたも疲れただろう? ちゃんとオレが、責任もって洗ってやるよ。オレで、髪もドロドロになってるし」

「髪、ねぇ……たしかに、ザーメンローションでどこもかしこもベットリだなぁ」

 しかし、髪を綺麗にするよりも、先にする事がある。

 出来るだけ速やかに腸内洗浄しなければ、間違いなく腹を壊すだろう。

 全弾ことごとく、ゴムも無しの中出しだったのだから……受け手のこっちは後始末も大変だ。

――――だが、男との経験など無い誉には、そんな知識も無いだろう。

 ただ、白濁に濡れそぼった綺麗な身体を慈しむように、バスルームへと運び込み……暖かいお湯を掛けて、ボディーソープを泡立たせたタオルで、汚れた聖の身体をを洗ってやろうとする。

――――不器用なその優しさと気持ちが、嬉しかった。

 だから、後孔内に溜まっている精液を吐き出す作業の事も、聖からは言い出せなかった。

(ふふ……このオレが、こいつを傷付けまいと遠慮をしているのか? 甘酸っぱい、本当の恋人のようだな)

 好きだと言ってくれただけでも、こっちは泣きたくなる程に嬉しい。

 損得勘定だけで寝る相手を選んできた自分に、果たして愛される価値があるのかと考えると気分も滅入りそうになってくるが――――今だけは、仮初でも何でもいいから、恋人のふりをして甘えたかった。

「なぁ、誉――」

 初めて、その名を呼ぶ。

「キスしてくれないか?」

 聖からの可愛らしいおねだりに、誉は本当に嬉しそうに顔を輝かせた。

「もちろん、何度でもあんたが望むくらいに……」

 そう言うと、この時初めて――――聖と誉は、唇とくちびるを、深くふかく重ねたのであった。


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