彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

文字の大きさ
30 / 90
6

Darkening

しおりを挟む
「……勘違いするな。ソイツは退屈しのぎに遊んでいただけのガキさ。でもセックスが下手くそでな――――そろそろお役御免にしようと思ってたんだよ」

 冷たい聖の声に、男は胡乱気な眼差しを向けるが……次に、その視線を誉へ向けた。

「――だ、そうだ。こいつはこれから用があって忙しい。ガキはさっさと家に帰れ」

「な、なんだと――」

 誉は、反論しようとした。

 自分は聖を愛している。こんなことで、あっさりと諦めたくはない。

 だが――目の前に立ちはだかる男から受けるプレッシャーは、並大抵なものではない。

 男から視線を逸らさず睨み返すだけで、冷や汗が流れて来る。

(くそっ!)

  獰猛な肉食獣のような男と対峙するだけで、激しく神経を消耗する。

 しかし、負けたくない!

「あんたこそ、出て行け!」

「ん?」

「あ、あんたのようなヤツこそ、その人の傍に居ちゃあダメな人種だろう! 警察呼ぶぞ!ここを出て行けよ、オッサン!!」

「警察だぁ?」

 男は愉快そうに笑うと、聖から手を離し、グイッと身体を前進させた。

 それだけで、誉は無意識に後退する。

 大声で「出て行け」と言いたいのに、舌が凍り付いたように動かなくなる。

「あ、あ……」

「呼びたきゃよべ。でも、お前は二度と表が歩けないようなツラになるだろうがな」

 これに、男は洒落のつもりなのか一言付け加える。

「それとも、別の場所を潰した方がいいか? あれだ、二度と浮気が出来ないようにな」

 目に見えて青ざめる誉に、男は笑顔を引っ込めると、牙をむいた獣のように低く言い放つ。

「こいつは、オレのモノだ」

「う……」

 今すぐに、逃げ出したい。だが誉は、聖への執着から何とか踏み止まろうと頑張る。

「い――いやだ。オレは、オレは……」

 だが、男はそんな誉の懊悩を無視するかのように、ソファーから動けずにいた聖へと覆い被さった。 

 そうして、背中越しに視線を投げて誉を嘲笑する。

「おい、ガキ――――お前じゃあ力不足だとよ」

「なっ!」

「こいつは、こうやるんだよ」

 言うが否や、男は乱暴に聖のバスローブを剥ぎ取った。

 眩しいくらいの白い肌が露わになると、男は間髪入れずに、その両脚の間へと腰を潜り込ませる。

 聖の、くぐもった声が漏れた。

「うぅっ……!」

「――ん? おいおい、トロトロじゃねーか。自分で準備してたってのか?」

「あん、た・に……合わせたんだ、よ……」

 苦し気に顔を歪ませながらも、ようよう言葉を繋ぐ聖に、男は満足したように笑む。

「可愛いこと言ってくれるな」

 同時に、一気に腰を突き上げる!

「――!」

 聖の喉が仰け反り、汗が宙に舞った。

 白い脚が跳ね上がり、ビクビクと激しく痙攣する。

「あ――あっ!」

「……相変わらず、孔は最高だな。気を抜くと一気に持ってかれるぜ」

「――ゆ、ゆっくり……し・ろ……」

 途切れとぎれの言葉を無視して、男は聖の両脚を抱えたまま立ち上がった。

「――!」

 声にならない聖の悲鳴が上がる。

 爪を立てて己の首に縋り付く、その芳しい身体を前後に揺さぶりながら、男は誉を振り向いた。

「ガキ! よく見ておけ!」

「っ!?」

「お前じゃあ、こいつを満足させるなんざ百年経っても無理だってな! どうだ!? こいつのイイ顔が見えるか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...