彼が恋した華の名は:2

亜衣藍

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Darkening

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 上から固定されているので、聖は逃れることは出来ない。

 ただ、白い脚をビクビクと震えさせ、自由になるだけの身体をくねらせる。

 絶え間ない後孔内の蠕動に、史郎の男根も責め苛まれる。

「くそっ――お前のココは、どうなってんだよ!」

 苦し紛れのセリフを放ち、史郎も大砲を暴発させた。

 瞬間、押え付けられているにもかかわらず、聖の身体が絨毯の上で海老のように仰け反る。

「あ――――あぁっ!」

 食い千切られそうな締め付けに、史郎は歯を食いしばって耐えた。

 その状態のまま、数秒間制止する。

 自身の征服の証である精液を、一滴残らず聖の後孔へと注ぎ込んでいるのだ。

 やがて、力のないような呻き声を上げて、聖が荒い喘鳴のなか苦言を口にする。

「ナカは、やめろって……」

「安心しな。この後風呂場に行って、孔の奥の奥まで洗ってやるよ」

「そ――」

「だから、まだ寝るんじゃねぇぞ」

 まだまだ、こっちは続けたいのだから。

 男は酷薄に笑うと、射抜くような眼で誉を睨んだ。

「おい、ガキ。お前にこいつは勿体ない。オレの言っている意味が分かっただろう?」

「う……」

「それとも、このまま2ラウンド目も見ているか? ……オレは別に、最終ラウンドまで見物して行っても構わないがな」

 男の挑発に、誉はもはや触発されることはなかった。

――――自分には、もはや聖を引き留めるだけの魅力も実力も胆力もない。

 この獰猛な虎のような男に、完全に、全てにおいて敗北している。

 それを思い知り、誉はゆっくりと後退する。

(叶う事なら――――あなたをもう一度抱き締めたかった……)

 身勝手な願いだと思うけれど、本当に聖が好きだった。

「……ゴメン、聖さん――」

 微かな声でそう告げると、誉はその場を去って行った。

 パタンと扉の閉まる音を聞き、聖の瞼が伏せられる。

 瞬間、綺麗な涙が、ツーっと頬を流れた。

 その様子に気付き、史郎はそれまでと打って変わった優しい仕草で、聖の身体をソファーへと下ろした。

「泣くな」

「う……」

 濡れる頬を大きな手の平で包み、史郎は顔を寄せる。

 そうして、乱れた前髪の貼り付く、その額へと口付けを落とした。

「お前が……今直ぐマンションに来いっていうから何事かと思ったが……」

「ぅ……」

「あのガキを振る為だったんだな? 大体、事情は察した」

「……」

 優しい声に、聖の涙は止まらなくなる。

 こんな時に優しくされるのが、一番ツライ。

「あんたに――悪いとは思った……」

 そもそも、この男に対して、もう会わないと言ったのはこっちの方だ。

 なのに、自分の都合次第で、今もこうして呼び寄せてしまっている。

 酷いのは、こっちの方だろう。

 不用意に近付いたら通報すると警告しておきながら、これでは――――我ながら身勝手すぎると思う。

「史郎……すまない……」

 肩を震わせてポロポロと涙をこぼす聖を優しく抱き上げると、史郎は、溜め息交じりに囁いた。

「気にするな。どうせ惚れてんのはこっちの方だ。……考えてみれば、オレはあのガキを責められないな」

 史郎には女房子供がいたが、全部放り投げて、この傾国の美女に完全に傾倒している。

 だが史郎は、誉と違って決して引く事はないだろう。

――――これからも。

「う――」

「さっきは乱暴だったからな。……今度は、優しく抱いてやるよ」
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