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2 Unexpected
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「ジンの件は、もう少し情報を集めてから改めて指示を出す」
「お帰りですか?」
「ああ。もう遅いからな」
時間は、22時だ。
真夜中でも『おはようございます』の業界であるが、さすがに今から相手方に掛け直すには遅過ぎるだろう。
「それじゃあ、すぐに車を回します」
「悪いな」
かいがいしく立ち回る真壁に対し、聖は短く言葉を掛けた。
◇
マンション前で降ろしてもらい、さてこれから一杯引っ掛けるかそのままマンションへ帰るかと逡巡していたところ、背後から声が掛けられた。
「ジュピタープロダクションの、社長さんですよね?」
振り返ると、頭髪を七色に染め、孔雀の刺繍の入ったスカジャンを羽織った派手な容姿の男が、両脇に女を侍らせて立っていた。
男からも女からも、濃い酒気が漂っている。
一瞬、酔っぱらいの若造に絡まれたのかと思ったが、相手は聖を見て『ジュピタープロダクションの、社長』とハッキリ言ったのだ。
これは偶然ではないだろう。
「――何者だ?」
「そろそろ、社長にもオレの噂が届いている頃だと思って」
男はハハハと笑いながらそう言うと、次に、両脇にいた女たちをドンっと邪険に払いのけた。
足元も覚束無かった彼女たちは、男に不意に押された事により、歩道へ尻もちをついてしまう。
「痛ぁ!」
「何すんのよ! ヒドイじゃない!!」
「お前ら、邪魔」
吐き捨てるように言うと、男は犬でも追い払うかのように『シッシッ』と女達へ手を振った。
たった今まで、仲睦まじく一緒にいた相手にするような態度ではない。
――――だが、
「もぉ! 本当に勝手なんだからぁ」
そう、恨みがましくボヤいた女に向かって「じゃあ別れるか」と冷たく男が言うと、逆に女は媚びたような笑みを見せたのだ。
もう片方の女もヨロヨロと立ち上がると、愛想笑いを浮かべながらしなを作って両腕を伸ばす。
「ごめーん、アタシらが悪かったね」
「機嫌なおしてよぉ、ジン~」
(やはり、この男がジンか)
ミニスカートをはいていた女の方は、転んだ表紙に膝を打ったようで、伝線したストッキングと血のにじんだ膝が痛々しい。
情のある男なら、手を貸してやるのが筋だろう。
だが、ジンの態度は変わらず尊大だ。
警戒する聖に頓着せず、ジンは近寄ってきた女達を再び邪険に追いやった。
「もう帰れ、お前ら」
「で、でもぉ――」
「しつこい女は嫌いだって、いつも言ってんだろ」
冷たく言うと、女達は酔いも覚めた様子で、目に涙を浮かべながら去って行った。
それを見遣りながら、聖は少し詰るように口を開く。
「ずいぶんな態度だな」
「ん?」
「酔っているにしても、大概にするんだな。女にはもう少し優しくしてやれ」
「あんた、もしかして意外とフェミニスト?」
ククッと笑うと、ジンは聖へ近寄った。
「息子も心配してたぜ」
この場合の息子は、一人を指すだろう。
「貴様……ユウに何を吹き込んだ?」
「お帰りですか?」
「ああ。もう遅いからな」
時間は、22時だ。
真夜中でも『おはようございます』の業界であるが、さすがに今から相手方に掛け直すには遅過ぎるだろう。
「それじゃあ、すぐに車を回します」
「悪いな」
かいがいしく立ち回る真壁に対し、聖は短く言葉を掛けた。
◇
マンション前で降ろしてもらい、さてこれから一杯引っ掛けるかそのままマンションへ帰るかと逡巡していたところ、背後から声が掛けられた。
「ジュピタープロダクションの、社長さんですよね?」
振り返ると、頭髪を七色に染め、孔雀の刺繍の入ったスカジャンを羽織った派手な容姿の男が、両脇に女を侍らせて立っていた。
男からも女からも、濃い酒気が漂っている。
一瞬、酔っぱらいの若造に絡まれたのかと思ったが、相手は聖を見て『ジュピタープロダクションの、社長』とハッキリ言ったのだ。
これは偶然ではないだろう。
「――何者だ?」
「そろそろ、社長にもオレの噂が届いている頃だと思って」
男はハハハと笑いながらそう言うと、次に、両脇にいた女たちをドンっと邪険に払いのけた。
足元も覚束無かった彼女たちは、男に不意に押された事により、歩道へ尻もちをついてしまう。
「痛ぁ!」
「何すんのよ! ヒドイじゃない!!」
「お前ら、邪魔」
吐き捨てるように言うと、男は犬でも追い払うかのように『シッシッ』と女達へ手を振った。
たった今まで、仲睦まじく一緒にいた相手にするような態度ではない。
――――だが、
「もぉ! 本当に勝手なんだからぁ」
そう、恨みがましくボヤいた女に向かって「じゃあ別れるか」と冷たく男が言うと、逆に女は媚びたような笑みを見せたのだ。
もう片方の女もヨロヨロと立ち上がると、愛想笑いを浮かべながらしなを作って両腕を伸ばす。
「ごめーん、アタシらが悪かったね」
「機嫌なおしてよぉ、ジン~」
(やはり、この男がジンか)
ミニスカートをはいていた女の方は、転んだ表紙に膝を打ったようで、伝線したストッキングと血のにじんだ膝が痛々しい。
情のある男なら、手を貸してやるのが筋だろう。
だが、ジンの態度は変わらず尊大だ。
警戒する聖に頓着せず、ジンは近寄ってきた女達を再び邪険に追いやった。
「もう帰れ、お前ら」
「で、でもぉ――」
「しつこい女は嫌いだって、いつも言ってんだろ」
冷たく言うと、女達は酔いも覚めた様子で、目に涙を浮かべながら去って行った。
それを見遣りながら、聖は少し詰るように口を開く。
「ずいぶんな態度だな」
「ん?」
「酔っているにしても、大概にするんだな。女にはもう少し優しくしてやれ」
「あんた、もしかして意外とフェミニスト?」
ククッと笑うと、ジンは聖へ近寄った。
「息子も心配してたぜ」
この場合の息子は、一人を指すだろう。
「貴様……ユウに何を吹き込んだ?」
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