9 / 131
2 Unexpected
2 Unexpected
しおりを挟む
「そんな大したことは言ってない」
「――ユウは、外を出歩くよりも、マンションに籠って曲作りに没頭しているのが何よりも楽しいという子だ。あの子と、お前のような野蛮な輩がどうやって知り合った?」
人嫌いな面のあるユウは、あまり他人との接触を普段から好まない。
独りの世界に没頭して、時を忘れたように綺麗な声で歌い続ける、聖の大切なセイレーンだ。間違っても、このような粗暴な男とは関わり合いになるハズがない。
「あの子は、何故かオレの心配をしているようだった。貴様、どうやってユウと接触して、何を言った?」
険を孕む聖の眼差しを受け、ジンは小馬鹿にしたように笑う。
「畠山ユウは有名人だし、男のモデルの恋人の存在も公表しているからな」
「っ!?」
「オレだって、モデルだぜ? あんたは知らないようだが、オレは柊・タルヴォ・零と子役モデルの頃に同じ事務所に所属していて、ガキ向け雑誌で共演した事もあるんだ」
「なんだと?」
聖にとっては、未だ受け入れがたい事であるが――――零は、ユウの恋人だ。
それで、合点がいった。
(そうか……こいつは零のツテを使って、ユウに近付いたのか。大方、一緒に仕事をしただのダチだのと騙って近付いたな?)
真っ白い心を持っているユウだ。
きっと、ジンの言葉を言われるままに信じたのだろう。
しかし、聖のことは何と語ったのか?
「気になる?」
揶揄うような言い草に、聖はムッとする。
ここ何年も、男たちを手玉に取って、転がすように手の平で操るのは聖の方であった。
それなのに、今の自分は逆になっている。
ジンの一挙手一投足に過敏に反応して、警戒する猫のように毛を逆立てている状態だ。
――――不愉快だ。とても、気持ちが悪い。
「あんた、正直だな」
全身から不機嫌のオーラを発散する聖を見て、ジンは面白そうに笑う。
「ハハハ……オレの目的は、とても単純だぜ?」
「『単純』だと?」
「あんたに、興味があったのさ」
「酔っぱらいのクセに、何を言っているんだか」
ジンの身体から発散される濃い酒気に顔をしかめながら、聖は舌打ちをする。
こいつは、大物政治家のバカ息子を巻き込んで刃傷沙汰を起しているような男だ。
芸能界に残っていられるのも、あちこちのタレントの弱みを握っては、しぶとく業界で粘っている所為だという。
モデルを生業にしているだけあって、身長やプロポーションを含む全体の容姿は整っているが、それよりも全身から漂うような腐り淀んだ空気の方が濃い。
零と、同じくらいの年齢にしては――――その倦怠感たるや、まるで倦んだ老人のようだ。
短い頭髪は七色に染めていて派手だし、孔雀のスカジャンは夜目にも目立つ。
これぞ芸能人という出で立ちだ。
だが……。
瑞々しい、キラキラとした芸能人のそれではない。
ただの、顔が良いだけの飲んだくれのヒモだ。
どうしようもない無頼漢にしか見えない。
もしもこいつがジュピタープロダクションの面接へ来たとしても、取ることは絶対にないだろう。
「ユウはオレのことを心配しているような様子だった。さては、オレのゴシップを握っているから金を出せとでも言ったか――それともジュピタープロに、移籍の手伝いをしろとでも脅したか?」
ジンは無言だ。
多分、的を射ていたのだろう。
「ふん。どうせそんな事だろうと思った」
「……最初は、確かにそうだった。女達に金をせびって生活しているが、限界もあるしな。オレだってモデルだ。雑誌もそうだが、ウォーキングレッスンを受けて、海外のランウェイを歩くという道もまだ諦めていない。だったら、力のある事務所へ移りたいからな」
半分以上は本当だろうが、聖のカンが告げている。
「お前の言葉には、噓が混じっている」
「――ユウは、外を出歩くよりも、マンションに籠って曲作りに没頭しているのが何よりも楽しいという子だ。あの子と、お前のような野蛮な輩がどうやって知り合った?」
人嫌いな面のあるユウは、あまり他人との接触を普段から好まない。
独りの世界に没頭して、時を忘れたように綺麗な声で歌い続ける、聖の大切なセイレーンだ。間違っても、このような粗暴な男とは関わり合いになるハズがない。
「あの子は、何故かオレの心配をしているようだった。貴様、どうやってユウと接触して、何を言った?」
険を孕む聖の眼差しを受け、ジンは小馬鹿にしたように笑う。
「畠山ユウは有名人だし、男のモデルの恋人の存在も公表しているからな」
「っ!?」
「オレだって、モデルだぜ? あんたは知らないようだが、オレは柊・タルヴォ・零と子役モデルの頃に同じ事務所に所属していて、ガキ向け雑誌で共演した事もあるんだ」
「なんだと?」
聖にとっては、未だ受け入れがたい事であるが――――零は、ユウの恋人だ。
それで、合点がいった。
(そうか……こいつは零のツテを使って、ユウに近付いたのか。大方、一緒に仕事をしただのダチだのと騙って近付いたな?)
真っ白い心を持っているユウだ。
きっと、ジンの言葉を言われるままに信じたのだろう。
しかし、聖のことは何と語ったのか?
「気になる?」
揶揄うような言い草に、聖はムッとする。
ここ何年も、男たちを手玉に取って、転がすように手の平で操るのは聖の方であった。
それなのに、今の自分は逆になっている。
ジンの一挙手一投足に過敏に反応して、警戒する猫のように毛を逆立てている状態だ。
――――不愉快だ。とても、気持ちが悪い。
「あんた、正直だな」
全身から不機嫌のオーラを発散する聖を見て、ジンは面白そうに笑う。
「ハハハ……オレの目的は、とても単純だぜ?」
「『単純』だと?」
「あんたに、興味があったのさ」
「酔っぱらいのクセに、何を言っているんだか」
ジンの身体から発散される濃い酒気に顔をしかめながら、聖は舌打ちをする。
こいつは、大物政治家のバカ息子を巻き込んで刃傷沙汰を起しているような男だ。
芸能界に残っていられるのも、あちこちのタレントの弱みを握っては、しぶとく業界で粘っている所為だという。
モデルを生業にしているだけあって、身長やプロポーションを含む全体の容姿は整っているが、それよりも全身から漂うような腐り淀んだ空気の方が濃い。
零と、同じくらいの年齢にしては――――その倦怠感たるや、まるで倦んだ老人のようだ。
短い頭髪は七色に染めていて派手だし、孔雀のスカジャンは夜目にも目立つ。
これぞ芸能人という出で立ちだ。
だが……。
瑞々しい、キラキラとした芸能人のそれではない。
ただの、顔が良いだけの飲んだくれのヒモだ。
どうしようもない無頼漢にしか見えない。
もしもこいつがジュピタープロダクションの面接へ来たとしても、取ることは絶対にないだろう。
「ユウはオレのことを心配しているような様子だった。さては、オレのゴシップを握っているから金を出せとでも言ったか――それともジュピタープロに、移籍の手伝いをしろとでも脅したか?」
ジンは無言だ。
多分、的を射ていたのだろう。
「ふん。どうせそんな事だろうと思った」
「……最初は、確かにそうだった。女達に金をせびって生活しているが、限界もあるしな。オレだってモデルだ。雑誌もそうだが、ウォーキングレッスンを受けて、海外のランウェイを歩くという道もまだ諦めていない。だったら、力のある事務所へ移りたいからな」
半分以上は本当だろうが、聖のカンが告げている。
「お前の言葉には、噓が混じっている」
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる