43 / 131
7 Gene
7 Gene
しおりを挟む
意外にもこれが功を奏し、一気に豊川へと近づく結果になった。
正規の仕事のルートからAHIRUへ遠回りに接近しようと計画していたのだが、それがこの予想外のアクシデントで逆にショートカット出来た訳だ。
(子役モデルをしていたジンと、豊川や安蒜とは深い因縁がある)
因縁どころか、そもそも過去に子役モデルだったジンは、彼等が作り出したデザイナーベビーの一人だったのだから。
その情報を親友から仕入れていた彼は、救急病院へ駆け付けた豊川へ「まさかこんな所で再会するとは驚きだった。凄い偶然だ」と、子役モデルだったジンのフリをして、親し気に擦り寄ることが出来たのだ。
子役モデルだったジンの特徴は、瞳が黒かった事しか知らない。
故に彼は、地毛の色が分からぬよう頭髪を七色に染めた。
『凄い頭でしょ? オレ、二年前からモデルに復帰したんですが、このくらいインパクトが無いと印象に残らなくて使ってもらえないんですよ』
ジンの外見に疑いをもたれる前に、素早く先手を打ったが。
豊川はそれでも、当初は懐疑的だったが「この世に誕生できたのはあなた方の研究のお陰なので感謝しています」と、続けて自尊心をくすぐる様な美辞麗句を並べたところ、コロッと態度を変えて来た。
あとはこの豊川を足掛かりに、安蒜昂輝とも接点を設けるだけだったが。
しかしジンは、そこで、思いもかけぬ踏み絵を提示されることになる。
『それでは、このリストに載っているターゲットの誰かの、生体データを収集してもらうか』
つまり、ここから先に進みたければ、生贄を用意しろということだ。
連絡係の男を通じて、そう無情な条件を出されてしまった。
(オレが接触できるギリギリの範囲にいたターゲットが、御堂聖だった)
ここで、最初のミスがジンの足を引っ張ることになる。
この件に行きつく前に、まずはモデルとして安蒜に接近しようとmoveαの仕事に固執したのが失敗だった。
意図しなかったことだが、これが移籍騒ぎに発展してしまっていたのだ。
尚更、息子と不用意に接触した事で、逆に大手モデル事務所を勧められてしまい。それを断るという矛盾が生じ、余計に不審がられる結果に繋がってしまった。
(オレも、本当に行き当たりばったりで行動していたからな……)
しかしバカ息子の刃傷沙汰で、豊川と出逢ったのはラッキーだった。
マジでそれは奇跡だろう。
だが、最後の難関に生贄を要求されるとは思わなかった。
それでもジンは、脅して透かして何とか聖を口説き落とそうとしたが……少し会話をしただけでこれは無理だと直ぐに悟った。
この華麗な傾国の美女は、そう易々と落とすことは並みの男には不可能だ。
それならば、思い切って作戦を変更した方がまだマシだと思って本心の半分を吐露した。
――――正直言って、駄目元だったが。
だが、意外にもこの綺麗な華人は、それが気に入ったようだ。
『お前の愛人ごっこに付き合ってやろう』
そう、むしろ無邪気に微笑んで応えてくれた。
そこから先は、今に至る。
ジンの最大の目的は、AHIRUのシークレット・ショーへゲストとして招かれ、そこで復讐を遂げる事だ。
第一、そのショーも決して真っ当なファッション・ショーではない。
AHIRUが所有するプライベートアイランドへ、バイヤーや観客を集めて、ファッションではなく人間の見本市を開催するというものであった。
サンプルの写真や動画だけでは満足できない、そんな屈折した富裕層を招待しての、実に悪趣味なイベントだ。
なんて狂った奴等だろうと――――自分を含めて、思う。
(オレはそこに、あんたを連れて行こうとしているってのに)
どうしてそんなに、綺麗に笑っていられるんだ?
決して本気にはならないと思った。
相手は、自分よりも一回り以上歳の離れている男だ。
そんな年寄りの中年相手に、本気になる訳がないと高を括っていたが。
「ゴメン……約束を守れそうにない……」
正規の仕事のルートからAHIRUへ遠回りに接近しようと計画していたのだが、それがこの予想外のアクシデントで逆にショートカット出来た訳だ。
(子役モデルをしていたジンと、豊川や安蒜とは深い因縁がある)
因縁どころか、そもそも過去に子役モデルだったジンは、彼等が作り出したデザイナーベビーの一人だったのだから。
その情報を親友から仕入れていた彼は、救急病院へ駆け付けた豊川へ「まさかこんな所で再会するとは驚きだった。凄い偶然だ」と、子役モデルだったジンのフリをして、親し気に擦り寄ることが出来たのだ。
子役モデルだったジンの特徴は、瞳が黒かった事しか知らない。
故に彼は、地毛の色が分からぬよう頭髪を七色に染めた。
『凄い頭でしょ? オレ、二年前からモデルに復帰したんですが、このくらいインパクトが無いと印象に残らなくて使ってもらえないんですよ』
ジンの外見に疑いをもたれる前に、素早く先手を打ったが。
豊川はそれでも、当初は懐疑的だったが「この世に誕生できたのはあなた方の研究のお陰なので感謝しています」と、続けて自尊心をくすぐる様な美辞麗句を並べたところ、コロッと態度を変えて来た。
あとはこの豊川を足掛かりに、安蒜昂輝とも接点を設けるだけだったが。
しかしジンは、そこで、思いもかけぬ踏み絵を提示されることになる。
『それでは、このリストに載っているターゲットの誰かの、生体データを収集してもらうか』
つまり、ここから先に進みたければ、生贄を用意しろということだ。
連絡係の男を通じて、そう無情な条件を出されてしまった。
(オレが接触できるギリギリの範囲にいたターゲットが、御堂聖だった)
ここで、最初のミスがジンの足を引っ張ることになる。
この件に行きつく前に、まずはモデルとして安蒜に接近しようとmoveαの仕事に固執したのが失敗だった。
意図しなかったことだが、これが移籍騒ぎに発展してしまっていたのだ。
尚更、息子と不用意に接触した事で、逆に大手モデル事務所を勧められてしまい。それを断るという矛盾が生じ、余計に不審がられる結果に繋がってしまった。
(オレも、本当に行き当たりばったりで行動していたからな……)
しかしバカ息子の刃傷沙汰で、豊川と出逢ったのはラッキーだった。
マジでそれは奇跡だろう。
だが、最後の難関に生贄を要求されるとは思わなかった。
それでもジンは、脅して透かして何とか聖を口説き落とそうとしたが……少し会話をしただけでこれは無理だと直ぐに悟った。
この華麗な傾国の美女は、そう易々と落とすことは並みの男には不可能だ。
それならば、思い切って作戦を変更した方がまだマシだと思って本心の半分を吐露した。
――――正直言って、駄目元だったが。
だが、意外にもこの綺麗な華人は、それが気に入ったようだ。
『お前の愛人ごっこに付き合ってやろう』
そう、むしろ無邪気に微笑んで応えてくれた。
そこから先は、今に至る。
ジンの最大の目的は、AHIRUのシークレット・ショーへゲストとして招かれ、そこで復讐を遂げる事だ。
第一、そのショーも決して真っ当なファッション・ショーではない。
AHIRUが所有するプライベートアイランドへ、バイヤーや観客を集めて、ファッションではなく人間の見本市を開催するというものであった。
サンプルの写真や動画だけでは満足できない、そんな屈折した富裕層を招待しての、実に悪趣味なイベントだ。
なんて狂った奴等だろうと――――自分を含めて、思う。
(オレはそこに、あんたを連れて行こうとしているってのに)
どうしてそんなに、綺麗に笑っていられるんだ?
決して本気にはならないと思った。
相手は、自分よりも一回り以上歳の離れている男だ。
そんな年寄りの中年相手に、本気になる訳がないと高を括っていたが。
「ゴメン……約束を守れそうにない……」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
36
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる