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9 living hell
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最悪、死体でも出てこない限りは、警察は自ら捜査などはしないのだ。
故に、聖がどんな目に遭わされようが「これは自分も同意していた事だ」と言い張れば、そこで全てが終る。事件になりようが無い。
今回の騒動の元凶であろう安蒜と豊川は、リスクとは無縁というワケだ。
「悪知恵が働くというか、何というか……やっている事は大胆なのに、ずいぶんとそこは慎重なんだな。やつらと比べると、お前はやはり短慮だな」
率直な感想だったが、それはジンの癇に障ったらしい。
ジンは聖の肩を強く掴むと、燃えるような怒りの目で睨んで来た。
「あんたに、オレの何が分かるっていうんだ!」
「……」
「オレは今まで、全部独りでやってきた。必死の思いでここまで漕ぎ着けたんだ。どれだけ苦労をしたか――」
「孤軍奮闘ってやつか」
冷静な聖の声に、ハッとした様子で手を離す。
そうして、小さな声で呟いた。
「ワリィ……そもそも、あんたには関係ない話なんだよな」
確かにそうだが。
しかし、この期に及んで他人と括られるのも寂しいような気がして、聖は言葉をこぼした。
「――――やっぱり、恋人か?」
「なに?」
「お前は、恋人の為に今回の騒ぎを起こしたんだな」
今度は、ジンの方が口を噤む。
聖には、詳しい事は未だ何も話していないが……察しのいい男だ、きっと色々と洞察して独自に答えを導き出しているのだろう。
(オレも、ついペラペラと喋ったしな)
長年、ジゴロで食ってきたジンだ。女の扱い方など簡単すぎて、児戯に等しい。
だから簡単に、この男も落とせると信じていたが。
今はもう、それは不可能に近い事だと実感していた。
「……だな。恋人だと言われれば、否定は出来ない」
故に、聖がどんな目に遭わされようが「これは自分も同意していた事だ」と言い張れば、そこで全てが終る。事件になりようが無い。
今回の騒動の元凶であろう安蒜と豊川は、リスクとは無縁というワケだ。
「悪知恵が働くというか、何というか……やっている事は大胆なのに、ずいぶんとそこは慎重なんだな。やつらと比べると、お前はやはり短慮だな」
率直な感想だったが、それはジンの癇に障ったらしい。
ジンは聖の肩を強く掴むと、燃えるような怒りの目で睨んで来た。
「あんたに、オレの何が分かるっていうんだ!」
「……」
「オレは今まで、全部独りでやってきた。必死の思いでここまで漕ぎ着けたんだ。どれだけ苦労をしたか――」
「孤軍奮闘ってやつか」
冷静な聖の声に、ハッとした様子で手を離す。
そうして、小さな声で呟いた。
「ワリィ……そもそも、あんたには関係ない話なんだよな」
確かにそうだが。
しかし、この期に及んで他人と括られるのも寂しいような気がして、聖は言葉をこぼした。
「――――やっぱり、恋人か?」
「なに?」
「お前は、恋人の為に今回の騒ぎを起こしたんだな」
今度は、ジンの方が口を噤む。
聖には、詳しい事は未だ何も話していないが……察しのいい男だ、きっと色々と洞察して独自に答えを導き出しているのだろう。
(オレも、ついペラペラと喋ったしな)
長年、ジゴロで食ってきたジンだ。女の扱い方など簡単すぎて、児戯に等しい。
だから簡単に、この男も落とせると信じていたが。
今はもう、それは不可能に近い事だと実感していた。
「……だな。恋人だと言われれば、否定は出来ない」
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