彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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9 living hell

9-21

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 安蒜の口からは、容赦のない罵声が飛び出した。

「傾国の美女と褒めそやされているが、結局は色を使って男を操っているだけじゃないか! お前なんか最下層の人間だ! マシなのはその顔だけなんだから、キープする手伝いをしてやってもいいと親切心で言ってやったのに!! それを、お前は――」

「だから、オレはそんなもんハナっから興味ないってんだよ。耳も改造しすぎて聞こえねぇのか?」

 聖としては、別に悪口を言っているつもりはなかったが。

 しかし、強くコンプレックスに思っている者からしたら、これはとても耐えられるような罵倒ではなかったようだ。

 安蒜はガタガタと怒りで身体を震わせると、テーブルの上にあった呼び鈴を突如掴み、乱暴に鳴らす。

 すると、間髪置かず屈強な体つきをしたSP風の男たちが乱入してきた。

 安蒜は聖を指差し、男たちへ命令する。

「今すぐ、そいつを捕まえろ!」

「――」

 咄嗟に前蹴りを繰り出そうとした聖を牽制するように、男の一人が声を上げた。

「抵抗はしないでください! お連れジン様の安全が保障できなくなります」

 そう言われては、暴れる事は出来ない。

 聖は不機嫌な顔のまま、仕方なしに両手を上げた。

「……これでいいか?」

「ご協力、感謝します。こちらの用事が済み次第解放しますので、ご安心ください」

 皮膚に傷が付かないよう、柔らかいが強靭な皮で作られた手錠を掛けられる聖を見遣りながら、安蒜は歪んだ笑みを浮かべた。

「ふふ、僕を愚弄した罰を受けてもらうか」

「安蒜様! 豊川様から、そういった事は控えるようにと厳命されております」

 鋭い声で牽制するSPに対し、安蒜は『やれやれ』と首を振る。

 しかし、すぐに何か思いついたらしい安蒜はニヤリと笑って口を開いた。

「――じゃあ、生体データの採取をショーの舞台で実行するのはどうだろう?」

「どういう意味でしょうか」

 訝し気に訊き返したSPに向かい、安蒜は嗤う。
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