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処方された薬を服用しているからとか、そういう話じゃない。
本当に、心の底から、世界中で一番安心できる場所がこの男の腕の中なのだと……ユウは確信したからだ。
勿論、安心できる場所というなら聖も同じだが、聖と零では『愛』の種類は全く違う。
ユウの胸を、こんなに高鳴らせる男など、世界中で零ただ一人だ。
「オレをこんなにしやがって。覚悟しろよ、コノヤロー」
わざと蓮っ葉な言い方をして、ユウは零の上に乗ったまま、相手の服に手を掛ける。
そのまま男らしく脱がせようとするが、そこは上手く行かなかった。
服は零の肩で留まり、頭の中で思い描いていた通りに、格好よく恋人の服を抜き取る事が出来ない。
「……こんな、ヘンな所にボタンの付いてる服なんか着てくるなよ! 」
照れ隠しにブツブツと文句を言い、零の上着のボタンを外そうとまごつくユウに、零は微笑みを浮かべる。
「――ユウさん! 」
「わっ!? 」
逆に下から抱き付かれ、ゴロンと反転してしまう。
今度は、ユウが下に。
零の方が、上になった。
「オレを襲うなんて、ユウさんにはまだまだ早いですよ」
「あ、あのなっ! オレの方が年上なんだぞ!? 」
「恋愛経験は、ユウさんよりオレの方がずっと先輩ですよ。強気に迫って恋人の服を脱がせようとするなんて……そんな可愛い真似、どっかで調べたんですか? 」
からかう様に言うと、ユウはむぅっと頬を膨らませた。
「――――ちょっと強引なくらいが、格好いい彼氏の条件だって……」
「ほぉ? 」
「どーせオレは、経験値が不足してるよ! 」
顔を真っ赤にすると、ユウは零を押しのけて上体を起こそうと、ジタバタする。
零は笑いながら、そのままユウをひょいと抱えて立ち上がった。
「っ! 」
「捕まえた」
「い、幾ら何でも……重いだろう? 無理しないで下ろせよ」
しかし、零は微笑んだまま、ユウを抱えて余裕で歩く。
向かう先は――ベッド・ルームだ。
それが分かり、ユウは顔を更に真っ赤にする。
腕の中の恋人の、その様子を見て――零は、優しく声を掛ける。
「……もう少し、落ち着くまで向こうでお話しでもしますか? 」
「――だ」
「え? 」
「いやだ。今夜しか自由になれる時間がないんだ……それならお前と、その……」
完熟トマトのような顔色になり、ユウはぷいっと零から顔を背ける。
ユウなりに格好よくビシッと決めようと、インターネットで事前に調べたり、雑誌や映画やドラマまで見て予習したが……実際は、何の役に立ちそうもない。
恋愛経験値は、たしかにユウは圧倒的に不足している。
でも、今は――――……
不安を上回る期待。
恐怖よりも好奇心。
同性同士という事など微塵も入り込まない、はるかに巨大で熱烈な愛。
「その……」
「? 大丈夫ですよ。オレはそれなりに経験値があるから。だから、ユウさんが傷つかないように――時間を掛けて、ゆっくりと……慣らします、ね」
耳元で甘く囁かれ、ユウは、顔だけでなく体まで真っ赤になる。
「……から」
「え? 」
「だから……ナカ、綺麗にして――その……な、慣らしておいたから、その――大丈夫、だから……」
消え入りそうな声で、ユウはぼそぼそと呟くように言った。
そう、ユウはインターネットで調べて、知識だけは仕入れた。
だから、事前準備はしっかりとしておいたのだ。
本当に、心の底から、世界中で一番安心できる場所がこの男の腕の中なのだと……ユウは確信したからだ。
勿論、安心できる場所というなら聖も同じだが、聖と零では『愛』の種類は全く違う。
ユウの胸を、こんなに高鳴らせる男など、世界中で零ただ一人だ。
「オレをこんなにしやがって。覚悟しろよ、コノヤロー」
わざと蓮っ葉な言い方をして、ユウは零の上に乗ったまま、相手の服に手を掛ける。
そのまま男らしく脱がせようとするが、そこは上手く行かなかった。
服は零の肩で留まり、頭の中で思い描いていた通りに、格好よく恋人の服を抜き取る事が出来ない。
「……こんな、ヘンな所にボタンの付いてる服なんか着てくるなよ! 」
照れ隠しにブツブツと文句を言い、零の上着のボタンを外そうとまごつくユウに、零は微笑みを浮かべる。
「――ユウさん! 」
「わっ!? 」
逆に下から抱き付かれ、ゴロンと反転してしまう。
今度は、ユウが下に。
零の方が、上になった。
「オレを襲うなんて、ユウさんにはまだまだ早いですよ」
「あ、あのなっ! オレの方が年上なんだぞ!? 」
「恋愛経験は、ユウさんよりオレの方がずっと先輩ですよ。強気に迫って恋人の服を脱がせようとするなんて……そんな可愛い真似、どっかで調べたんですか? 」
からかう様に言うと、ユウはむぅっと頬を膨らませた。
「――――ちょっと強引なくらいが、格好いい彼氏の条件だって……」
「ほぉ? 」
「どーせオレは、経験値が不足してるよ! 」
顔を真っ赤にすると、ユウは零を押しのけて上体を起こそうと、ジタバタする。
零は笑いながら、そのままユウをひょいと抱えて立ち上がった。
「っ! 」
「捕まえた」
「い、幾ら何でも……重いだろう? 無理しないで下ろせよ」
しかし、零は微笑んだまま、ユウを抱えて余裕で歩く。
向かう先は――ベッド・ルームだ。
それが分かり、ユウは顔を更に真っ赤にする。
腕の中の恋人の、その様子を見て――零は、優しく声を掛ける。
「……もう少し、落ち着くまで向こうでお話しでもしますか? 」
「――だ」
「え? 」
「いやだ。今夜しか自由になれる時間がないんだ……それならお前と、その……」
完熟トマトのような顔色になり、ユウはぷいっと零から顔を背ける。
ユウなりに格好よくビシッと決めようと、インターネットで事前に調べたり、雑誌や映画やドラマまで見て予習したが……実際は、何の役に立ちそうもない。
恋愛経験値は、たしかにユウは圧倒的に不足している。
でも、今は――――……
不安を上回る期待。
恐怖よりも好奇心。
同性同士という事など微塵も入り込まない、はるかに巨大で熱烈な愛。
「その……」
「? 大丈夫ですよ。オレはそれなりに経験値があるから。だから、ユウさんが傷つかないように――時間を掛けて、ゆっくりと……慣らします、ね」
耳元で甘く囁かれ、ユウは、顔だけでなく体まで真っ赤になる。
「……から」
「え? 」
「だから……ナカ、綺麗にして――その……な、慣らしておいたから、その――大丈夫、だから……」
消え入りそうな声で、ユウはぼそぼそと呟くように言った。
そう、ユウはインターネットで調べて、知識だけは仕入れた。
だから、事前準備はしっかりとしておいたのだ。
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