キラワレモノ

亜衣藍

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 物凄く恥ずかしかったが――とにかく、ユウは、自分で出来る準備だけは完璧にやっておこうと、彼なりに頑張ったのである。

 こんないじらしい恋人が腕の中にあって、喜びを感じない男など皆無だろう。

 零の顔は感動で紅潮し、幸せで胸が一杯になる。

 愛しくて愛しくて、もう一分一秒も待っていられない。

「ユウさん! 」

 ベッドへと、恋人と一緒に一気に倒れ込む。

 そして、小鳥のようなキスを一度だけ交わして、もどかしげに、零は自分の服を脱ぎ始める。

 ユウも、顔を真っ赤にさせたまま、自分の服を脱いでいく。

 しかし、緊張と期待で、その指が思うように動かない。

「あ、あれっ……クソっ! 」

 格好よく決めようと思っていたのに、さっきから失敗続きだ。

 ユウは焦って、履いているスキニージーンズのジッパーを下そうとするが、ジッパーが布を噛んでしまって下ろす事が出来ない。

 こんな場合を想定して、もっとラフな服を着ておけば良かったと今更ながら後悔する。

 何だかもう、情けなくて泣きたくなる。

「ああ、もう! 」

「――――ユウさん」

 零は微笑みながら、ユウのジッパーへと手を掛ける。

 そして、丁寧に紳士の手付きで……だが興奮を滲ませながら、ユウのジーンズを脱がせていく。

「ありがとう……オレ、もっとちゃんとするつもりだったんだけど……ダメだな……」

「ふふ……そんな貴方だから、オレは好きになったんですよ」

 下着一枚だけになったところで、お互いの裸身に、それぞれ熱い眼差しになって視線を這わせる。

 零は、普段からジムに通い、モデルに相応しい体形を維持するように調整しているので、ギリシャの彫刻のようにバランスの取れた、堂々とした美丈夫な身体だ。

 ユウも、時々聖や真壁に連れられ、ジムに行ったりもするが――元々筋肉が付きにくいのか、その身体は細くて華奢だ。胸板も薄く、肩もほっそりとしている。

 こうやって比べると、とても同じ男とは思えない。

「…………オレって、貧相な身体だよな……」

「? 」

「本当は、オレもお前みたいに見目のいい身体になりたかった……」

 これに、零はクスリと笑う。

 ユウの身体は、ルックス同様に可憐で華奢で可愛い。

 乳白色の肌は蕩けるように柔らかくて、しっとりと手に吸い付いてくる。可愛いピンク色の胸の突起はたまらなく愛らしく、無意識に、撫でたくなって手が伸びる。

「っ! 」

「……可愛いです、ここ……」

「や、やめろよ……」

 頬を染めて背ける顔が、耳まで真っ赤になっていて本当に可愛い。

 零は思わず、またギュッと抱き付いてしまう。

 この人は、オレだけの恋人だ。オレだけの宝物だと大声で宣言したくなる。

「大好きです、愛しています、心の底から惚れています」

「もう――そんなの、知ってるよ」

 ユウは笑いながら、抱き付いてくる零の胸へと頬を寄せ、すりっと頬を擦る。

 くすぐったくて、零はユウの額へチュッとキスのお返しをする。

――――そして、また互いの目線が絡んだ。

 その目線だけで、互いの心臓が爆発しそうに熱く鼓動を打つ。

「もっと、キス――――して、いいですか? 」

「…………いちいち訊くな」

 ユウはそう言うと、自分の方から零の肩へ腕を回し、キスをした。

 すると、すぐに厚い舌がユウの口内へ侵入し、ユウの舌を絡め取って、深く深く口内を侵す。

「う……ん……」

「あぁ……」

 互いの、飲み込めない唾液が顎を伝い、首から胸から濡らしていく。

 どうして、こんなに甘いんだろう?

 二人は夢中になって、深い深い口づけを交わす。
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