キラワレモノ

亜衣藍

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 自分こそが、やはり真実の愛に導いてやらねば! 

 二人の男達は、ずっと抱いていた不満を爆発させる大義名を見つけて、そのままの勢いで立ち上がった。

「殿下方、どうしました? 」

 直ぐにSPが反応し、そう訊いて来る。

 これに、二人は声をそろえて答えた。

「「私はミドーを迎えに行く! 」」

 同時に、キッと睨み合う。

「侯爵は座っていてはどうですか? 父の話し相手をするのがお役目でしょう? 」

「何を言う! お前こそ兄の息子なら、親子仲良く並んで座って、そのまま歓談していろ」

「ナモ・コレの警備責任者は叔父上でしょう。あなたが場を離れてどうするつもりですか? 」

「お前こそ! ナモ・コレの主催はお前の企業だろう。そのお前がフロントロウから離れてどうする気だ? 」

 言い争いをしながら、二人とも御堂聖の後を追い(実はユウだが)彼が消えた方向へと歩を進める。

 付き従う侍従たちは困惑しながらも、尊い身分である王子と侯爵の腕を掴んで制止させる訳にもいかず、距離を取りながらその後ろを歩いた。

 肝心のヘイマン・ルドー・ナモ大公は、そんな二人に何のリアクションも起こさず前を見たまま静観している。

 ここで大公が一言『座りなさい』と言ってくれれば、余計な騒ぎも起きないのだが――――?

 侍従とSPは嘆息しながら、仕方なしに、王子と侯爵側、大公側にそれぞれ別れた。

 時間は差し迫っている。

 多くのビップが揃う中で、大公と王子侯爵の指示もない中、彼等に勝手は出来ない。

「……レディース&ジェントルマン!! 今宵はファッションの祭典へ足を運んでいただきありがとうございます。ナモ公国で初開催されるビックイベント! 最先端のファッションに身を包んだモデル達がランウェイを歩きます。写真はご自由に! SNSでの発信もどうぞ! ただし縫製工場へ直行はNGでお願いします」

 ワッと、歓声が上がった。

 観客席側の、どんどん光源を絞られる照明に半比例して、ランウェイには煌々としたライトが当たる。

 高揚感を煽るようなアナウンスが会場内へ響き渡り、ノリのいい音楽が流れてくる。

 いよいよ始まるショーに、会場のボルテージはうなぎ登りだ。

 そんな中、バックヤードへ姿を消したユウや王子達貴人であったが――――逆に会場には、明日のビック・フェスMHJを控え、気分転換に繰り出してきたアーティストやミュージシャンも多く見られた。

 勿論、自室に籠ったりスタジオで最終打ち合わせをしている者も多いが、約半数はこの【ナモ・コレ】へ出席していた。

 何故なら――――気分転換も確かにそうだが、それより差し迫った理由もある。

 つまりこの様子が、全世界へ向けて配信されるという事だ。

 ここでカメラに映れば、確実に、世界の人々の目に留まることが出来る。

 明日のMHJは、ネット投票でグランプリが決まるのだから、ここでメディアに顔を出してアピールするのは得策だと、誰しもが思う。

(彼らは、今回のMHJが、実は、大掛かりな八百長だとはほとんどが知らない)

 特に、ネットの影響力を重視する韓国芸能界は…………。

   ◇

「場所、ここで大丈夫なんだろうな」

「ああ、ほら。イスにマークがある。ここで間違いないみたいだよ」

「マネの分の席は、確保できなかったらしいぜ。ったく、急に差し込むからだよな~根回しに問題あるよな、絶対」

 揃いのタキシードに身を包み、韓国ボーイズユニットViVaceヴィヴァーチェが観客席に現れた。

 他にも、USロックバンドBizarreビザール SummerサマーアメリカからはJumeauジュモーと、大御所が顔を見せている。

 ViVaceの事務所も相当頑張ったか、フロントロウに近い中々いい場所をキープしたようではあるが、US、USAなどのミュージシャン達は、ViVaceより更に前の方の席に座り、そちらの方がよりバシャバシャとフラッシュが多く焚かれている。

 やはり、世界規模で見れば、どうしてもアジア勢は二番手三番手になってしまう。
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