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知らない後輩に「おはよう」って言われるだけ
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「あ、せんぱい…おはようございます」
私がベッドから出ると、彼はごく自然に私のベッドを整え始めた。正直、見ず知らずの人間──しかも異性──に、自分がついさっきまで寝ていたベッドを整えてもらうのはかなり抵抗があったのだが、まだ全く頭の整理がついていない私はただそれを呆然と見ていることしかできなかった。彼のてきぱきとした動作は、まるでこの作業が普段から行われていることなのだとこちらが錯覚するほどで、いつの間にか彼のペースに飲まれそうになっている自分に恐怖を覚える。
手際よくシーツのしわを伸ばす彼の横顔は、爽やか系とでもいうのだろうか、なかなか整った顔立ちをしている。こんな状況でさえなければ普通に好ましく思えただろうに、と呑気に思えてしまうくらいには私の好みの顔なのだ、憎たらしいことに。当の彼はというと、「まだ朝…ですよね、ギリギリですけど……」などと、独り言にしてはやや大きすぎる声でブツブツと言いながら、何故か心底嬉しそうに作業を続けている。
「先輩は本当に朝が弱いですよね」
また男が言う。そんな所も可愛い、と付け足しながら、ちらりとこちらに視線を向けて微笑む。…返事をすべきなのだろうか。もっとも、未だに状況が何一つ掴めず、自室にいる知らない男への恐怖ばかりが募る私には声を発することなどできそうにないのだが。そんな私に気づいているのかいないのか、一通り作業が終わったらしい彼は改まった様子で体ごと私に向き直る。
「おはようございます、先輩」
爽やかな笑顔を崩さないままの彼が放った朝の挨拶は語尾にハートマークでも付きそうなくらい甘ったるくて、それがかえって彼の不気味さを増長させている気がした。
私がベッドから出ると、彼はごく自然に私のベッドを整え始めた。正直、見ず知らずの人間──しかも異性──に、自分がついさっきまで寝ていたベッドを整えてもらうのはかなり抵抗があったのだが、まだ全く頭の整理がついていない私はただそれを呆然と見ていることしかできなかった。彼のてきぱきとした動作は、まるでこの作業が普段から行われていることなのだとこちらが錯覚するほどで、いつの間にか彼のペースに飲まれそうになっている自分に恐怖を覚える。
手際よくシーツのしわを伸ばす彼の横顔は、爽やか系とでもいうのだろうか、なかなか整った顔立ちをしている。こんな状況でさえなければ普通に好ましく思えただろうに、と呑気に思えてしまうくらいには私の好みの顔なのだ、憎たらしいことに。当の彼はというと、「まだ朝…ですよね、ギリギリですけど……」などと、独り言にしてはやや大きすぎる声でブツブツと言いながら、何故か心底嬉しそうに作業を続けている。
「先輩は本当に朝が弱いですよね」
また男が言う。そんな所も可愛い、と付け足しながら、ちらりとこちらに視線を向けて微笑む。…返事をすべきなのだろうか。もっとも、未だに状況が何一つ掴めず、自室にいる知らない男への恐怖ばかりが募る私には声を発することなどできそうにないのだが。そんな私に気づいているのかいないのか、一通り作業が終わったらしい彼は改まった様子で体ごと私に向き直る。
「おはようございます、先輩」
爽やかな笑顔を崩さないままの彼が放った朝の挨拶は語尾にハートマークでも付きそうなくらい甘ったるくて、それがかえって彼の不気味さを増長させている気がした。
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