ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜

柴咲心桜

文字の大きさ
12 / 60
第1章 死神編

第12話 来襲!総督のハイド

しおりを挟む
「──《死神》の居場所が判明したというのは、本当ですか?」

    ギルドの会議室。
    空気が凍りつくような質問を投げかけたのは、《白金の盾》のジェイルだった。

「……ああ」

    短く頷いたのは、ギルド総督・ハイド。
    テーブルに肘をつき、厳めしい顔のまま視線を下げている。

「イクールカウンターに入っていくのを、見た者がいる」

「……しかし、変装していた可能性は?」

「その必要はないだろう。あそこは“冒険者ギルド”だぞ?」

     その一言で、ジェイルは合点がいった。

   《死神》が変装のスキルを使う理由は、主に戦場や外部での身分隠しだ。ギルド内部で正体を隠す必要はない――自らが“職員”なのだから。

「……納得しました。でも、他の者たちはまだ疑っているようです」

「当然だ。今まで《死神》の顔を見た者など誰一人いない。『居場所が分かった』などと唐突に言われても、すぐには信じられんだろうな」

    そう言って、ハイドは口角をわずかに上げた。

「実は、君たちにまだ話していなかったことがある」

「……なんです?」

   会議室にいた全員の視線が、自然とハイドに集まる。

「君たちが潜入していたあのダンジョン──実は、別の人間にも監視を命じていた」

「!?」

「……それは本当ですか?」

「ああ。本当だとも。そしてその者からの報告で、ようやく《死神》の“正体”が見えた」

「なら、早く教えてください!」

    ジェイルが身を乗り出して問う。
    だが、ハイドは微笑みすら見せず、静かに言った。

「まずは、私が本人に会う。話はそれからだ」

「……分かりました」

* * *

翌日──

「先輩!今夜、ディナーに行きませんか?」

    昼下がり、ギルドカウンターで書類整理をしていたサティは、後輩ルリの声に顔を上げた。

「ディナー? ……仕事があるでしょ?」

「期間限定で、“トロピカルクレープ”ってのが出てるんですよ!めちゃくちゃおいしいらしくて!」

   嬉々として話すルリの姿に、思わず笑みが漏れる。

「……そんなのに釣られるなんて、ほんとあなたらしいわね」

   そんな何気ない日常が、突如として騒がしいざわめきによって打ち破られた。

「おい、見ろよ!」

「なんであの人がこの支部に!?」

   ザワッとギルド全体が動揺する。

   サティも思わず顔を上げた。
    目に飛び込んできたのは、黒と金の装束に身を包んだ──ギルド総督・ハイド。

「なっ……!」

「総督様! 何かご用件でしょうか!」

   支部マスターが慌てて出迎えるが、ハイドは静かに手を振る。

「私に構わず、仕事に戻れ」

「は、はっ!」

   緊張の空気の中、サティの足元から冷たい汗が流れる。

(……なんで、こいつがここに?)

(私の正体が……バレた?)

(バレたとしたら……いつ? どこで? どうして!?)

   動揺を隠そうと必死に顔を保つ彼女の前に、ハイドが静かに歩み寄ってきた。

「嬢ちゃん、仕事は大丈夫か?」

「は、はい……だいじょうぶ、です」

   声が震えるのを抑えきれない。ハイドは一歩踏み込む。

「顔色が悪いが……体調がすぐれないか?」

「い、いえ……大丈夫です……っ」

(慌てない。冷静に……私はただの“受付嬢”。いつも通りでいればいい)

「何か……御用でしょうか?」

   サティが努めて自然に声を出すと、ハイドは目を細めた。

「上手く隠してるつもりのようだが……俺には通用しないぞ」

   低い声。その瞬間、サティの背筋を冷たいものが走る。

「……明日。冒険者ギルド本部に来い」

   短く告げて、ハイドは何も言わず踵を返す。支部内の職員たちに一礼しながら、堂々と去っていった。

   その背中を見送りながら──サティ・フライデーは凍りついていた。

(……私、バレたの?)

(それとも……ただの駆け引き?)

(明日、何を聞かれるの? 私は……どうするべき?)

「……冒険者ギルド総督ハイドか」

   名を呟き、サティは深く息を吐いた。
   仮面を脱がされるその日が、ついに訪れようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

処理中です...