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第1章 死神編
第12話 来襲!総督のハイド
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「──《死神》の居場所が判明したというのは、本当ですか?」
ギルドの会議室。
空気が凍りつくような質問を投げかけたのは、《白金の盾》のジェイルだった。
「……ああ」
短く頷いたのは、ギルド総督・ハイド。
テーブルに肘をつき、厳めしい顔のまま視線を下げている。
「イクールカウンターに入っていくのを、見た者がいる」
「……しかし、変装していた可能性は?」
「その必要はないだろう。あそこは“冒険者ギルド”だぞ?」
その一言で、ジェイルは合点がいった。
《死神》が変装のスキルを使う理由は、主に戦場や外部での身分隠しだ。ギルド内部で正体を隠す必要はない――自らが“職員”なのだから。
「……納得しました。でも、他の者たちはまだ疑っているようです」
「当然だ。今まで《死神》の顔を見た者など誰一人いない。『居場所が分かった』などと唐突に言われても、すぐには信じられんだろうな」
そう言って、ハイドは口角をわずかに上げた。
「実は、君たちにまだ話していなかったことがある」
「……なんです?」
会議室にいた全員の視線が、自然とハイドに集まる。
「君たちが潜入していたあのダンジョン──実は、別の人間にも監視を命じていた」
「!?」
「……それは本当ですか?」
「ああ。本当だとも。そしてその者からの報告で、ようやく《死神》の“正体”が見えた」
「なら、早く教えてください!」
ジェイルが身を乗り出して問う。
だが、ハイドは微笑みすら見せず、静かに言った。
「まずは、私が本人に会う。話はそれからだ」
「……分かりました」
* * *
翌日──
「先輩!今夜、ディナーに行きませんか?」
昼下がり、ギルドカウンターで書類整理をしていたサティは、後輩ルリの声に顔を上げた。
「ディナー? ……仕事があるでしょ?」
「期間限定で、“トロピカルクレープ”ってのが出てるんですよ!めちゃくちゃおいしいらしくて!」
嬉々として話すルリの姿に、思わず笑みが漏れる。
「……そんなのに釣られるなんて、ほんとあなたらしいわね」
そんな何気ない日常が、突如として騒がしいざわめきによって打ち破られた。
「おい、見ろよ!」
「なんであの人がこの支部に!?」
ザワッとギルド全体が動揺する。
サティも思わず顔を上げた。
目に飛び込んできたのは、黒と金の装束に身を包んだ──ギルド総督・ハイド。
「なっ……!」
「総督様! 何かご用件でしょうか!」
支部マスターが慌てて出迎えるが、ハイドは静かに手を振る。
「私に構わず、仕事に戻れ」
「は、はっ!」
緊張の空気の中、サティの足元から冷たい汗が流れる。
(……なんで、こいつがここに?)
(私の正体が……バレた?)
(バレたとしたら……いつ? どこで? どうして!?)
動揺を隠そうと必死に顔を保つ彼女の前に、ハイドが静かに歩み寄ってきた。
「嬢ちゃん、仕事は大丈夫か?」
「は、はい……だいじょうぶ、です」
声が震えるのを抑えきれない。ハイドは一歩踏み込む。
「顔色が悪いが……体調がすぐれないか?」
「い、いえ……大丈夫です……っ」
(慌てない。冷静に……私はただの“受付嬢”。いつも通りでいればいい)
「何か……御用でしょうか?」
サティが努めて自然に声を出すと、ハイドは目を細めた。
「上手く隠してるつもりのようだが……俺には通用しないぞ」
低い声。その瞬間、サティの背筋を冷たいものが走る。
「……明日。冒険者ギルド本部に来い」
短く告げて、ハイドは何も言わず踵を返す。支部内の職員たちに一礼しながら、堂々と去っていった。
その背中を見送りながら──サティ・フライデーは凍りついていた。
(……私、バレたの?)
(それとも……ただの駆け引き?)
(明日、何を聞かれるの? 私は……どうするべき?)
「……冒険者ギルド総督ハイドか」
名を呟き、サティは深く息を吐いた。
仮面を脱がされるその日が、ついに訪れようとしていた。
ギルドの会議室。
空気が凍りつくような質問を投げかけたのは、《白金の盾》のジェイルだった。
「……ああ」
短く頷いたのは、ギルド総督・ハイド。
テーブルに肘をつき、厳めしい顔のまま視線を下げている。
「イクールカウンターに入っていくのを、見た者がいる」
「……しかし、変装していた可能性は?」
「その必要はないだろう。あそこは“冒険者ギルド”だぞ?」
その一言で、ジェイルは合点がいった。
《死神》が変装のスキルを使う理由は、主に戦場や外部での身分隠しだ。ギルド内部で正体を隠す必要はない――自らが“職員”なのだから。
「……納得しました。でも、他の者たちはまだ疑っているようです」
「当然だ。今まで《死神》の顔を見た者など誰一人いない。『居場所が分かった』などと唐突に言われても、すぐには信じられんだろうな」
そう言って、ハイドは口角をわずかに上げた。
「実は、君たちにまだ話していなかったことがある」
「……なんです?」
会議室にいた全員の視線が、自然とハイドに集まる。
「君たちが潜入していたあのダンジョン──実は、別の人間にも監視を命じていた」
「!?」
「……それは本当ですか?」
「ああ。本当だとも。そしてその者からの報告で、ようやく《死神》の“正体”が見えた」
「なら、早く教えてください!」
ジェイルが身を乗り出して問う。
だが、ハイドは微笑みすら見せず、静かに言った。
「まずは、私が本人に会う。話はそれからだ」
「……分かりました」
* * *
翌日──
「先輩!今夜、ディナーに行きませんか?」
昼下がり、ギルドカウンターで書類整理をしていたサティは、後輩ルリの声に顔を上げた。
「ディナー? ……仕事があるでしょ?」
「期間限定で、“トロピカルクレープ”ってのが出てるんですよ!めちゃくちゃおいしいらしくて!」
嬉々として話すルリの姿に、思わず笑みが漏れる。
「……そんなのに釣られるなんて、ほんとあなたらしいわね」
そんな何気ない日常が、突如として騒がしいざわめきによって打ち破られた。
「おい、見ろよ!」
「なんであの人がこの支部に!?」
ザワッとギルド全体が動揺する。
サティも思わず顔を上げた。
目に飛び込んできたのは、黒と金の装束に身を包んだ──ギルド総督・ハイド。
「なっ……!」
「総督様! 何かご用件でしょうか!」
支部マスターが慌てて出迎えるが、ハイドは静かに手を振る。
「私に構わず、仕事に戻れ」
「は、はっ!」
緊張の空気の中、サティの足元から冷たい汗が流れる。
(……なんで、こいつがここに?)
(私の正体が……バレた?)
(バレたとしたら……いつ? どこで? どうして!?)
動揺を隠そうと必死に顔を保つ彼女の前に、ハイドが静かに歩み寄ってきた。
「嬢ちゃん、仕事は大丈夫か?」
「は、はい……だいじょうぶ、です」
声が震えるのを抑えきれない。ハイドは一歩踏み込む。
「顔色が悪いが……体調がすぐれないか?」
「い、いえ……大丈夫です……っ」
(慌てない。冷静に……私はただの“受付嬢”。いつも通りでいればいい)
「何か……御用でしょうか?」
サティが努めて自然に声を出すと、ハイドは目を細めた。
「上手く隠してるつもりのようだが……俺には通用しないぞ」
低い声。その瞬間、サティの背筋を冷たいものが走る。
「……明日。冒険者ギルド本部に来い」
短く告げて、ハイドは何も言わず踵を返す。支部内の職員たちに一礼しながら、堂々と去っていった。
その背中を見送りながら──サティ・フライデーは凍りついていた。
(……私、バレたの?)
(それとも……ただの駆け引き?)
(明日、何を聞かれるの? 私は……どうするべき?)
「……冒険者ギルド総督ハイドか」
名を呟き、サティは深く息を吐いた。
仮面を脱がされるその日が、ついに訪れようとしていた。
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