食いしん坊な親友と私の美味しい日常

†漆黒のシュナイダー†

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第52話 田所のおごりとおやつタイム

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 放課後、廊下には帰り支度をする生徒たちのざわめきが響いていた。
 私は教室でノートを片付けながら、ふと隣の席を見る。
 そこには机に突っ伏してぐったりしている遠野の姿があった。

「……どうしたの?」

 声をかけると遠野は顔を上げて「はぁ~」と大きなため息をついた。

「田所さん……私、お腹すいた……」
「え? お昼ご飯ちゃんと食べたでしょ?」
「うん。でも購買のパン、目の前で売り切れちゃったんだよ……!」

 それは確かに気の毒だった。
 購買部は毎日争奪戦だが、特に人気のパンはすぐになくなってしまう。

「だから、お腹が空いて力が出ない……」
「遠野、それはちょっと大げさじゃない?」
「ほんとにお腹空いたんだもん……」

 遠野はお腹をさすりながら悲しげな顔をしている。
 その様子があまりにもわざとらしくて、思わず笑いそうになった。

「じゃあ、何か買ってあげるよ」
「えっ!? いいの!? 田所さんが!? 奢っててくれるの!?」
「そんなに驚かなくても……」
「だって田所さん、いつも冷静でクールな感じなのに、こんな優しいことするなんて……!」

 またしても大袈裟な身振り手振りで大袈裟に言う遠野。
 どうやら今日はそういう気分らしく付き合わされる私は思わずため息をついた。

「いや、別に普通でしょ」
「くぅ~、田所さん、今日はなんかかっこいい!」
「はいはい、じゃあさっさと行こう」

 こうして私は遠野と一緒に近くのコンビニへ向かった。
 コンビニの自動ドアが開くと冷たい空気と共に、ほんのりと温かいパンや揚げ物の匂いが漂ってきた。

「わぁ~、コンビニの匂いってなんでこんなに落ち着くんだろうね!」
「遠野はどこでも幸せになれそうだね」
「うん! さて、何を買おうかな~!」

 遠野はお菓子コーナーへ一直線に向かう。
 私はその後ろをついて行きながら棚に並んだ色とりどりのお菓子を眺めた。

「やっぱりポテチかなぁ? でもチョコも捨てがたい……」

 遠野は真剣な顔で悩んでいる。
 私はそんな彼女を横目に適当にカゴにいくつかのお菓子を入れた。

「はい、これでいいでしょ」
「えっ!? 田所さんが選んでくれるの!?」
「早く決めなさそうだからね」

 私がカゴに入れたのはポテトチップス(うすしお味)、じゃがりこ(チーズ味)、そしてチョコレートがたっぷりかかったクッキー だった。

「うわぁ~、どれも最高においしそう!」
「ほら、レジ行くよ」
  
 会計を済ませ、コンビニの外にあるベンチに腰を下ろした。

「じゃあ、いただきまーす!」

 遠野はポテチの袋を勢いよく開け、一枚目をぱりっと口に入れた。

「ん~~、やっぱりポテチは最高!」
「いつも思うけど、そんなに幸せそうに食べられるの凄いよね」
「だっておいしいんだもん!田所さんも食べる?」
「じゃあ、一枚だけ」

 遠野が差し出したポテチを一枚つまみ、口に入れる。
 塩気がちょうどよく、サクサクの食感が心地いい。

「やっぱり、うすしお味が一番好きかも」
「でしょ~? ポテチはシンプルな味が一番!」

 次に遠野は、じゃがりこのフタをペリッと開けた。

「じゃがりこって、食べ始めたら止まらないんだよね~!」

 一本取り出しポリッと噛むと小さな音が響く。

「ん~! チーズ味、やっぱりおいしい!」
「そんなに美味しいなら、私も一本もらおうかな」
「おっ、田所さんが積極的にお菓子を食べるなんて珍しい!」
「……たまにはね」

 じゃがりこを一本取り口に入れる。
 カリッとした食感のあと、濃厚なチーズの風味が広がった。

 しばらくの間、お菓子を食べながらのんびりとした時間が流れた。
 冷たい風が吹く中でも遠野の楽しそうな様子を見ていると、なんだか心が温かくなってくる。

「田所さん、今日は本当にありがとう!」
「そんな大げさなことじゃないでしょ」
「いやいや、これは歴史的な出来事だよ!」
「そんな大袈裟な……」

 遠野はチョコクッキーを一口かじりながら満足そうに笑った。

「でもさ、田所さんがこういう風に私に何かしてくれるのってやっぱり嬉しいんだよね」
「……そう?」
「うん! だからまた一緒に何か食べに行こうね!」
「まぁ、気が向いたらね」

 遠野の笑顔に私は小さく微笑んだ。
 たまにはこんな風に遠野のために何かするのも悪くない。
 そう思いながら最後にもう一枚だけポテチを口に運んだ。
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