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快楽の苦闘
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「あの少年は、やはり女騎士との関わりはないようです」
「そうですか。ご苦労でした」
フリージアは、ダークエルフの執事から、報告を受けた。
想定していたとおりではある。
二人に辱めを与えても、繋がりを確定させる反応は見られなかったという。
しかし、高潔な女騎士が命じられたからといえ、エリンのものを熱心にしゃぶる光景は異様な胸騒ぎがする光景ではあった。
暗殺者と反抗する騎士との繋がりが証明できれば、ギュスターランド公爵家に敵対する者たちを一挙に暴き立てることができるという点があった。
だが、その拷問の光景を見守っていたフリージアの胸の中に宿った感情は、戸惑いと嫉妬だ。
少年を救うのだという決意によって、その口で性器をしゃぶり、グラスの半分までも絞り出した女騎士ノエル。
あれは、崇高な自己犠牲と献身に陶酔していた。
いや、それだけではない――。
エリンの境遇に同情しつつ、みずからが与える快楽に身を委ね、悶える様に興奮していたに違いない。
母性本能をくすぐられ、庇護の気持ちと肉欲が同時に湧き上がってきている。
でなければ、あそこまではしないはず。
フリージアには、それがよくわかる。
あそこまでやってしまえる気持ちがあるからだ。
より正確に言えば、フリージアもあそこまでのことしてみたい。
存分に身悶えさせ、グラスの半分も搾り取ってみたい。
淫らな渇望であることは、十分承知している。
ギュスターランド公爵家の令嬢として、相手を堕とすことはいくらでも認められているが、その逆は許されていないのだ。
だからこそ、許せない。
許せないのは、ノエルよりもエリンである。
浴場で我が身をもってあれほど射精させてあげたというのに、女騎士相手の拙い奉仕でグラス半分もの量を放ったのだ。
自分の女としての美貌と魅力が与える快楽に屈したのではなかったのか。
そう思うと、執務中に握るペンにも力がこもった。
「お嬢様、あの少年の責め方を少し変えてみましょうか」
「何か方法があるのですか?」
執事がどこか意地悪く言う。
もっと辱め、尊厳を徹底して破壊すれば、秘密を守ろうとする強い心でも砕くことができるというのが、彼の考えである。
「ええ、少し手回しする必要がございますが。今までのやり方ですと、やはり手ぬるいかと」
「ですが、拷問によって廃人にしてしまうのは大きな損失です。なにより、わたくしの好みではありません」
「好み……ですか。さすがはお嬢様です」
ギュスターランド公爵家は、代々悪名をほしいままとしている。
だからこそ、哲学と美学を蔑ろにしない。
その悪名は、国家の盤石のために甘んじて受けるものであり、権勢や富を欲してのものではない。
手段は選ばないが、目的は違えてはならない。
そして、世の規範と道徳には従わぬが、みずからが定めた掟と価値観から外れてはならないのである。
外れてしまえば、悪ではなく外道となろう。
貴族とは、支配者でもあるが国に豊かさをもたらす文化の保護者にして消費者である。
趣味と快楽の追求もまた、その高貴な役目に含まれるのだ。
とはいえ、あの少年暗殺者に惹かれていく感情は確かにある。
苦しみではなく、快楽と愛によって屈服させることができたらどんなに満たされるだろうか。
「わかりました、必要なことは、わたくしが取り揃えます」
「それでは、“闇の会合”までにこちらの準備を」
執事が持ってきた書類には、“闇の会合”の手配と闘技場遺跡についてのものであった。
「そうですか。ご苦労でした」
フリージアは、ダークエルフの執事から、報告を受けた。
想定していたとおりではある。
二人に辱めを与えても、繋がりを確定させる反応は見られなかったという。
しかし、高潔な女騎士が命じられたからといえ、エリンのものを熱心にしゃぶる光景は異様な胸騒ぎがする光景ではあった。
暗殺者と反抗する騎士との繋がりが証明できれば、ギュスターランド公爵家に敵対する者たちを一挙に暴き立てることができるという点があった。
だが、その拷問の光景を見守っていたフリージアの胸の中に宿った感情は、戸惑いと嫉妬だ。
少年を救うのだという決意によって、その口で性器をしゃぶり、グラスの半分までも絞り出した女騎士ノエル。
あれは、崇高な自己犠牲と献身に陶酔していた。
いや、それだけではない――。
エリンの境遇に同情しつつ、みずからが与える快楽に身を委ね、悶える様に興奮していたに違いない。
母性本能をくすぐられ、庇護の気持ちと肉欲が同時に湧き上がってきている。
でなければ、あそこまではしないはず。
フリージアには、それがよくわかる。
あそこまでやってしまえる気持ちがあるからだ。
より正確に言えば、フリージアもあそこまでのことしてみたい。
存分に身悶えさせ、グラスの半分も搾り取ってみたい。
淫らな渇望であることは、十分承知している。
ギュスターランド公爵家の令嬢として、相手を堕とすことはいくらでも認められているが、その逆は許されていないのだ。
だからこそ、許せない。
許せないのは、ノエルよりもエリンである。
浴場で我が身をもってあれほど射精させてあげたというのに、女騎士相手の拙い奉仕でグラス半分もの量を放ったのだ。
自分の女としての美貌と魅力が与える快楽に屈したのではなかったのか。
そう思うと、執務中に握るペンにも力がこもった。
「お嬢様、あの少年の責め方を少し変えてみましょうか」
「何か方法があるのですか?」
執事がどこか意地悪く言う。
もっと辱め、尊厳を徹底して破壊すれば、秘密を守ろうとする強い心でも砕くことができるというのが、彼の考えである。
「ええ、少し手回しする必要がございますが。今までのやり方ですと、やはり手ぬるいかと」
「ですが、拷問によって廃人にしてしまうのは大きな損失です。なにより、わたくしの好みではありません」
「好み……ですか。さすがはお嬢様です」
ギュスターランド公爵家は、代々悪名をほしいままとしている。
だからこそ、哲学と美学を蔑ろにしない。
その悪名は、国家の盤石のために甘んじて受けるものであり、権勢や富を欲してのものではない。
手段は選ばないが、目的は違えてはならない。
そして、世の規範と道徳には従わぬが、みずからが定めた掟と価値観から外れてはならないのである。
外れてしまえば、悪ではなく外道となろう。
貴族とは、支配者でもあるが国に豊かさをもたらす文化の保護者にして消費者である。
趣味と快楽の追求もまた、その高貴な役目に含まれるのだ。
とはいえ、あの少年暗殺者に惹かれていく感情は確かにある。
苦しみではなく、快楽と愛によって屈服させることができたらどんなに満たされるだろうか。
「わかりました、必要なことは、わたくしが取り揃えます」
「それでは、“闇の会合”までにこちらの準備を」
執事が持ってきた書類には、“闇の会合”の手配と闘技場遺跡についてのものであった。
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