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悪徳の流転
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馬車は、街道をひた走った。
襲撃者は、どうやら振り切れたようだ。
フリージアも、息を落ち着かせる。
「あいつらは、もう追ってこない」
馬を御したエリンが馬車に戻る。
まだ安心はできないが、ひとまずは難を逃れた。
「どうして?」
フリージアは戸惑いながらも疑問をエリンにぶつけた。
彼に、そうする理由はなかったはずだ。
エリンにとって、自分は暗殺の標的であり、嬲りものにした悪い敵ではなかったのか?
どんと、エリンはフリージアを押し倒すようにして顔を近づけた。
「お前を殺すのは僕だからだ……!」
射すくめる少年の瞳には、激しいものが宿っている。
だが、その感情の光は憎悪だけではないように思える。
研ぎ澄まされた刀剣を見たときのような、ぞくりとする感慨を抱かせる。
「本当に、わたくしを殺すつもりなのね」
「当たり前だ! あんなことをして……殺してやる!」
エリンの右手が、フリージアの首に伸びる。
締め上げれば、用意に折れるほどのか細さだ。
花を手折るように命を摘み取ることができるだろう。
死の恐ろしがないわけではない。
だが、エリンが望むなら殺されてやってもよい。
そんな気持ちがフリージアにはある。
どうせ死ぬのなら、おのれの操を捧げてやってもよいのだとすら思う。
この可愛らしい顔に燃えるような憎悪を滾らせ、自分の身体をエリンが貪ってくれるなら……。
恍惚としたものがこみ上げてくる。
思わず、エリンの頬に手を伸ばし、触れていた。
「殺したいほど憎いのなら、あたながされたこと……わたくしの身体にしてもよいのですよ」
「なっ……!?」
「あなたがされたように犯して、辱めてみせなさい」
両の頬に手を回し、エリンの顔を引き寄せてその口を塞いだ。
伯爵夫人に教えられたように、エリンの口の中に舌を侵入させる。
「…………っ!?」
エリンの手を手繰り寄せ、自分の胸を触らせる。
憎しみを浮かべたエリンの顔が、柔らかさに戸惑っていくのが愛おしい。
「は、離せ!? ……この淫乱っ!」
エリンは、無理やり振りほどいでフリージアを押しのけた。
「……かもしれませんわ。ギュスターランド公爵家の者は、代々淫蕩だったと言われています。わたくしにも、その血が流れているのですから」
娼館を経営し、闇の会合も主催してきた。
代々の当主は何人もの妾を孕ませ、女は小姓を囲ったという家系だ。
祖父も父も、伴侶だけでは飽き足らなかっただ。
フリージアの母も、毎夜男を引き入れていた。
それを見て見ぬ振りをする、そういう一族であったのだ。
「でも、エリン。あなただって、そこを固くしているでしょう?」
「あっ……!」
フリージアに膨らみ上がっている股間のモノを指摘され、エリンは羞恥を覚える。
「伯爵夫人相手に、あんなに出したのに。そんなにわたくしがほしいの?」
「違う! 誰がお前なんか……」
「お前は、そんな淫乱のあそこを舐めたのよ」
「む、無理やりさせたからじゃないか!」
その指摘は、エリンの羞恥を呼び起こした。
犬のように、舌を動かしてフリージアの股の間を舐めさせられたのは、事実であった。
無理やりであったが、本能的な昂りと欲求があったのも間違いはない。
肉欲へ溺れたことを。
「わたくしがしゃぶったら、感じて腫らしたくせに」
「でも、一番下手だっただろ。歯も当たって、痛かった」
「それでも、嬉しかったわ。あんなになったから」
「お前たちが、僕をいじくり回したせいで、おかしくなったんじゃないか! あんな、恥ずかしいことばかり……」
エリンは涙まで浮かべている。
屈辱と快楽の間に迷い込み、自分でもどうすればいいかわからなくなっている。
そんなエリンを、フリージアは自分の胸に埋めてやった。
「わたくしは、いつかお前を抱くわ。なのに、殺すのですか?」
「くそぉ……」
柔らかな膨らみの感触が、もがくエリンを絡め取っていく。
温かく、心地よい。
浴場で、この肢体に洗われたこと。
秘所を味わい、そして自身の部分をしゃぶられたこと。
フリージアから得られた快楽は、記憶に刻まれている。
なのに、殺せるのか――?
殺せば、この温もりも柔らかさも喪われてしまう。
それがエリンを躊躇わせた。
知らぬ間に、エリンはフリージアに溺れていた。
悪の令嬢と言われる処女の存在に。
襲撃者は、どうやら振り切れたようだ。
フリージアも、息を落ち着かせる。
「あいつらは、もう追ってこない」
馬を御したエリンが馬車に戻る。
まだ安心はできないが、ひとまずは難を逃れた。
「どうして?」
フリージアは戸惑いながらも疑問をエリンにぶつけた。
彼に、そうする理由はなかったはずだ。
エリンにとって、自分は暗殺の標的であり、嬲りものにした悪い敵ではなかったのか?
どんと、エリンはフリージアを押し倒すようにして顔を近づけた。
「お前を殺すのは僕だからだ……!」
射すくめる少年の瞳には、激しいものが宿っている。
だが、その感情の光は憎悪だけではないように思える。
研ぎ澄まされた刀剣を見たときのような、ぞくりとする感慨を抱かせる。
「本当に、わたくしを殺すつもりなのね」
「当たり前だ! あんなことをして……殺してやる!」
エリンの右手が、フリージアの首に伸びる。
締め上げれば、用意に折れるほどのか細さだ。
花を手折るように命を摘み取ることができるだろう。
死の恐ろしがないわけではない。
だが、エリンが望むなら殺されてやってもよい。
そんな気持ちがフリージアにはある。
どうせ死ぬのなら、おのれの操を捧げてやってもよいのだとすら思う。
この可愛らしい顔に燃えるような憎悪を滾らせ、自分の身体をエリンが貪ってくれるなら……。
恍惚としたものがこみ上げてくる。
思わず、エリンの頬に手を伸ばし、触れていた。
「殺したいほど憎いのなら、あたながされたこと……わたくしの身体にしてもよいのですよ」
「なっ……!?」
「あなたがされたように犯して、辱めてみせなさい」
両の頬に手を回し、エリンの顔を引き寄せてその口を塞いだ。
伯爵夫人に教えられたように、エリンの口の中に舌を侵入させる。
「…………っ!?」
エリンの手を手繰り寄せ、自分の胸を触らせる。
憎しみを浮かべたエリンの顔が、柔らかさに戸惑っていくのが愛おしい。
「は、離せ!? ……この淫乱っ!」
エリンは、無理やり振りほどいでフリージアを押しのけた。
「……かもしれませんわ。ギュスターランド公爵家の者は、代々淫蕩だったと言われています。わたくしにも、その血が流れているのですから」
娼館を経営し、闇の会合も主催してきた。
代々の当主は何人もの妾を孕ませ、女は小姓を囲ったという家系だ。
祖父も父も、伴侶だけでは飽き足らなかっただ。
フリージアの母も、毎夜男を引き入れていた。
それを見て見ぬ振りをする、そういう一族であったのだ。
「でも、エリン。あなただって、そこを固くしているでしょう?」
「あっ……!」
フリージアに膨らみ上がっている股間のモノを指摘され、エリンは羞恥を覚える。
「伯爵夫人相手に、あんなに出したのに。そんなにわたくしがほしいの?」
「違う! 誰がお前なんか……」
「お前は、そんな淫乱のあそこを舐めたのよ」
「む、無理やりさせたからじゃないか!」
その指摘は、エリンの羞恥を呼び起こした。
犬のように、舌を動かしてフリージアの股の間を舐めさせられたのは、事実であった。
無理やりであったが、本能的な昂りと欲求があったのも間違いはない。
肉欲へ溺れたことを。
「わたくしがしゃぶったら、感じて腫らしたくせに」
「でも、一番下手だっただろ。歯も当たって、痛かった」
「それでも、嬉しかったわ。あんなになったから」
「お前たちが、僕をいじくり回したせいで、おかしくなったんじゃないか! あんな、恥ずかしいことばかり……」
エリンは涙まで浮かべている。
屈辱と快楽の間に迷い込み、自分でもどうすればいいかわからなくなっている。
そんなエリンを、フリージアは自分の胸に埋めてやった。
「わたくしは、いつかお前を抱くわ。なのに、殺すのですか?」
「くそぉ……」
柔らかな膨らみの感触が、もがくエリンを絡め取っていく。
温かく、心地よい。
浴場で、この肢体に洗われたこと。
秘所を味わい、そして自身の部分をしゃぶられたこと。
フリージアから得られた快楽は、記憶に刻まれている。
なのに、殺せるのか――?
殺せば、この温もりも柔らかさも喪われてしまう。
それがエリンを躊躇わせた。
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