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悪徳の流転
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深夜、闘技場には熱狂と退廃が溢れていた。
ギュスターランド公爵家が、ふたたび闇の会合を開催した。
篝火と魔法の物品によって眩しいほどの照明が用いられた闘技場に、今宵の闘士が入場してくる。
楽団が、場をさらに盛り上げるべく、太鼓と銅鑼を打ち鳴らして会場の昂りを煽った。
「紳士淑女の皆様、どうか盛大な拍手を! 今宵の最後の催しは、最後まで立っていた者が勝者の栄冠を得る、生き残り戦です!」
司会役の男が、メインイベントととなる最終戦の口上を述べた。
つまりは、バトルロイヤル……ラストマン・スタンディングマッチだ。闘技場には、例の革製のシートと潤滑油が並々と満たされている。
さらには試合を盛り上げるために、観客が懸賞金を払うとモンスターや新しい生贄が解き放たれるという趣向まで用意してある。男も女も構わず精気を啜るという半身半蛇のラミアや、大兵肥満で何人もの女を蹂躙したというオーク、おぞましい触手をうごめかすローパー、怯えた様子の美しい有翼種の少女までが紹介される。
「では、今回の試合に挑む四人を紹介しましょう! まずは皆さんご存知、剽悍なる獣人族の女戦士フェルディ!」
呼び出しに応じ、鍛え上げられた身体を誇るように獣人族のフェルディが入場する。
会場の歓声にも、余裕を見せて手を振って見せた。
「前回、思わぬ敗北をしましたが、その雪辱を晴らそうと燃えております! 続いては、新顔にございます。亡国の女騎士ノエル! この戦いに生き残れば同志の自由を得られるとの条件に、恥辱を耐え忍んで果敢にも挑戦します」
女騎士ノエルの名が告げられる。
鎧を模した胸当ての衣装はその乳房を強調するためのいやらしいもので、切れ上がった股間を見せつけるような革のパンツと美しい太腿が露わとなっている。
女騎士が無様に犯されるというファンタジーを扇情的に掻き立てるためだけの衣装だ。
「破廉恥極まる……! 貴族でありながら催しに集まる連中も、ギュスターランド公爵令嬢もっ!!」
羞恥と恥辱に真っ赤に染まりながら、女騎士ノエルは毒づいた。
全員、即刻斬り殺してやりたい。
その憤りすら、この場において陵辱の宴に加わる彩りでしかない。
自分らに苛烈な正義の怒りを宿した女騎士が性を蹂躙され、屈服していくさまを安全なところから楽しむのは最高の愉悦となるだろう。
「まあ、そう言うなよ騎士様。結構な賞金もらえるんだぜ? あんたは仲間の釈放のためだよな」
「気安く話しかけるな、穢らわしい!」
「いいから聞けよ。取り引きだ、裸同然の格好だけど、ちったあやれるんだろ? なっ、組まねえか? 最後に勝ち抜いたら賞金いただけるんだし、あんたは仲間を助ける。悪くないだろ?」
フェルディは、ノエルに取引を持ちかけた。
観客たちは八百長を望んでいない。
本気で悶絶し合う性闘技を求めているうえに、賭博の対象にもなっている。
主催と客に気づかれないよう、小声で持ちかけた。
バトルロイヤルでは、こうした戦略性も重要となる。
百戦錬磨のフェルディならではであった。
「なんだと?」
「悪くねえだろ? もし断るってんなら、真っ先にあんたから狙うからな。あたしは、女だっていけるんでな」
「…………」
フェルディがノエルの肢体を視線で舐め回した。
多情なフェルディは、男も女も対象である。
凛とした美しさを持つノエルは、十分な獲物なのだ。
「それにしっかり身ぃ入れて試合やらねえと、あのオークやらバケモノが解き放たれるんだ。惨めな姿は晒したくてねえだろ」
腰蓑をつけたオークが、股間を滾らせて檻をガンガンと揺さぶっている。観客に自分を選べとアピールしつつ、興奮で鼻息を荒くしている。
騎士の修行の一環として、徒手空拳で戦うレスリングの覚えもあるが、腕の太さがまるで違う。
いやらしいが、フェルディ以上の強敵かもしれない。
「……わかった、私には目的がある」
「よし、取り引き成立だ。裏切るなよ?」
視線を交えて同意を確認する。
視界が、続いての闘士の紹介に映った。
「続いては、あのフェルディを悶絶させた少年闘士エリンの登場です! この愛らしい顔つきが快楽に泣き崩れるか? それともふたたび女たちを歓喜に喜びよがらせるのか? どうぞご期待ください!」
エリンの名が告げられ、入場してくる。
前回のような戸惑いはなく、覚悟を決めているようだ。
雪辱の機会を前に、フェルディの顔が喜悦の笑みに歪む。
一方のノエルにとっては衝撃だった。
再会の喜びよりも、いまだこんな目に遭わされているのかと思うと胸が痛む。
しかし、今のエリンには拷問に怯える様子はない。
それはノエルを安心させたが、戸惑いもさせた。
「エリン、無事だったんだな」
「騎士様、ごめんなさい。こんなことになって」
「いいんだ。この戦いに勝てば、君の釈放も叶う。安心してくれ、こんな忌まわしい境遇から助け出してやる!」
「違うんです、騎士様……」
「どういうことなんだ?」
「この坊やにゃあ、あたしも借りがあってな。嬉しいぜ、また会えて。あんときの礼はさせてもらう。たっぷりとな。おい、騎士様。もう一度言うが、裏切んなよ?」
「あ? あ、ああ……」
訳がわからないという顔をしている女騎士ノエルをよそに、司会が、最後の闘士の紹介に移る。
「さて、最後の闘士を紹介しましょう! 高貴なる生まれにもかかわらず、聞くも涙、語るも涙の境遇の果て、闘士に身を落とした貴族令嬢X! 今宵の生贄の入場です!」
その紹介とともに現れたのは、目元を蝶の仮面で隠し、豪奢な巻毛の金髪、白くしなやかな肢体を場末の踊り子よりも恥ずかしい格好の衣装に包んだ貴族令嬢X――フリージアの姿であった。
ギュスターランド公爵家が、ふたたび闇の会合を開催した。
篝火と魔法の物品によって眩しいほどの照明が用いられた闘技場に、今宵の闘士が入場してくる。
楽団が、場をさらに盛り上げるべく、太鼓と銅鑼を打ち鳴らして会場の昂りを煽った。
「紳士淑女の皆様、どうか盛大な拍手を! 今宵の最後の催しは、最後まで立っていた者が勝者の栄冠を得る、生き残り戦です!」
司会役の男が、メインイベントととなる最終戦の口上を述べた。
つまりは、バトルロイヤル……ラストマン・スタンディングマッチだ。闘技場には、例の革製のシートと潤滑油が並々と満たされている。
さらには試合を盛り上げるために、観客が懸賞金を払うとモンスターや新しい生贄が解き放たれるという趣向まで用意してある。男も女も構わず精気を啜るという半身半蛇のラミアや、大兵肥満で何人もの女を蹂躙したというオーク、おぞましい触手をうごめかすローパー、怯えた様子の美しい有翼種の少女までが紹介される。
「では、今回の試合に挑む四人を紹介しましょう! まずは皆さんご存知、剽悍なる獣人族の女戦士フェルディ!」
呼び出しに応じ、鍛え上げられた身体を誇るように獣人族のフェルディが入場する。
会場の歓声にも、余裕を見せて手を振って見せた。
「前回、思わぬ敗北をしましたが、その雪辱を晴らそうと燃えております! 続いては、新顔にございます。亡国の女騎士ノエル! この戦いに生き残れば同志の自由を得られるとの条件に、恥辱を耐え忍んで果敢にも挑戦します」
女騎士ノエルの名が告げられる。
鎧を模した胸当ての衣装はその乳房を強調するためのいやらしいもので、切れ上がった股間を見せつけるような革のパンツと美しい太腿が露わとなっている。
女騎士が無様に犯されるというファンタジーを扇情的に掻き立てるためだけの衣装だ。
「破廉恥極まる……! 貴族でありながら催しに集まる連中も、ギュスターランド公爵令嬢もっ!!」
羞恥と恥辱に真っ赤に染まりながら、女騎士ノエルは毒づいた。
全員、即刻斬り殺してやりたい。
その憤りすら、この場において陵辱の宴に加わる彩りでしかない。
自分らに苛烈な正義の怒りを宿した女騎士が性を蹂躙され、屈服していくさまを安全なところから楽しむのは最高の愉悦となるだろう。
「まあ、そう言うなよ騎士様。結構な賞金もらえるんだぜ? あんたは仲間の釈放のためだよな」
「気安く話しかけるな、穢らわしい!」
「いいから聞けよ。取り引きだ、裸同然の格好だけど、ちったあやれるんだろ? なっ、組まねえか? 最後に勝ち抜いたら賞金いただけるんだし、あんたは仲間を助ける。悪くないだろ?」
フェルディは、ノエルに取引を持ちかけた。
観客たちは八百長を望んでいない。
本気で悶絶し合う性闘技を求めているうえに、賭博の対象にもなっている。
主催と客に気づかれないよう、小声で持ちかけた。
バトルロイヤルでは、こうした戦略性も重要となる。
百戦錬磨のフェルディならではであった。
「なんだと?」
「悪くねえだろ? もし断るってんなら、真っ先にあんたから狙うからな。あたしは、女だっていけるんでな」
「…………」
フェルディがノエルの肢体を視線で舐め回した。
多情なフェルディは、男も女も対象である。
凛とした美しさを持つノエルは、十分な獲物なのだ。
「それにしっかり身ぃ入れて試合やらねえと、あのオークやらバケモノが解き放たれるんだ。惨めな姿は晒したくてねえだろ」
腰蓑をつけたオークが、股間を滾らせて檻をガンガンと揺さぶっている。観客に自分を選べとアピールしつつ、興奮で鼻息を荒くしている。
騎士の修行の一環として、徒手空拳で戦うレスリングの覚えもあるが、腕の太さがまるで違う。
いやらしいが、フェルディ以上の強敵かもしれない。
「……わかった、私には目的がある」
「よし、取り引き成立だ。裏切るなよ?」
視線を交えて同意を確認する。
視界が、続いての闘士の紹介に映った。
「続いては、あのフェルディを悶絶させた少年闘士エリンの登場です! この愛らしい顔つきが快楽に泣き崩れるか? それともふたたび女たちを歓喜に喜びよがらせるのか? どうぞご期待ください!」
エリンの名が告げられ、入場してくる。
前回のような戸惑いはなく、覚悟を決めているようだ。
雪辱の機会を前に、フェルディの顔が喜悦の笑みに歪む。
一方のノエルにとっては衝撃だった。
再会の喜びよりも、いまだこんな目に遭わされているのかと思うと胸が痛む。
しかし、今のエリンには拷問に怯える様子はない。
それはノエルを安心させたが、戸惑いもさせた。
「エリン、無事だったんだな」
「騎士様、ごめんなさい。こんなことになって」
「いいんだ。この戦いに勝てば、君の釈放も叶う。安心してくれ、こんな忌まわしい境遇から助け出してやる!」
「違うんです、騎士様……」
「どういうことなんだ?」
「この坊やにゃあ、あたしも借りがあってな。嬉しいぜ、また会えて。あんときの礼はさせてもらう。たっぷりとな。おい、騎士様。もう一度言うが、裏切んなよ?」
「あ? あ、ああ……」
訳がわからないという顔をしている女騎士ノエルをよそに、司会が、最後の闘士の紹介に移る。
「さて、最後の闘士を紹介しましょう! 高貴なる生まれにもかかわらず、聞くも涙、語るも涙の境遇の果て、闘士に身を落とした貴族令嬢X! 今宵の生贄の入場です!」
その紹介とともに現れたのは、目元を蝶の仮面で隠し、豪奢な巻毛の金髪、白くしなやかな肢体を場末の踊り子よりも恥ずかしい格好の衣装に包んだ貴族令嬢X――フリージアの姿であった。
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