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8 たかが噂で民衆は踊る。
信じたい
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(side夏向)
小さい頃の、夢を見た。
二つ上の兄様と僕は、丁寧に飾り付けられたアンティーク人形のように……大切に、喋よ花よと育てられた。
兄様も僕のことを可愛がってくれたと思う。僕も兄様に憧れ、尊敬していた。
いつか兄様の高い身長だって追い付き、同じ位になると思っていた。大人になれば……。
兄様はいつも僕に言う。
「夏向は天才だね」
それに返す言葉はいつも一緒。
「ありがとうございます。いつか兄様と肩を並べるくらいになりたいです」
身長だって今は歳の差で兄様の方が高いけど……そのうち大人になったら追いつくと思っていた。
「そうだね。きっと夏向もαだろう。それでこそ自慢の弟だよ」
ねえ、僕はΩだったけれど。兄様の期待に応えられるなら。その眼差しでまた愛してくれるなら……僕にもういちどチャンスをくれますか?
ふと、目が覚めた。
ああここは、光希の部屋だなとぼんやり天井を見て察する。
右手が何か温かいものに絡みついていて、ぎょっとして手を見る。大きく指が長くて男らしい手が僕の手を握っていた。
どうやら僕は隣で寝ている光希と恋人繋ぎをしていた。
ふとベッドの上の身体を横へ向けて、光希の寝顔を見る。
光希の寝顔は整っていて……綺麗だ。まつ毛だって長い。唇は薄く、鼻が高くて……いいな、僕もこんな風になりたかった。
僕も光希みたいな優秀なαだったら……まだ兄様と家族で居られたのかもしれない。
僕は起き上がるために光希の手を振りほどいた。
今は何時だろう。外は暗いけれど……。僕はどうやってここに……?
ああそうか。僕は兄様に『おいで』と言われた途端、気を失ったんだ。感情が溢れて、どうしようもなくて……心がいっぱいいっぱいだった。
「……」
心を落ち着かせるために、自分の胸に手を当てた。
光希、いつの間にか帰ってきてたんだ。
光希が追風を殺したって本当に?
殺す……。その感覚を僕は知っている。
でも、光希はそんなことしないって思ってた。正しく自分自身を殺そうとした僕でさえ、優しく包み込んでくれた光希だ。
あの優しさと温もりと笑顔が、僕の知らない光希の裏の顔だと……どうしても思えない。僕に向けた全てが、偽物だとどうしても……。でも、もし、そうだとしたら僕は、何を信じれば良いのか分からなくなる。僕を照らしていた光が、唐突に暗闇になるみたいに。であれば、最初から光なんて無い方がいい。暗闇に慣れて夜目がきいていた目も、強い光にくらんで今は何も見えなくなる。心細くなる。
それに、追風は……僕の恩人だ。
あんな寂しいすれ違ったままの別れでは無くて……最後に会話をしたかった。『ありがとう』って言いたかった。
でも、今はそれすら叶わない願いになってしまったんだ。光希のせいで。
心がごちゃごちゃする。
精神が揺れて、何を信じれば良いのか分からなくなる。
それでも頭で何度も大丈夫だって唱え続ける。
僕は光希を信じたい。
小さい頃の、夢を見た。
二つ上の兄様と僕は、丁寧に飾り付けられたアンティーク人形のように……大切に、喋よ花よと育てられた。
兄様も僕のことを可愛がってくれたと思う。僕も兄様に憧れ、尊敬していた。
いつか兄様の高い身長だって追い付き、同じ位になると思っていた。大人になれば……。
兄様はいつも僕に言う。
「夏向は天才だね」
それに返す言葉はいつも一緒。
「ありがとうございます。いつか兄様と肩を並べるくらいになりたいです」
身長だって今は歳の差で兄様の方が高いけど……そのうち大人になったら追いつくと思っていた。
「そうだね。きっと夏向もαだろう。それでこそ自慢の弟だよ」
ねえ、僕はΩだったけれど。兄様の期待に応えられるなら。その眼差しでまた愛してくれるなら……僕にもういちどチャンスをくれますか?
ふと、目が覚めた。
ああここは、光希の部屋だなとぼんやり天井を見て察する。
右手が何か温かいものに絡みついていて、ぎょっとして手を見る。大きく指が長くて男らしい手が僕の手を握っていた。
どうやら僕は隣で寝ている光希と恋人繋ぎをしていた。
ふとベッドの上の身体を横へ向けて、光希の寝顔を見る。
光希の寝顔は整っていて……綺麗だ。まつ毛だって長い。唇は薄く、鼻が高くて……いいな、僕もこんな風になりたかった。
僕も光希みたいな優秀なαだったら……まだ兄様と家族で居られたのかもしれない。
僕は起き上がるために光希の手を振りほどいた。
今は何時だろう。外は暗いけれど……。僕はどうやってここに……?
ああそうか。僕は兄様に『おいで』と言われた途端、気を失ったんだ。感情が溢れて、どうしようもなくて……心がいっぱいいっぱいだった。
「……」
心を落ち着かせるために、自分の胸に手を当てた。
光希、いつの間にか帰ってきてたんだ。
光希が追風を殺したって本当に?
殺す……。その感覚を僕は知っている。
でも、光希はそんなことしないって思ってた。正しく自分自身を殺そうとした僕でさえ、優しく包み込んでくれた光希だ。
あの優しさと温もりと笑顔が、僕の知らない光希の裏の顔だと……どうしても思えない。僕に向けた全てが、偽物だとどうしても……。でも、もし、そうだとしたら僕は、何を信じれば良いのか分からなくなる。僕を照らしていた光が、唐突に暗闇になるみたいに。であれば、最初から光なんて無い方がいい。暗闇に慣れて夜目がきいていた目も、強い光にくらんで今は何も見えなくなる。心細くなる。
それに、追風は……僕の恩人だ。
あんな寂しいすれ違ったままの別れでは無くて……最後に会話をしたかった。『ありがとう』って言いたかった。
でも、今はそれすら叶わない願いになってしまったんだ。光希のせいで。
心がごちゃごちゃする。
精神が揺れて、何を信じれば良いのか分からなくなる。
それでも頭で何度も大丈夫だって唱え続ける。
僕は光希を信じたい。
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