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8 たかが噂で民衆は踊る。
朝食
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(side夏向)
倒れた時には制服だったのにも関わらず、目が覚めたらやっぱり僕は寝間着を着ていた。
僕はまた制服に着替えて光希が起きてくるのを待つ。どうせだったら、朝ごはん作っておいた方がいいかな?朝ごはんだから軽めでもいいと思う。
前は光希が起きる前にと逃げたけれど……せめてそれ位はすべきだろう。
丁度味噌汁と目玉焼きが作り終えた時、光希の足音が聞こえて、そして僕は彼が起きてきたことを察する。
「おはよう。朝起きたら夏向がいなくて……でもここからいい匂いがするから……」
「おはよう。そう、作っておいた」
寝室からダイニングへと足を運んだ光希は『ふぁ』と欠伸をして僕の前に立ち止まった。
「何?」
「寂しかったよね、すまない。ゆっくり話したいんだけど……」
「でも今は……テストに遅れてしまう」
「そうか」
そう残念そうに呟いた光希は僕が持っていた目玉焼きの乗ったお皿を取り上げ、テーブルに置く。今はちょうどフライパンからお皿に目玉焼きを移していたところだ。
気がついたら二つ目のお皿の上にも光希の手によって、出来たての目玉焼きが乗せられていた。
「あとは俺がやるから座っていいよ」
「え、でも……」
こんなにも尽くして貰っているのだから、僕がやるべきなのでは無いだろうか。
「でも、いいよ。僕がやる」
あとは味噌汁をお椀に移して…それからパンも焼いてしまおうか。そんなことを考えていたら、光希が『いいから、座って』と譲らない。気づいたら姫抱きされて、椅子まで運ばされた。
「パンを焼くくらいは俺にも出来る」
「いや、そこは疑ってないし!!」
「君が朝食を作ってくれただけで俺は充分嬉しいから、一緒に食べよう。そこで待っててくれないかな?」
狡い。αだからって僕を軽々と運んでしまって、結局僕は抵抗出来なくなる。
しばらくじっと待ってると料理が運ばれてきて、光希は僕とL字になるように座った。
「いただきます」
「……いただきます」
手を合わせて、そして最初にパンを齧った。
「俺がいない間どうだった?帰る途中に襲われてないよね?」
「えっと……十夜さんたちが学園まで送ってくれて、だから……ああそうだ」
「何?」
ふと、光希の手にあるナイフとフォーク(目玉焼き切る用)が目に入る。
それで僕は七世家で朝食を食べていた時のアクシデントを思い出した。
「七世家のナイフを明里さんが無断で研ぎの専門業者に出したみたい……。僕もナイフ使ってるから。そういうの有るんなら僕のナイフも頼めば良かったかな」
「それって俺のいない月曜?」
「そう」
「明里か。確かにひとりで行動する癖があるけど、行動には慎重な人だ。なら本当にその業者は信頼出来る程の確かな会社なんだろう」
「?」
どうしたんだろう。光希には何か、思い当たる事が有るのかな。
「ありがとう夏向」
よく分からないけど、感謝までされてますます分からない。ていうか僕だって光希に聞きたいことがある。
「ねぇ、光希。追風が死んだって本当?」
「……本当だよ。それを含めて、ちゃんと話したいって思っている。今日テストが終わったら、空いてるかな?」
「空いてるけど……殺したの?」
「……殺してないよ」
その一瞬の間で、光希が何故か悲しそうな顔をしたのを見逃さなかった。何かが込み上げてきて、その何かの代わりに口の中のパンを強く噛み締める。
結局僕が何も知らないまま、全部終わったみたい。その事実に、光希との心の距離を感じてしまう。
心の中に、穴があって……それがちくちくと痛む。何かで、誰かに、それを埋めて欲しいと思った。
倒れた時には制服だったのにも関わらず、目が覚めたらやっぱり僕は寝間着を着ていた。
僕はまた制服に着替えて光希が起きてくるのを待つ。どうせだったら、朝ごはん作っておいた方がいいかな?朝ごはんだから軽めでもいいと思う。
前は光希が起きる前にと逃げたけれど……せめてそれ位はすべきだろう。
丁度味噌汁と目玉焼きが作り終えた時、光希の足音が聞こえて、そして僕は彼が起きてきたことを察する。
「おはよう。朝起きたら夏向がいなくて……でもここからいい匂いがするから……」
「おはよう。そう、作っておいた」
寝室からダイニングへと足を運んだ光希は『ふぁ』と欠伸をして僕の前に立ち止まった。
「何?」
「寂しかったよね、すまない。ゆっくり話したいんだけど……」
「でも今は……テストに遅れてしまう」
「そうか」
そう残念そうに呟いた光希は僕が持っていた目玉焼きの乗ったお皿を取り上げ、テーブルに置く。今はちょうどフライパンからお皿に目玉焼きを移していたところだ。
気がついたら二つ目のお皿の上にも光希の手によって、出来たての目玉焼きが乗せられていた。
「あとは俺がやるから座っていいよ」
「え、でも……」
こんなにも尽くして貰っているのだから、僕がやるべきなのでは無いだろうか。
「でも、いいよ。僕がやる」
あとは味噌汁をお椀に移して…それからパンも焼いてしまおうか。そんなことを考えていたら、光希が『いいから、座って』と譲らない。気づいたら姫抱きされて、椅子まで運ばされた。
「パンを焼くくらいは俺にも出来る」
「いや、そこは疑ってないし!!」
「君が朝食を作ってくれただけで俺は充分嬉しいから、一緒に食べよう。そこで待っててくれないかな?」
狡い。αだからって僕を軽々と運んでしまって、結局僕は抵抗出来なくなる。
しばらくじっと待ってると料理が運ばれてきて、光希は僕とL字になるように座った。
「いただきます」
「……いただきます」
手を合わせて、そして最初にパンを齧った。
「俺がいない間どうだった?帰る途中に襲われてないよね?」
「えっと……十夜さんたちが学園まで送ってくれて、だから……ああそうだ」
「何?」
ふと、光希の手にあるナイフとフォーク(目玉焼き切る用)が目に入る。
それで僕は七世家で朝食を食べていた時のアクシデントを思い出した。
「七世家のナイフを明里さんが無断で研ぎの専門業者に出したみたい……。僕もナイフ使ってるから。そういうの有るんなら僕のナイフも頼めば良かったかな」
「それって俺のいない月曜?」
「そう」
「明里か。確かにひとりで行動する癖があるけど、行動には慎重な人だ。なら本当にその業者は信頼出来る程の確かな会社なんだろう」
「?」
どうしたんだろう。光希には何か、思い当たる事が有るのかな。
「ありがとう夏向」
よく分からないけど、感謝までされてますます分からない。ていうか僕だって光希に聞きたいことがある。
「ねぇ、光希。追風が死んだって本当?」
「……本当だよ。それを含めて、ちゃんと話したいって思っている。今日テストが終わったら、空いてるかな?」
「空いてるけど……殺したの?」
「……殺してないよ」
その一瞬の間で、光希が何故か悲しそうな顔をしたのを見逃さなかった。何かが込み上げてきて、その何かの代わりに口の中のパンを強く噛み締める。
結局僕が何も知らないまま、全部終わったみたい。その事実に、光希との心の距離を感じてしまう。
心の中に、穴があって……それがちくちくと痛む。何かで、誰かに、それを埋めて欲しいと思った。
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