運命を殺したい僕、運命を幸せにしたい俺

かりん

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11 無自覚の『可愛い』は行動から現れる。

自己紹介

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(side夏向)
この日のテストが終わって僕は食堂に向かう。
昨日はテスト勉強出来なかったけれど……日曜日に光希が一日かけて教えてくれたから、そんなに悪くはないと思う。まあ、ベストを尽くしたかと言われたら、すっぽりと忘れたところも少し有るけれど。
テスト期間は今日で三日目で、明日が最終日だ。つまりあと二教科だけで全てが決まる。
それが終われば土日を挟んで短期授業……授業が午前中だけになる。
それすら終われば夏休みだけれど……その頃にはとっくに僕は発情期に入っているだろう。私立だから夏休みは短い。
だから発情期はちょうど授業終わりと夏休み始まりに跨るかな。予定通りだったら。

食堂で藍先輩を探していると、『こっちこっち』と声が聞こえた。
ちなみに今日のメニューはオムライスだった。
オムライスのトレイを持って、藍先輩に近づく。

「今日は珍しく天気がいいから外で食べようと思って~。いいよね、夏向」
「はい。もちろんです」

そういえば、最近は雨続きだった。あの事件から僕は木に登ってないし、屋内にいたら忘れがちだけれども、今は梅雨の時期だ。
そういえば最近は木に登ろうとも思わないな。
あの日のことが、トラウマになった訳では無いけれど……気分が乗らない。何故だろう。
ああそうか。光希がいるからだ。木に登るのは、αに縛られた僕が求めた自由への欲望。だから今は必要無くなってしまった。
木登りが汚れた僕を忘れるための行為なら、光希はそんな僕すらも肯定してくれるから。

なんてぼんやり思いながら僕は藍先輩の後ろについて行く。
着いた先は花が咲き乱れる庭園だった。
紫陽花が一番目立つけれど、違う花もちらほらあって……全ての花が、まるで絵画のように景色として調和していた。

「ここ、僕たちのオススメ」
「知らなかったです、こんな場所」
「でしょ~。一緒に食べよ」

ふと藍先輩が振り向くと、『あっ』と声を上げて僕もその方向を見る。

「……待ちくたびれた」
「ごめんごめん、れんちゃん。れんちゃん」
「別にいい」

そこにいたのは、僕より少し高いくらいの男の子だった。ああ彼が例の番さんかと納得する。
目付きは鋭く、猫の目みたいだ。髪の毛はぴょこぴょこはねて、制服も着崩している。
世話焼きで恥ずかしがり屋でいい子って聞いていたから、もっと可愛らしい子を想像してた。思っていたより不良っぽい。

「夏向~。紹介するね。僕のれんちゃん」
「馬鹿。それじゃあ分かんねぇだろ……。えっと俺は……えっと…」

僕と目が合う度に、彼の顔はどんどん赤くなってくる。モジモジさせて僕からは視線を逸らす。
どうしたんだろう。僕、おっかない顔してるのかな。それとも口に何かついてるとか?

「えー……と」

縋るように、彼は藍先輩を見る。すると藍先輩は幸せそうに笑った。満面の笑み。それは光希が僕を見る時の顔と似てる。

「もう、初対面で恥ずかしいんだよね、ごめんごめん。僕の番の、日内地蓮叶ひないちれんとくん。れんちゃん、こっちはみっくんの番の夏向だよ~」
「結野夏向です。よろしくお願いします」

僕は彼に向かって深々と頭を下げた。
『れんちゃん』は『蓮叶』って名前だったのか。彼は何年生だろう。歳上だったら敬語じゃないとダメだよね。

「……よろしく」

長い沈黙のあとに小さい声が聞こえた。
捻り出したような声だけれど……それだけでなんだか幸せな気分になった。あ、ずるい。可愛い。気がつけば僕は無意識に声が出ていた。

「れんちゃん……蓮叶くんは何年生ですか?」

しまった間違った……と思ったけれどしっかり『れんちゃん』呼びした後で、ああ、遅かった……。
多分聞かれただろうけど、慌てて訂正して言い直す。

「れんちゃ……!?お前のせいだぞ藍」
「え~。この呼び方、夏向もしっくりくるよね~」
「ああ、はい」

藍先輩の横で彼を睨みつける蓮叶くんに申し訳なくて苦笑いを浮かべた。
うん、しっくりくる。というか、『れんちゃん』って呼ぶ藍先輩が嬉しそうで、そして呼ばれる蓮叶くんが恥ずかしそうだから、つい可愛いと思ってしまう。

「……俺は、二年生だ。でも敬語はいらない。よろしく、夏向」
「よろしく」

まだ会ったばかりだけど、蓮叶くんと仲良くなれそうだと思った。
そして握手をした僕たちを、藍先輩は幸せそうに眺めていた。
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