運命を殺したい僕、運命を幸せにしたい俺

かりん

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12 なんなんだ、この違和感は。

違和感

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(side光希)
「うん、だから死んで欲しいんだ。僕のために、世界の礎となって欲しい」
「……簡単に言うんだね」
「でもただ死ぬだけじゃつまらない。君は夏向を、僕から奪ったんだから。神様は……君に天罰を下すだろうね」
「笑わせる。神にでもなったつもりか」

出てくる言葉がいちいち予想外だ。
こうやって対峙した彼は、人間らしさが無くて不気味に感じる。
初夏なのに、冬制服を着ているのは寒がりなのか。……それとも、いつも冷暖房完備な室内で生まれ育ったからなのか。分からないけれど、それを推測している暇はない。けれどもそんな小さな違和感が、彼の存在を浮き彫りにしてくる。空間の歪みみたいに、どうもやりにくい。なんなんだ、この違和感は。

更に俺は言葉を続けた。

「俺たちはαであろうと、不完全な人間だ。だからΩはこの世界に存在し、俺たちはΩと出会う。神様でも何でもないよ。だから君に天罰は下せない。俺は君を……右代春都を許さない。これは純粋な、俺個人の怒りだ」
「随分規模が小さいんだねぇ。あのね、僕の意見は、みんなの総意だよ。この多数決で決まる民主主義国家において、僕は神様だ。みんな僕の言うことを聞くんだから」
「……だから君は、リコールをしたのか」
「そう。『選挙』が一番、戦いやすいからね」

右代春都の意見が、みんなの総意だと言うのはどういうことだろう。当たり前だが、人はそれぞれ自分の意見がある。自分の意思で動き、自分で物事を決める。
もしかして、彼は我儘に育ったんだろうか。『あれが欲しい』と駄々をこねれば、買ってくれる優秀な執事でもいたんだろうか。高校生になってまで、そう思っているのなら……なんて無邪気な子供だろう。
気が変わった。やっぱり生徒会長は俺だ。夏向のことを抜きにしても……俺は右代春都に生徒会長の座を渡したくない。みんなの為の優秀な権力者なら俺で無くても良いけれど……ひとりのための独裁者は生み出してはならない。

「俺もだよ。選挙が一番、戦いやすい。君が、俺の真ん前まで出てきたんだ。捻り潰すだけだ。勿論比喩表現だけれど」

暴力沙汰になるよりは、戦いやすくてシンプルだ。けれども、少しの不安は拭えないのは何故だろう。
彼を前にすると、ドクンドクンと、いつもより鼓動が早い。ギリギリで威嚇し合ってるせいだろうか。だとすれば、向こうも同じだ。
大丈夫、落ち着け。正義は俺たちだ。
神は俺たちを味方している。俺はそう、信じているから。
頬杖をついた右代春都は、微笑みながら口を開いた。

「君もそうだよね。だったら早い方がいいじゃないか。だから明日。週末に集計して、来週の月曜日には僕が生徒会長になる」
「早い方がいい……か。勿論俺が勝つつもりだけれど、これ以上変な噂を流されたら、溜まったものでは無いな」
「決まり?」

しばらく考えて、俺は口を開いた。上手く乗せられてる気がする。しかし、時間が経過すればする程……彼は生徒と信頼というものを築き上げるかもしれない。

「委員会に連絡を入れてからだ。ちょうど今は会議中だと思うし……そこで意見が通ってからだ」
「じゃあ早く連絡入れてくれないかい?どうせみんな却下出来ないだろう?」
「まあ、そうだが……」

まあ、なんというか……あそこは割と強めに俺を信仰している生徒が多い。いや、『俺』じゃないな、優秀なαに付き従いたいという意思で動いている。
だから俺が、『やる』と言ったらみんな反対しないのだ。
右代春都はなんで知っているんだ。壮一郎情報か?
『ほら』、と急かされて、俺はスマホで委員長に連絡を入れる。すると三分も待たないうちに連絡が来て、意見が通ったらしい。
そんなに軽く意見を通して大丈夫だろうか。本当に申し訳ない。今から急いで準備するとなると……みんな重労働になるのに。

『はぁ』と溜息を零す。自分が苦労する分には問題ないが、人に押し付けるとなると心が重い。でも目の前の子供みたいな右代春都はやはり嬉しそうだ。

すっと右代春都は立ち上がった。

「さて、もう話し合うことは無いよね。僕は帰るよ」
「……」

突然で目を見開いて黙っていると、更に彼は帰る準備をしながら言葉を続けた。
もう少し長く話し合うと思っていた。

「君のフェロモンが充満しているここで、落ち着けるわけ無いでしょ?だから帰るよ」
「そうか……」

扉の前まで歩いて鍵を開けてやる。
さらにご丁寧に扉まで開けてやった。

「じゃあね」

ひらひらと手を振る彼を俺は眺めていた。
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