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第15話 それは本当に僕の名なのか?
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翌朝は自分が何処に居るのか、さっぱり判らなかった。
目覚めてすぐに視界に入ったのは、自分が着ていたはずの白い服だった。ただしそれは何処か薄汚れて、なおかつ足跡などもついていたのだけど。
その足跡が、ぼんやりとした昨晩の出来事を思い出させた。
そして次に視界に入ったのは、真っ赤な髪だった。一言二言、問われるままに答えていた言葉の内容は、彼は覚えていない。
ただこれだけは、決して忘れない、と思った。
「朝メシでも食いますか。えーと。アナタ、何って言いますか?」
彼女はそれがごく当たり前のことの様に問いかけた。実際朝だったのだ。それが既に十一時くらいだったとしても、昼過ぎでなかったら朝なのだ。
朝だったなら、朝ご飯を考えるのも当然なのかもしれない。そして名前を問いかけることも。DBは少し考えた。どう言ったものか、と首を傾げた。
「DB」
「でぃーびー?」
「そう呼ばれてるの」
嘘ではない。本名からその名前は来ている。下手な源氏名など似合わない、と何となく外国の女の子めいたその通称を夢路ママは使うように彼に言った。
だけど、あまりにもそれは普通の名前じゃない。だったら本名を口にすれば良いというのに。
その時の彼には、それを口にするのはためらわれた。
それは本当に僕の名なのか?
かと言って、DBという呼び名がそのまま自分なのか、と問われたらまた、その時の彼には答えられなかっただろうが。
笑うだろうか、と彼は思った。笑うかもしれない。何気取った名前つけてるの、と。だが。
ふうん、とP子さんはうなづいた。そして言った。
「じゃあDB、アナタコーヒーとお茶とどっちがいいですか?」
反射的に彼はコーヒー、と答えていた。答えてから、あれ? とあらためて思った。このひとは、笑わない。
はいはいコーヒーね、とあの低くも高くも無い声であまり抑揚もつけずに言うと、棚からインスタントのコーヒーと湯飲みを取り出し、コンロに火をつけた。
「……あ、あの」
何って言えばいいんだろう。
その時彼は、何か、言いたかった。だが何と言えばいいのか、判らなかった。
何ですか、と彼に背を向けながら真っ赤な髪の彼女は問いかけた。
そうだ何だろう。自分は何をこのひとに問いたいのだろう。
「……あなたの名前……」
「ああ、ワタシですか」
彼女は振り向いた。後ろでざっと留めただけの長い髪が揺れた。
「本城亜沙子《ほんじょうあさこ》って名もあるんですがねえ…… あーんまり使っていなくて」
「じゃあ何って呼べばいいの?」
「あー…… 皆はP子さんって呼んでくれてますがね」
「P…… 子さん?」
「それも『さん』まででフルネームらしいですよ。何ででしょうね」
ははは、と微かに彼女は笑った――― ように彼には思えた。
「妹がユウコちゃんでU子ちゃんだから、オバQに出てくる女の子二人、……いや、女のオバケ二人だ、って面白がったことがあるんだけどね。でも何でそうなったんだ? そう言えば」
うーむ、とあらためて「P子さん」は考え込んだ。そこで改めて考えるようなことではない、と彼は思うのだが。
「うんまあどうでもいいですねそんなこと。……まあそう呼ばれるのが、いちばんしっくり来る。それは確かですね」
「P子さん」
何ですか、と彼女は問い返す。何でもない、と彼は答えた。
インスタントのはずなのに、牛乳を半分入れたコーヒーは美味しかった。
*
服を洗濯してしまうから、と一日。
乾くまで、と一日。
持っていくのを忘れたから、ともう一日。
店には通いつつも、また次の朝には戻ってくる。そんな日々が続いて。
―――いつの間にか、それが不自然でなくなってしまった。
P子さんというひとは、彼から見ても、少し変わったひとだった。少なくとも彼が今まで知っている女性達とは確実に違っていた。
朝起きるのは昼近くだったから、彼が戻ってきた時にはまだ夢の中のことが多い。
当初は何の仕事をして暮らしているのか、さっぱり判らなかった。
だが見渡すと、メシの種はどん、と決して広くない部屋の結構なスペースを陣取っていることが判る。ギターだ。
そういえば、とその時ようやくP子さんの髪が赤い理由に気付いた。
脱色、とか茶髪、とかという次元ではない。赤。真っ赤だったのだ。さすがにそんな髪をしているのは、ある種のアート系か、そうでなければミュージシャンくらいだ。
「ギタリストさんだったんだ」
「まあそう言えますね」
至極当然のことのように彼女は言った。
すごいなあ、と彼は目を丸くした。自分は楽器などやったこともない。それどころか、そんな「一芸に秀でた」ものなど一つもなかった。
「別にすごい、っていうもんじゃないですよ。たまたまこれしかワタシにはなかっただけで」
「でも、すごい。僕にはできないもの」
「そりゃあ、皆が皆できたら、ワタシが廃業しちゃいますよ。皆そうそうやらないから、ワタシでも食えてる。それだけですよ」
そう言って、こういう音だ、と彼にヘッドフォーンを渡した。彼女達のバンドは「PH7」と言うらしい。
「ワタシがつけた訳じゃあないんですがね。でも結構気に入ってる名前ですよ」
「PH7、って中性、だっけ」
「―――ってウチのリーダーは言ってましたがね。酸でもアルカリでもない中性。でもって、男でも女もない中性」
「……そういう意味があるの?」
「そっちの意味は、リーダーが込めたかったみたいでしてね。ワタシにはそのあたりは」
P子さんは手を広げた。
だが確かに、いかにも女、というタイプではない、とDBは思った。彼女も、彼女のバンドも。
「女」ではなく、ただ「音楽をやってるひと」という。
「仕事」と称して外に出るのは、だいたい昼過ぎだった。私鉄で数駅行ったところに彼女のバンドが属する事務所があるのだという。
「別にそこでは何するって訳じゃあないんですがね。そのまた近くにスタジオがあるんですよ。だからそこで今はレコーディングしたり、練習したり……」
時にはライヴもするのだ、と付け加えた。
ライヴ、とDBはその慣れない言葉を繰り返した。
郷里では全くそんなことには縁が無かった。無論彼の郷里でも、その類のことが無かった訳ではない。だが、彼自身には無縁の世界だった。
もっとも、今現在彼が勤めている場所なぞ、郷里では噂にも聞いたことは無かったのだが。
「ライヴは好き?」
だからそんな風にしか話題がつなげない。好きですよ、とP子さんは答えた。
「……そう、雑誌のインタビウとか、ラジオに出てどうの、とか言うのより、ずっと好きですね。それがワタシの本業だし」
それしか無いのだ、とその言葉の裏にはうかがえた。
確かにそれ以外無いのだろう、と彼も思った。少なくとも、世の女性が気を配る部分に関心は無いようだった。
着ているものと言えば、部屋の中ではTシャツだのスウェットだのジャージだの、だし、風呂上がりで暑いと、足など丸出しのことも往々にしてある。
DBは少しばかり目のやり場に困ったが、慣れているのか何なのか、P子さんはそんな彼の視線に動じることもない。
ドレッサーもわざわざある訳ではない。二つ折りの鏡があるくらいなもので、姿見もその部屋には無かった。化粧品も無い。どうせステージに出る時には、そっちに詳しいひとがやってくれるから、と。
「普段のメイクがどーしていちいち必要なのか、ワタシにはよく判らないんですよね」
彼女はそう言って苦笑した。
クローゼット代わりの押し入れには、服が多少なりとつるしてあるが、そこにスカートというものは存在しない。あるものと言えば、ジーンズか皮パンだった。
ジーンズの中には、ひざやら裾やらがほつれているものも多かった。あんまり裾のすり切れが大きくなったら、ざくざくとはさみで切ってしまうのだ、と彼女は言った。そんなことする女性、彼は今まで見たことが無かった。
Tシャツにしたところで、XLサイズのものを無造作に買ってきて、適当に着ているだけ、のようである。
もし髪が赤でなく、皮パンや皮ジャンが存在しなかったら、実に地味で地味で地味な女性、にしか見えないだろう。古典的ギタリストの部分が、それでも彼女を派手な部類に見せていた。
そしてプロ野球が好きだった。特にあの某TV局と同系列にある球団が。出会った頃はちょうど前半のシーズン真っ盛りだった。
目覚めてすぐに視界に入ったのは、自分が着ていたはずの白い服だった。ただしそれは何処か薄汚れて、なおかつ足跡などもついていたのだけど。
その足跡が、ぼんやりとした昨晩の出来事を思い出させた。
そして次に視界に入ったのは、真っ赤な髪だった。一言二言、問われるままに答えていた言葉の内容は、彼は覚えていない。
ただこれだけは、決して忘れない、と思った。
「朝メシでも食いますか。えーと。アナタ、何って言いますか?」
彼女はそれがごく当たり前のことの様に問いかけた。実際朝だったのだ。それが既に十一時くらいだったとしても、昼過ぎでなかったら朝なのだ。
朝だったなら、朝ご飯を考えるのも当然なのかもしれない。そして名前を問いかけることも。DBは少し考えた。どう言ったものか、と首を傾げた。
「DB」
「でぃーびー?」
「そう呼ばれてるの」
嘘ではない。本名からその名前は来ている。下手な源氏名など似合わない、と何となく外国の女の子めいたその通称を夢路ママは使うように彼に言った。
だけど、あまりにもそれは普通の名前じゃない。だったら本名を口にすれば良いというのに。
その時の彼には、それを口にするのはためらわれた。
それは本当に僕の名なのか?
かと言って、DBという呼び名がそのまま自分なのか、と問われたらまた、その時の彼には答えられなかっただろうが。
笑うだろうか、と彼は思った。笑うかもしれない。何気取った名前つけてるの、と。だが。
ふうん、とP子さんはうなづいた。そして言った。
「じゃあDB、アナタコーヒーとお茶とどっちがいいですか?」
反射的に彼はコーヒー、と答えていた。答えてから、あれ? とあらためて思った。このひとは、笑わない。
はいはいコーヒーね、とあの低くも高くも無い声であまり抑揚もつけずに言うと、棚からインスタントのコーヒーと湯飲みを取り出し、コンロに火をつけた。
「……あ、あの」
何って言えばいいんだろう。
その時彼は、何か、言いたかった。だが何と言えばいいのか、判らなかった。
何ですか、と彼に背を向けながら真っ赤な髪の彼女は問いかけた。
そうだ何だろう。自分は何をこのひとに問いたいのだろう。
「……あなたの名前……」
「ああ、ワタシですか」
彼女は振り向いた。後ろでざっと留めただけの長い髪が揺れた。
「本城亜沙子《ほんじょうあさこ》って名もあるんですがねえ…… あーんまり使っていなくて」
「じゃあ何って呼べばいいの?」
「あー…… 皆はP子さんって呼んでくれてますがね」
「P…… 子さん?」
「それも『さん』まででフルネームらしいですよ。何ででしょうね」
ははは、と微かに彼女は笑った――― ように彼には思えた。
「妹がユウコちゃんでU子ちゃんだから、オバQに出てくる女の子二人、……いや、女のオバケ二人だ、って面白がったことがあるんだけどね。でも何でそうなったんだ? そう言えば」
うーむ、とあらためて「P子さん」は考え込んだ。そこで改めて考えるようなことではない、と彼は思うのだが。
「うんまあどうでもいいですねそんなこと。……まあそう呼ばれるのが、いちばんしっくり来る。それは確かですね」
「P子さん」
何ですか、と彼女は問い返す。何でもない、と彼は答えた。
インスタントのはずなのに、牛乳を半分入れたコーヒーは美味しかった。
*
服を洗濯してしまうから、と一日。
乾くまで、と一日。
持っていくのを忘れたから、ともう一日。
店には通いつつも、また次の朝には戻ってくる。そんな日々が続いて。
―――いつの間にか、それが不自然でなくなってしまった。
P子さんというひとは、彼から見ても、少し変わったひとだった。少なくとも彼が今まで知っている女性達とは確実に違っていた。
朝起きるのは昼近くだったから、彼が戻ってきた時にはまだ夢の中のことが多い。
当初は何の仕事をして暮らしているのか、さっぱり判らなかった。
だが見渡すと、メシの種はどん、と決して広くない部屋の結構なスペースを陣取っていることが判る。ギターだ。
そういえば、とその時ようやくP子さんの髪が赤い理由に気付いた。
脱色、とか茶髪、とかという次元ではない。赤。真っ赤だったのだ。さすがにそんな髪をしているのは、ある種のアート系か、そうでなければミュージシャンくらいだ。
「ギタリストさんだったんだ」
「まあそう言えますね」
至極当然のことのように彼女は言った。
すごいなあ、と彼は目を丸くした。自分は楽器などやったこともない。それどころか、そんな「一芸に秀でた」ものなど一つもなかった。
「別にすごい、っていうもんじゃないですよ。たまたまこれしかワタシにはなかっただけで」
「でも、すごい。僕にはできないもの」
「そりゃあ、皆が皆できたら、ワタシが廃業しちゃいますよ。皆そうそうやらないから、ワタシでも食えてる。それだけですよ」
そう言って、こういう音だ、と彼にヘッドフォーンを渡した。彼女達のバンドは「PH7」と言うらしい。
「ワタシがつけた訳じゃあないんですがね。でも結構気に入ってる名前ですよ」
「PH7、って中性、だっけ」
「―――ってウチのリーダーは言ってましたがね。酸でもアルカリでもない中性。でもって、男でも女もない中性」
「……そういう意味があるの?」
「そっちの意味は、リーダーが込めたかったみたいでしてね。ワタシにはそのあたりは」
P子さんは手を広げた。
だが確かに、いかにも女、というタイプではない、とDBは思った。彼女も、彼女のバンドも。
「女」ではなく、ただ「音楽をやってるひと」という。
「仕事」と称して外に出るのは、だいたい昼過ぎだった。私鉄で数駅行ったところに彼女のバンドが属する事務所があるのだという。
「別にそこでは何するって訳じゃあないんですがね。そのまた近くにスタジオがあるんですよ。だからそこで今はレコーディングしたり、練習したり……」
時にはライヴもするのだ、と付け加えた。
ライヴ、とDBはその慣れない言葉を繰り返した。
郷里では全くそんなことには縁が無かった。無論彼の郷里でも、その類のことが無かった訳ではない。だが、彼自身には無縁の世界だった。
もっとも、今現在彼が勤めている場所なぞ、郷里では噂にも聞いたことは無かったのだが。
「ライヴは好き?」
だからそんな風にしか話題がつなげない。好きですよ、とP子さんは答えた。
「……そう、雑誌のインタビウとか、ラジオに出てどうの、とか言うのより、ずっと好きですね。それがワタシの本業だし」
それしか無いのだ、とその言葉の裏にはうかがえた。
確かにそれ以外無いのだろう、と彼も思った。少なくとも、世の女性が気を配る部分に関心は無いようだった。
着ているものと言えば、部屋の中ではTシャツだのスウェットだのジャージだの、だし、風呂上がりで暑いと、足など丸出しのことも往々にしてある。
DBは少しばかり目のやり場に困ったが、慣れているのか何なのか、P子さんはそんな彼の視線に動じることもない。
ドレッサーもわざわざある訳ではない。二つ折りの鏡があるくらいなもので、姿見もその部屋には無かった。化粧品も無い。どうせステージに出る時には、そっちに詳しいひとがやってくれるから、と。
「普段のメイクがどーしていちいち必要なのか、ワタシにはよく判らないんですよね」
彼女はそう言って苦笑した。
クローゼット代わりの押し入れには、服が多少なりとつるしてあるが、そこにスカートというものは存在しない。あるものと言えば、ジーンズか皮パンだった。
ジーンズの中には、ひざやら裾やらがほつれているものも多かった。あんまり裾のすり切れが大きくなったら、ざくざくとはさみで切ってしまうのだ、と彼女は言った。そんなことする女性、彼は今まで見たことが無かった。
Tシャツにしたところで、XLサイズのものを無造作に買ってきて、適当に着ているだけ、のようである。
もし髪が赤でなく、皮パンや皮ジャンが存在しなかったら、実に地味で地味で地味な女性、にしか見えないだろう。古典的ギタリストの部分が、それでも彼女を派手な部類に見せていた。
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