3days,あるいはまだ見ぬチューリップ~学内暗殺者の悲劇

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
21 / 21

エピローグ

しおりを挟む
 あれから、二ヶ月。

 花壇には、チューリップを中心とした春の花が満開だった。
 ただ、二人きりの部員だった中里もよし野も既に居ない今、「園芸部」は存在が保留のままになっている。後期部に進級したばかりの四年生が興味を持ってくれない限りは、廃部扱いだ。
 そうしたらこの花壇は、やはり自分が世話するべきなのだろうな。
 ふう、と岩室は手紙を丁寧に折り畳むと、元の様に封筒に入れて、引き出しの中に入れた。

 この二ヶ月というもの、岩室は彼らに対して自分達がやっていることが、結局一時しのぎに過ぎないのではないか、と思うことが多々あった。
 中里に渡すことができた「R」は、せいぜいがところ、一年分程度だ。その後については、まるで予想ができない。
 いや、それ以前に、学校生活よりも緊張する日々の中、二人を守りながら、彼の身体がその時まで保つのか、という心配もある。
 逆に「R」を切らした彼が、あの親子を捨て、凶暴性をまき散らしてしまう可能性だってある。
 だが、それでも。
 中里の言った、「彼」と上手くやって行きたい、という言葉を信じるしかなかった。
 それは他のこれから手を貸したいもの達に対しても同様だ。自分達にできることは、結局、不完全なものを、少しづつでしか、ない。
 だがそれも、無駄な努力なのかもしれない。
 そんな思いが、ここ二ヶ月の間、ずっと渦巻いていた。
 それだけに、中里からの手紙は、正直、岩室にとって嬉しかったのだ。
 中里は「彼」と上手くやっていけるだろう。
 三枚目を見た時、そんな確信が、彼女の中にじわり、とわいてきた。

 さて、とそろそろ換気時間も終わりだ、と窓を閉めようとした時、四年生のネクタイをした男子が一人と、女子が二人、花壇の所に集まっていた。

「お前ら何だ? 花は好きか?」
「好きです。ここ、先生がお世話してるんですか?」
「いや、私は最近は水やりしてるだけだ。転校してった奴が、園芸部だったんだが……」
「あ、園芸部、あるんだって」
「どうする?」

 こそこそ、と少女達は顔を寄せる。おいおい、と男子はその二人に向かって何か言おうとする。

「先生、園芸部があるんなら、入りたいんですけど、どうすればいいんですか?」

 そうだな、と岩室は外側の扉を開けた。

「まあちょっと中に来い。カルピスでも呑んでけ」


 その朝、花壇のチューリップが一斉に花を開いていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...