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25.亜熟果香・約束の日
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足音を忍ばせて、三人はそっとその建物の中に入った。
扉は無論彼らに開いていた訳ではないから、無理矢理開けさせていただいた。
その手際の良さに、ムルカートは戸惑いの表情を隠せない。Gは小声で、鍵を開けるイアサムにつぶやく。
「さすがだね」
「誉められる程のことじゃないよ」
二人とも、それが当たり前の様に、くすくす笑いながらそんなことをしている。
当たり前、のことなんだろうか。ムルカートはどう考えていいか、非常に困る。
しかし、良く考えてみれば、前の勤務先の署長は、ロゥベヤーガへの赴任を苦笑まじりで告げた。どうしても困ったことがあれば、戻ってくるんだよ、と都市警察の署長にはあるまじきことを言っていた。
「……それにしても、人の気配が無いな」
Gはつぶやく。確かに、とイアサムもうなづく。それはムルカートにも感じられた。音が、あまりにもしない。ほんの少しの足音すら、響き渡る様に思える。
扉を開けると、そこはすぐに部屋になっている。灯りも無く、真っ暗だった。人の気配も、音も無い。街灯の明かりが開けた扉から差し込んで、中の様子をぼんやりと見せるが、窓の無い部屋は、それだけでは見渡せない。
「奧に行くんですか?」
ムルカートは訊ねる。当然だろう、と言いたげに二人はうなづく。
「どうせ来たなら、とことん見なくては意味が無いよね」
「全くだ」
それはそうなのだろうが。そう思いかけて、ぶるん、とムルカートは思わず頭を振った。
けどこれは、どう見ても不法侵入じゃないか!
「……ところでそこでごちゃごちゃ言いたいのだったら、君はそこでお帰りね、ムルカート君」
「な」
「そういう気持ちで居る奴に居られると、邪魔なの」
ずけずけとイアサムは言い放つ。仕方ない、とムルカートは腹をくくった。
いざとなったら、同僚がそう勧めたと言おうか。そんなことを考える自分が何となく嫌だったが、状況に流されつつある彼には、自分が次第に変化しつつあることに気付かない。
とりあえずは手探りだった。ぼんやりと足元が見える部分はそのまま進み、次の扉を探す。
「……あれ?」
誰ともなく、そんなつぶやきが漏れる。甘い香りが、漂ってきた。
「……くだもの?」
ムルカートはつぶやく。台所が隣にあるのだろうか。
「本物だとしたら、ずいぶんと腐りかけたものが多いんだろうなあ」
イアサムもつぶやく。確かに、とGはうなづく。濃厚な匂いだった。南国の、果物の香り。
しかしそれは、この地のものではない。この、乾燥した大地にも根付く木々に実るものでは無い。むしろ、息苦しくなるくらいの緑の中に、鮮やかに赤や黄色の実をたわわに垂らす、そんな。
「……ねえサンドさん、この匂いって、覚えが無い?」
「俺はやったことはないけど、あるよ」
「俺もだよ」
くす、とイアサムは笑って、目の前の扉に向かって拳を振り上げた。
「息を止めて、ムルカート君」
え、と彼は思わず問い返す。
ぱん、と大きな音が響き、扉が開かれた。
そこから、強烈な程の、匂いが飛び出してきた。
む、と思わずGは口を塞いだ。その匂いに覚えはある。そして自分にそれは効かないことも知っている。それでも、ついそうせずにはいられない。そんな匂いが、その広い部屋の中には漂っていた。
薄暗い、部屋だった。窓もなく、天井に換気扇と通風口があったが、それだけだった。
その床に、十数人の女が転がっている。寝転がっている、と言った方が正しいだろうか。時々ふらふらと腕や足をしどけなく動かしているところを見ると、眠っている訳ではなさそうだが、ぐったりとして、起き上がる気力は無いようだった。
「……これは……」
垂らした頭の布を取ると、ムルカートはそれで口と鼻を押さえる。息を止めきってしまう訳にはいかないから、マスク代わりだった。
「亜熟果香だ」
Gはつぶやく。
「って」
「習慣性のある香だよ。……かなり強い習慣性を持つのに、身体機能にはあまり影響無いから、一時期、ずいぶんと裏で使われたってことだけど」
やはり頭の布で口をカバーしているイアサムは、多少不鮮明な声で答える。そして彼は、はい、とGにもその半分を引き裂いて渡していた。
「……だあれ」
寝転がっている女の一人が、まどろみながらも気配に気付いたのか、声を立てる。
「……迎えに来て下さったのですか……」
女は、顔を彼らのほうに向ける。
「早く、早く、連れて行って下さい……」
手が、すっ、と伸ばされる。Gは思わず半歩、退く。その手をぴしゃ、とイアサムは振り払う。
手の代わりに、彼は女の胸元をぐっと引き上げていた。何処からそんな力が出ているのか、屈み込んだイアサムは片手で女を自分の方まで引きつけた。香が女の身体には染みついているのだろう。薄暗い部屋の中でも、露骨に判るくらいにイアサムは嫌そうな顔をした。
「何処へ連れていけばいいんだ?」
「約束の地に」
するりと言葉が飛び出した。約束の地? Gは聞き慣れない単語に目を細める。
「おっしゃったのは、あなた様ではありませんか…… **様……」
何だって?
Gは耳を疑った。
「約束の日は近づいております…… その時までに、船を用意すると……」
不意にイアサムは女を転がした。結構強い力が入っていたが、そのまままたまどろみの中に入っていった女には痛みは感じられない様だった。
「驚いているね、サンドさん」
「驚いている? 俺が?」
「その顔の何処が、驚いていないって言うの。だったら、あなたには、あれが見えないということだね」
イアサムはそう言うと、薄暗い正面の壁を指した。そこには、半身を写したポートレイトに似たものが掛かっている。美しい、非常に美しい、金のくっきりとした巻き毛と、青い瞳を持った、女性にしか見えない……
「イアサム、君は……」
「今日、ここのまとめ役は銀行強盗で捕まったんだよね。だから誰もここをガードする男は居ないんだよ。だから、今しか無いんだよね。それを都市警察も知っている。知っていただろう? ムルカート君?」
不意に自分に振られたので、ムルカートは戸惑う。彼は全くそんなことを考えてもいなかった。二つの事件につながりなど感じていなかったのだ。
「でもこれで、ここを堂々と捜索できるよ。相棒に知らせたらどう? ぼやぼやしていると、逃げた方の奴がやってくるかもしれない。もっと他に仲間がいるかもしれないよ?」
「あんたは……」
「だから俺は、ただの都市の住民だって」
ほらほら早く行って、と押し出す様に、イアサムはその場からムルカートを送り出した。わざわざ都市警察の署まで戻ることはないだろうが、外で通信のできる端末を見つけるまで少しは時間がかかるだろう。
「さて、どう思った?」
するり、とイアサムは口に当てていた布を取り去る。相変わらず、大気の中には強烈な香が漂っている。それは何も変わりはしない。
「平気なの?」
Gは彼に問いかける。相手のその手が、するりと彼の口に巻かれた布を取り去る。
「あなたが平気な程度には」
「なるほど」
Gはその手を取る。
「この手に、覚えがあったんだ」
左手を、右手で握りしめる。
「マーシャイ」
イアサムはくっ、とGを見上げた。
「いつから、気付いてた?」
「気付いたのは、さっきさ。君の手を取るまで、気付かなかった」
「それはなかなか鈍感だね」
くす、と彼は笑う。
「俺は結構ヒントを出していたと思うのだけど」
「休暇ボケしていたんだよ」
「それはいけないね」
そしてふっ、イアサムは正面のポートレイトを見据える。
「本物だと思う?」
「どうだろう」
Gは曖昧に答える。似ている、と言えば似ている。そのままだ。
ただ髪の色が違う。印象が違う。
「あれが、マリエアリカの言う『彼女』だよ」
「彼女、ではないと思うんだけどね」
「どっちでもいいさ。女に見えれば。何もその服をはぎとって、玉の素肌を露わにする訳でもないだろ」
そしてつかつかと奧へと歩み寄ると、イアサムはポートレイトを入れた額を壁から外し、いきなり足元に叩きつけた。
はっ、とその音に、女達が身体を起こした。だがその視線はのろのろと音の在処を探しているだけだった。何がどう起こったのか、把握できていない。
把握できたのは、イアサムが、その割れた額のガラス板の下からポートレイトを引き出した時だった。
「……!」
喉の奧からひゅう、と悲鳴が響いた。
恐怖は伝染するのだろうか。その声を合図にした様に、女達は、大きなポートレイトを手にしたイアサムに視線を集中させた。
「何を…… 何をするのです!」
「何をって?」
イアサムは、ポートレイトの真ん中を持つ。何をするのか判った一人がやめて、と悲鳴を上げる。だがそんな女達を冷ややかな目で見下ろすと、イアサムは、思い切りそのポートレイトを左右に引き裂いた。
その中に笑みは無い。
イアサムはそれを更に二つに裂き、それをまた更に二つに裂いて、ぱっ、と部屋の中に投げた。女達はああ、と声を上げながら、引き裂かれた一つ一つを追い求める。
「所詮は、写真じゃない。どうせなら、本物の誰か様をそれこそ崇め奉ればいいじゃないの。格好悪すぎ」
イアサムはあっさりと言うと、再び戸口のGの元へ戻る。女達は、ただもう、泣いたり叫んだり、そんなことしか出来ない様だった。
なるほど、とGはうなづく。
「説明してくれる? マーシャイ」
「喜んで」
イアサムはにっこりと笑う。そしてGは目の前で起こる出来事に興味も何も無い様に、背を向けた。
扉は無論彼らに開いていた訳ではないから、無理矢理開けさせていただいた。
その手際の良さに、ムルカートは戸惑いの表情を隠せない。Gは小声で、鍵を開けるイアサムにつぶやく。
「さすがだね」
「誉められる程のことじゃないよ」
二人とも、それが当たり前の様に、くすくす笑いながらそんなことをしている。
当たり前、のことなんだろうか。ムルカートはどう考えていいか、非常に困る。
しかし、良く考えてみれば、前の勤務先の署長は、ロゥベヤーガへの赴任を苦笑まじりで告げた。どうしても困ったことがあれば、戻ってくるんだよ、と都市警察の署長にはあるまじきことを言っていた。
「……それにしても、人の気配が無いな」
Gはつぶやく。確かに、とイアサムもうなづく。それはムルカートにも感じられた。音が、あまりにもしない。ほんの少しの足音すら、響き渡る様に思える。
扉を開けると、そこはすぐに部屋になっている。灯りも無く、真っ暗だった。人の気配も、音も無い。街灯の明かりが開けた扉から差し込んで、中の様子をぼんやりと見せるが、窓の無い部屋は、それだけでは見渡せない。
「奧に行くんですか?」
ムルカートは訊ねる。当然だろう、と言いたげに二人はうなづく。
「どうせ来たなら、とことん見なくては意味が無いよね」
「全くだ」
それはそうなのだろうが。そう思いかけて、ぶるん、とムルカートは思わず頭を振った。
けどこれは、どう見ても不法侵入じゃないか!
「……ところでそこでごちゃごちゃ言いたいのだったら、君はそこでお帰りね、ムルカート君」
「な」
「そういう気持ちで居る奴に居られると、邪魔なの」
ずけずけとイアサムは言い放つ。仕方ない、とムルカートは腹をくくった。
いざとなったら、同僚がそう勧めたと言おうか。そんなことを考える自分が何となく嫌だったが、状況に流されつつある彼には、自分が次第に変化しつつあることに気付かない。
とりあえずは手探りだった。ぼんやりと足元が見える部分はそのまま進み、次の扉を探す。
「……あれ?」
誰ともなく、そんなつぶやきが漏れる。甘い香りが、漂ってきた。
「……くだもの?」
ムルカートはつぶやく。台所が隣にあるのだろうか。
「本物だとしたら、ずいぶんと腐りかけたものが多いんだろうなあ」
イアサムもつぶやく。確かに、とGはうなづく。濃厚な匂いだった。南国の、果物の香り。
しかしそれは、この地のものではない。この、乾燥した大地にも根付く木々に実るものでは無い。むしろ、息苦しくなるくらいの緑の中に、鮮やかに赤や黄色の実をたわわに垂らす、そんな。
「……ねえサンドさん、この匂いって、覚えが無い?」
「俺はやったことはないけど、あるよ」
「俺もだよ」
くす、とイアサムは笑って、目の前の扉に向かって拳を振り上げた。
「息を止めて、ムルカート君」
え、と彼は思わず問い返す。
ぱん、と大きな音が響き、扉が開かれた。
そこから、強烈な程の、匂いが飛び出してきた。
む、と思わずGは口を塞いだ。その匂いに覚えはある。そして自分にそれは効かないことも知っている。それでも、ついそうせずにはいられない。そんな匂いが、その広い部屋の中には漂っていた。
薄暗い、部屋だった。窓もなく、天井に換気扇と通風口があったが、それだけだった。
その床に、十数人の女が転がっている。寝転がっている、と言った方が正しいだろうか。時々ふらふらと腕や足をしどけなく動かしているところを見ると、眠っている訳ではなさそうだが、ぐったりとして、起き上がる気力は無いようだった。
「……これは……」
垂らした頭の布を取ると、ムルカートはそれで口と鼻を押さえる。息を止めきってしまう訳にはいかないから、マスク代わりだった。
「亜熟果香だ」
Gはつぶやく。
「って」
「習慣性のある香だよ。……かなり強い習慣性を持つのに、身体機能にはあまり影響無いから、一時期、ずいぶんと裏で使われたってことだけど」
やはり頭の布で口をカバーしているイアサムは、多少不鮮明な声で答える。そして彼は、はい、とGにもその半分を引き裂いて渡していた。
「……だあれ」
寝転がっている女の一人が、まどろみながらも気配に気付いたのか、声を立てる。
「……迎えに来て下さったのですか……」
女は、顔を彼らのほうに向ける。
「早く、早く、連れて行って下さい……」
手が、すっ、と伸ばされる。Gは思わず半歩、退く。その手をぴしゃ、とイアサムは振り払う。
手の代わりに、彼は女の胸元をぐっと引き上げていた。何処からそんな力が出ているのか、屈み込んだイアサムは片手で女を自分の方まで引きつけた。香が女の身体には染みついているのだろう。薄暗い部屋の中でも、露骨に判るくらいにイアサムは嫌そうな顔をした。
「何処へ連れていけばいいんだ?」
「約束の地に」
するりと言葉が飛び出した。約束の地? Gは聞き慣れない単語に目を細める。
「おっしゃったのは、あなた様ではありませんか…… **様……」
何だって?
Gは耳を疑った。
「約束の日は近づいております…… その時までに、船を用意すると……」
不意にイアサムは女を転がした。結構強い力が入っていたが、そのまままたまどろみの中に入っていった女には痛みは感じられない様だった。
「驚いているね、サンドさん」
「驚いている? 俺が?」
「その顔の何処が、驚いていないって言うの。だったら、あなたには、あれが見えないということだね」
イアサムはそう言うと、薄暗い正面の壁を指した。そこには、半身を写したポートレイトに似たものが掛かっている。美しい、非常に美しい、金のくっきりとした巻き毛と、青い瞳を持った、女性にしか見えない……
「イアサム、君は……」
「今日、ここのまとめ役は銀行強盗で捕まったんだよね。だから誰もここをガードする男は居ないんだよ。だから、今しか無いんだよね。それを都市警察も知っている。知っていただろう? ムルカート君?」
不意に自分に振られたので、ムルカートは戸惑う。彼は全くそんなことを考えてもいなかった。二つの事件につながりなど感じていなかったのだ。
「でもこれで、ここを堂々と捜索できるよ。相棒に知らせたらどう? ぼやぼやしていると、逃げた方の奴がやってくるかもしれない。もっと他に仲間がいるかもしれないよ?」
「あんたは……」
「だから俺は、ただの都市の住民だって」
ほらほら早く行って、と押し出す様に、イアサムはその場からムルカートを送り出した。わざわざ都市警察の署まで戻ることはないだろうが、外で通信のできる端末を見つけるまで少しは時間がかかるだろう。
「さて、どう思った?」
するり、とイアサムは口に当てていた布を取り去る。相変わらず、大気の中には強烈な香が漂っている。それは何も変わりはしない。
「平気なの?」
Gは彼に問いかける。相手のその手が、するりと彼の口に巻かれた布を取り去る。
「あなたが平気な程度には」
「なるほど」
Gはその手を取る。
「この手に、覚えがあったんだ」
左手を、右手で握りしめる。
「マーシャイ」
イアサムはくっ、とGを見上げた。
「いつから、気付いてた?」
「気付いたのは、さっきさ。君の手を取るまで、気付かなかった」
「それはなかなか鈍感だね」
くす、と彼は笑う。
「俺は結構ヒントを出していたと思うのだけど」
「休暇ボケしていたんだよ」
「それはいけないね」
そしてふっ、イアサムは正面のポートレイトを見据える。
「本物だと思う?」
「どうだろう」
Gは曖昧に答える。似ている、と言えば似ている。そのままだ。
ただ髪の色が違う。印象が違う。
「あれが、マリエアリカの言う『彼女』だよ」
「彼女、ではないと思うんだけどね」
「どっちでもいいさ。女に見えれば。何もその服をはぎとって、玉の素肌を露わにする訳でもないだろ」
そしてつかつかと奧へと歩み寄ると、イアサムはポートレイトを入れた額を壁から外し、いきなり足元に叩きつけた。
はっ、とその音に、女達が身体を起こした。だがその視線はのろのろと音の在処を探しているだけだった。何がどう起こったのか、把握できていない。
把握できたのは、イアサムが、その割れた額のガラス板の下からポートレイトを引き出した時だった。
「……!」
喉の奧からひゅう、と悲鳴が響いた。
恐怖は伝染するのだろうか。その声を合図にした様に、女達は、大きなポートレイトを手にしたイアサムに視線を集中させた。
「何を…… 何をするのです!」
「何をって?」
イアサムは、ポートレイトの真ん中を持つ。何をするのか判った一人がやめて、と悲鳴を上げる。だがそんな女達を冷ややかな目で見下ろすと、イアサムは、思い切りそのポートレイトを左右に引き裂いた。
その中に笑みは無い。
イアサムはそれを更に二つに裂き、それをまた更に二つに裂いて、ぱっ、と部屋の中に投げた。女達はああ、と声を上げながら、引き裂かれた一つ一つを追い求める。
「所詮は、写真じゃない。どうせなら、本物の誰か様をそれこそ崇め奉ればいいじゃないの。格好悪すぎ」
イアサムはあっさりと言うと、再び戸口のGの元へ戻る。女達は、ただもう、泣いたり叫んだり、そんなことしか出来ない様だった。
なるほど、とGはうなづく。
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