〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩

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3 新しい生活に積極的に慣れよう

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 この基本的な仕事を教えてくれたのがアリサだ。
 彼女自身、男爵や母の視界にそう入らない部分を担当していたのが一番大きい。
 そして何より同じくらいの歳であること。
 これは案外大きい。
 同じ仕事を教えてくれる/もらうにしても、常にテキパキとできる大人の場合、既に初心や身体が小さかった時に不便だったことを忘れていることが多い。
 アリサは背の届かないところには踏み台を使うこと、力が足りない場合にはてこの原理を使ったりすることなどをも教えてくれた。
 とは言え、最初からスムーズに教わることができた訳ではない。
 そもそも追い出された時が初潮の日だ。
 さすがに二日程は屋根裏の部屋で寝たり起きたりしていた。
 おかげでそういう日の手当てや、痛みに向き合うことや、屋根裏部屋に慣れる時間が取れた。
 そして初仕事の日。
 手すりを磨き、窓を拭き、床を掃く。
 ただそれだけのことだが、午前中だけでどっと疲れた。
 皆と共にする食事は、質素だが美味しかった。

「お腹空くから美味しさが増すよね!」

 アリサはドロイデのつくるドイツ風のパンをがしがしと噛み締めながら笑った。
 それまで食卓で見たことのあるものより、形は悪い。
 だけど作りたてはそれまで味わったことの無い美味しさだった。
 午後には調理の下ごしらえだった。
 刃物を扱うのは初めてだったので、ともかくアリサや、ハッティロッティの手つきを見た。
 見て、それをひたすら自分の手でできる様にしよう、と思った。
 こう言うと、私の切り替えが速いかの様だが、そういう訳ではない。
 二日間の寝込んでいた日々は、母から捨てられたショックを母への憎しみに変えるには充分だった。
 その辺り、彼女の血なのだろう。
 私の頭は、既に捨てた相手へすがりつくより、目に物見せてやるにはどうすればいいのか、の方にシフトしていた。
 そして思った。
 まずはこの使用人達の中で、きちんと生きていかなくてはならない。
 幸い彼等は私に対し同情的だ。
 だったらできるだけそこから得るものは得よう――と。
 既に十三になっていて、基礎的な勉強もある程度身につけていたことも大きかった。
 ともかくほんの三日前まではきちんと教師について勉強していたのだ。
 教師は生真面目で、

「ものごとを現実的に、あるがままに見た上で最適な答えをみつけることが大事」

と私に常々言っていた。
 だから私はともかく新たな環境に入ったならば、そこで身につけられるものは何でも身につけようと思った。
 この貪欲さが、後にアリサとは違う、と言われる点だった。
 アリサはともかく欲が無いのだ。
 少なくとも、ある時まではそう思っていた。
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