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19 決行日が迫る
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それからしばらくして、アリサから子爵の解放の期日が近づく関係の打ち合わせを始めた。
ところでその間、彼女は彼女で母方の伯父フレデリック氏と連絡がついた様だった。
そして初めて電信局に行った、とのことだった。
……考えてみれば、アリサは本当に外に出たことが少ない。
私は逃げ出したからあちこちへ出歩く様になったけど、彼女はずっとあの屋敷の中だったのだ。
まあ先日買い出しに出たとは言っていた。
実にあちこちの店が新鮮だったようだ。
私もそうだった。
マルティーヌという案内役が居なかったら大変だった。
全てが目新しく新鮮で、……正しく見えてしまうから困った。
私は彼女のおかげで箱入りを何とか脱却できたと思うけど、アリサはきっとこの先大変だ。
それともロルカ子爵家に引き取られる訳だから別に構わないのかもしれないけど。
それにしてもアリサが書いてきた中に、礼の東洋系ペット君の話があったけど、……何を考えているのだろう?
協力してくれるというならそれはそれでありがたいのだけど、意図がさっぱり判らない。
それこそ金品盗んではいさようなら、というなら判りやすいんだけど。
*
「おー、ついに決行日決まったんだね」
弁護士事務所でその話をすると、キャビンさんがのりのりで聞いてきた。
「アリサは怒りを買って追い出される予定なんで、子爵家から馬車を借りてすぐに彼女を迎えに行ける様にしようと思って。で、お二人にその際、一緒に来てもらえたらと」
「了解。ただ、使用人口にそのまま横付けはまずいね。この間行った時、通用門と使用人口は同じ塀側にあるな、と思ったから」
「じゃあ死角になる辺りで待ち伏せすることにして……」
ようやくアリサもあの家から解放されるんだ、と思うと私は嬉しかった。
そして子爵家で、皆で顔合わせをする。
その時にはアリサが連絡を取ったフレデリック氏も戻ってくるはずだ。
と言うか、既に戻ってきてはいる。
ただ、長い間のわだかまりがあるので、子爵家にはまず母夫人と、そして次に子爵と、という風に段階を踏んで会うらしい。
「何か、面倒ですね」
私はその件について二人にそう言った。
「いや、それでも奥さんが居ないだけまだいいんだよ。居たらまず母夫人と会うこと自体のハードルが高くなるって」
「そうなんですか? ――って、奥様は来てないんですか?」
「来ない。というか来れないんだよ」
キャビンさんは軽く目を伏せた。
「向こうでずいぶん前に亡くされたらしい。その辺りの経緯についても、皆が揃ってから話す、ということなんだ」
オラルフさんがそう付け加える。
「でも正直、奥さんの写真を見せてもらったけど、ちょっと確かに…… 厳しいね。整った顔立ちではあるけど、明らかに違うから母夫人には受け容れがたいだろうね」
「子爵がお怒りだったんじゃ?」
「それとは別に、『息子を取った女』という視点が母親にはあるんだよ」
なるほど。
だけど私の母が、弟に対してそこまで思い入れがあるのか、私には判らない。
ところでその間、彼女は彼女で母方の伯父フレデリック氏と連絡がついた様だった。
そして初めて電信局に行った、とのことだった。
……考えてみれば、アリサは本当に外に出たことが少ない。
私は逃げ出したからあちこちへ出歩く様になったけど、彼女はずっとあの屋敷の中だったのだ。
まあ先日買い出しに出たとは言っていた。
実にあちこちの店が新鮮だったようだ。
私もそうだった。
マルティーヌという案内役が居なかったら大変だった。
全てが目新しく新鮮で、……正しく見えてしまうから困った。
私は彼女のおかげで箱入りを何とか脱却できたと思うけど、アリサはきっとこの先大変だ。
それともロルカ子爵家に引き取られる訳だから別に構わないのかもしれないけど。
それにしてもアリサが書いてきた中に、礼の東洋系ペット君の話があったけど、……何を考えているのだろう?
協力してくれるというならそれはそれでありがたいのだけど、意図がさっぱり判らない。
それこそ金品盗んではいさようなら、というなら判りやすいんだけど。
*
「おー、ついに決行日決まったんだね」
弁護士事務所でその話をすると、キャビンさんがのりのりで聞いてきた。
「アリサは怒りを買って追い出される予定なんで、子爵家から馬車を借りてすぐに彼女を迎えに行ける様にしようと思って。で、お二人にその際、一緒に来てもらえたらと」
「了解。ただ、使用人口にそのまま横付けはまずいね。この間行った時、通用門と使用人口は同じ塀側にあるな、と思ったから」
「じゃあ死角になる辺りで待ち伏せすることにして……」
ようやくアリサもあの家から解放されるんだ、と思うと私は嬉しかった。
そして子爵家で、皆で顔合わせをする。
その時にはアリサが連絡を取ったフレデリック氏も戻ってくるはずだ。
と言うか、既に戻ってきてはいる。
ただ、長い間のわだかまりがあるので、子爵家にはまず母夫人と、そして次に子爵と、という風に段階を踏んで会うらしい。
「何か、面倒ですね」
私はその件について二人にそう言った。
「いや、それでも奥さんが居ないだけまだいいんだよ。居たらまず母夫人と会うこと自体のハードルが高くなるって」
「そうなんですか? ――って、奥様は来てないんですか?」
「来ない。というか来れないんだよ」
キャビンさんは軽く目を伏せた。
「向こうでずいぶん前に亡くされたらしい。その辺りの経緯についても、皆が揃ってから話す、ということなんだ」
オラルフさんがそう付け加える。
「でも正直、奥さんの写真を見せてもらったけど、ちょっと確かに…… 厳しいね。整った顔立ちではあるけど、明らかに違うから母夫人には受け容れがたいだろうね」
「子爵がお怒りだったんじゃ?」
「それとは別に、『息子を取った女』という視点が母親にはあるんだよ」
なるほど。
だけど私の母が、弟に対してそこまで思い入れがあるのか、私には判らない。
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