〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
20 / 23

20 何年ぶりかの再会

しおりを挟む
 アリサがとうとうロルカ子爵家の人々と再会できた!
 「追い出された」彼女を迎えに行って、そのまま屋敷まで箱馬車で向かった私達としては、ついにやった! という気分だった。
 彼女にしてみれば、何年ぶりの再会だろう。
 そのまま逃げ出して子爵夫人の元で暮らすという手もあったかもしれない。
 だがどうもこの少し感覚がずれた元異母姉は、父である男爵への疑問の方がどうにも自分の安定より勝ったらしい。
 そしてそれにも蹴りがついたことと、受け容れ体制が整ったことで決行ということになった。
 しかし、彼女の話によると、東洋人ペットの彼は、瓶を割れやすくしていたとのこと。
 そんな器用なことができるなんて。
 これはマリューカ様のところの芸術家達に聞いた話だが。
 東洋から送られてくるペットというのは、ともかく床技が凄いらしい。
 それが男であれ女であれ。

「別に手に入れたいとは思わないけどさ、あの女の子の纏足は一度見てみたいと思うね」

 そういうひとも居た。
 だが彼等が言うには、その東洋から来たペット達は「いつの間にか」行方をくらますのだという。
 そもそも入手したことが表沙汰にそうそうできるものでも無いので、気楽に入手した者では捜索もあまりできないそうで。
 そもそも本気でずっと囲っておく場合は、きっちり逃げられない様にしておくのだと聞いた。
 ……あまり聞いて気持ちのいい話ではなかったが。
 逃げられる場合と「逃げられたとする」場合がある、という話も聞いたが、これはこれで胸糞悪いのでちょっと心の端に置いとくことにした。
 アリサに協力したという彼はどうも前者らしい。
 だとしたら母はそのうち愛想を尽かされるんだ、そう私は思った。
 ……後で、それどころではないと判ったが。
 ともかくこの場では帰国したフレデリック氏親子からの告白に私達は驚いた。
 アリサに、男爵に手の甲の傷の件を聞いていたのはそのせいかと。
 誰よりも男爵を名乗っていた男に対し、憎しみを抱いていたのは、アリサでも私でもなく、このひとだったのだ。
 息子のサマルは濃い黒い髪と瞳を持つ青年だ。
 半分フレデリック氏の血を持つ彼がこれだけ目を引く顔立ちと色合いをしていたならば、亡くなった――殺されたという奥方は、確かにこちらに来たら違和感があっただろう。
 時々向こうのマハーラージャの子息が留学しに来ることがあるという話は弁護士の二人から聞いたことがある。
 彼等は確かに外見は異なっている。
 海外貿易をしている親を持った生徒の中には、その外見から当初は見下す者も居るらしい。
 だが身分特有の堂々とした態度と金回りの良さ、持ち物の質、鷹揚さの一方で俯瞰した厳しさを兼ね揃えた彼等にとっては、周囲の方が目下くらいにしか思っていないらしい。

「そういう感覚の差を乗り越えて友達になれた場合はもの凄く頼りになるんだけどね」

 そうオラルフさんが言っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

無能扱いされ、パーティーを追放されたOL、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。 

さくら
恋愛
かつて王都で働いていたOL・ミナ。 冒険者パーティーの後方支援として、管理と戦略を担当していた彼女は、仲間たちから「役立たず」「無能」と罵られ、あっけなく追放されてしまう。 居場所を失ったミナが辿り着いたのは、辺境の小さな村・フェルネ。 「もう、働かない」と決めた彼女は、静かな村で“何もしない暮らし”を始める。 けれど、彼女がほんの気まぐれに整理した倉庫が村の流通を変え、 適当に育てたハーブが市場で大人気になり、 「無能」だったはずのスキルが、いつの間にか村を豊かにしていく。 そんなある日、かつての仲間が訪ねてくる。 「戻ってきてくれ」――今さら何を言われても、もう遅い。 ミナは笑顔で答える。 「私はもう、ここで幸せなんです」

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。

reva
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。 特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。 けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。 彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下! 「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。 私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

処理中です...