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本とかの感想

高階良子せんせい最後の作品となる「70年目の告白~毒とペン~」2巻を読んでみた

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 2巻来ましたー!
 作者が「3巻予定なのに、巻きに入らなくちゃ」って辺り…… あとがきで健康面の心配甚だしい辺り…… 
 だが何か最後まできっちり上げてくれるという何か信頼感があるんだよなあ、この方は。

 さて前巻が生まれて~毒母+貧しさ→自己否定感が育まれてしまった悲惨な子ども時代(T_T)だったのですが。
 今巻は中卒で入った会社(工場)の寮暮らし(一部屋の人数!)の中でマンガ家目指していく辺り~貸本業界のこと~講談社でまあ名は伏せてるけどフレンドとなかよしの二足のわらじだった頃~なかよしで「黒蜥蜴」を描かせてもらう+一本に絞るという流れですな。
 なるほど、黒蜥蜴(高階せんせいの著作の方では「黒とかげ」。昔は「黒」と「かげ」と空見していた記憶がなー)、なかよしでの方向性をつけた作品だったんだな! 
 そんでこの編集長のおかげで「なかよし」の黄金期が来た訳か!
 そんでちょうど自分が読み出した頃から次巻だな。

 それにしてもまあ、この時代のマンガ家志望は根性と体力勝負だよな。荒川・百姓貴族・弘せんせいが現代でそれに近かったことが恐ろしいんだが、高階せんせいの時代はそれが普通だったからな。あれだ。矢口高雄せんせいもそう。ちゃんと仕事持った上で時間切り詰め切り詰め、だけど仕事もちゃんとやるという。
 それにしても! それでも送金していたというのが(T_T) そのおかげで家が~というのもあったのに。姉が味方で本当に良かった……
 そして一時期自宅に戻ったけど、作者がいない時には妹に当たっていたというこの母…… 
 自分の性格+「恋愛がわからない」というのをもの凄く淡々と分析して描いてるのが凄い。確かにワタシの知っている高階せんせいの作品では、「事件」がメインで、恋愛はその中の一要素に過ぎなかった。
 大好きな「はるかなるレムリアより」では幼なじみの二人が最終的に結ばれる展開だけど、これは消えた幼なじみ・周囲に理解されない自分という要素から、より絆が深いという訳で、「フレンド」にありがちな恋愛じゃあ…… 確かに、ない。
 ちなみに講談社の「フレンド」は、「少女倶楽部」の流れだから、これはまあ晴れ舞台だわな。「なかよし」は派生だからこそ、色々な作品が載せられたんだと思うけど。

 ともかくそんな中で興味深かったのは、「貸本業界」の話。
 女性マンガ家で貸本時代のことを描けるひとが果たしてどれだけこの業界に生き残っているか、なんだよな。マンガ家自体が少なかった訳だし。

 あと、手塚治虫について「自己肯定感」の件で軽く述べてるけど、まず手塚御大の側で描かれた伝記的なものでは出てこないエピが描かれていたのはびっくり。これが当事者か、なおかつ「神」としない異性目線からのものなんだなあ、という。
 手塚御大が母親好きというのはまあ有名な話だけど、自己肯定感を与えてくれる存在としての母親という目線はすげえ。+周囲からのちやほやが必要だったんだ、というのも。こういうのは神と崇める人々からはそう出てこないんだよ。

 で、高階せんせい自身における恋愛の「無さ」エピ。
 周囲の話にも感動すると有名なラブロマンス映画もさっぱりわからないというのは、まず自己否定が激しすぎたことで、男女間のあれこれまで気持ちが回るほど、余裕持って育っていないという悲しさ(T_T)……

 そして強く出る人々に固まってしまう気質で対編集者とか、「普通の女子」対応に苦労した話……(T_T)

 本当にまあ、きちんと整頓して描けているのが凄いと思いますよ全く……
 次巻でまとまる…… のかなあ?
 まずなかよしでの成功、その後秋田書店への移籍、そこから延々続くミステリー・サスペンス描き人生+家族の問題だけど…… 巻き…… できるんだろうか……
 本当にお体にお気を付けてくださいだわ…… 
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