春は萌ゆる季節ゆえ

江戸川ばた散歩

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とある地方都市のラブホにて。

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「何じゃこりゃあ」

 部屋に入った瞬間、奴は奇声を発した。

「いや~ラブホなんだから、らしいっちゃらしいぜ」

 どん、と置かれたベッドの上にはこれまたでん、と白地にでかいハートのマーク。

「いやそこじゃない。あたしはこのハートが緑なあたりを突っ込みたい」
「そこかよ」

 そうツッコミつつ、ワタシは奴の上着を剥ぎ取り投げる。

「いやむしろこれをチョイスした奴にセンスを感じるのはワタシだけか?」
「何でだよ」
「緑のハート。お前それで想像できないか? 言わば前葉体だ」

 自分の上着も取って投げる。

「前葉体、覚えてるか?」
「おめーほど頭良くねえんだよあたしゃ。何だっけ」
「中学の頃やったろ! お前の理科は……」
「あたしは虫が出るのは嫌だからバケ学だあああああ」
「理解できん。まあいい。前葉体ってのはシダ・コケ類が受精する前に作る場所だ」
「記憶にない」
「そうか」

 はい万歳、と奴のインナーを一気に取り去る。髪がー、とか騒いでいるが知ったこっちゃない。確かに量の多いそれがわしゃわしゃになってるが。
 ええいとってやるー、と向こうもこっちを剥いできた。しまった緩いワンピースだったから一気に取られたぞ。

「コケとかシダとかは胞子植物ってことは覚えてるか? 種とか球根じゃないんだぞ?」
「コケ…… シダ……」
「この鳥頭。学校の裏庭でおめーたしかワラビ取ってなかったか? シダの芽だろ」
「ええっ! あれシダだったのかよ!」
「マジ知らなかったのかおい」

 ううむスポーツブラを脱がせるのは力が要る。とか言ってるうちにこっちのフロントホックを外しやがって。何でそういう時だけ反応しやがる。待てついでに乳首揉んでくな。ううう。

「コケやシダは胞子で増えるんだがな、その時に前葉体が必要なんだよ。そこで水分があれば泳いでく。そこでようやく胞子は絡みあって絡みあってめちゃくちゃになって受精できてだな、そこからシダとかの本体ができてくんだぜ」
「つまり」
「前葉体ってのは初夜のベッドだ」

 ぽん、と奴は手を叩いた。胸がぷるん、と震えた。

「納得ー。やっぱあんた頭いいー。じゃあ思いっきり濡れようよー」

 奴は勢い良くワタシのショーツを引き下ろした。ち、先にやられたか。

「お前も脱げ!」

 ほーい、と言って奴はぽいっと前葉体の上に放り投げ、手に手を取って風呂場へ向かう。

「思いっきり受精しよーねー」
「コケのむすまでってか」

 さすがにそれは無理だと思うぜ、雌同士の我々では。
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