〈とりあえずまた〆〉婚約破棄? ちょうどいいですわ、断罪の場には。

江戸川ばた散歩

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24 その頃の妃達

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 大広間が騒ぎになっている頃、審議中止ということで戻ってきていた王家の女――セインをのぞいて――は、昨日新たに判った第三側妃に関する事実について、今更の様に思い出すことを次々と口にしていた。

「私は未だに信じられませんわ」

 そう言って首を大きく横に振るのは、第五側妃マレット。
 彼女は十八の時、そのはち切れそうな健康な身体を見込まれて、子爵家から侯爵家へと養女という形をとって第五側妃として王宮に入ってきていた。
 結果として二人の王子が生まれたことで、彼女の現在の扱いは第三側妃に次ぐものとなっていた。
 そう、入った順である第一第二、という名称でなく、実質的な位置というものが確かに女達のもとにはあった。
 正妃ローゼルは別格である。
 何と言っても正妃であり、社交だけでなく、公務を行う立場である。
 それ以外の子を産むために次々と入れられた女達に関しては、当初は後ろ盾があったとは言え、生まれた子によってやはり周囲からの扱いは変わってくる。
 その意味では第一王子を成した第三側妃セレジュの位置は高かった。
 第一側妃のタルカ、第二側妃のアマイデは元々の出が公爵、侯爵家であったが故に、当初は伯爵家の出身の第三側妃をどうしても疎んじる傾向があった。
 特にそれが、王の幼馴染みをどうしても、という願いで入れた女であれば特に。
 だが彼女が王子を産んでしまえば、やはりそれなりに立場の天秤は動く。
 ただ、後の第四、第五側妃の、第三側妃に対する感情は悪くはなかった。
 むしろ感謝している、敬愛している、という傾向が強かった。

「ええ、マレット様がいらっしゃる時、落ち込んでいた私をお慰め下さったのもあの方でしたし……」

 そう言うのは、第四側妃のトレス。
 彼女も伯爵家から公爵家の養女となって入っている。
 この様に中~下位貴族から入宮することに関しては、自身が伯爵家からそのまま入ったことで王宮で肩身が狭かったことから王に切り出した、ということだった。

「それでも同じくらいの家の出身、歳も同じくらい、趣味も同じということで、私達は仲良くなれましたわ」
「あの方のお引き合わせがなかったら、私はきっと、マレット様のことをずっと根深く暗く妬んでいたと思いますわ。おかげでトバーシュが生まれて、気が楽になりましたのよ」

 第四側妃は入ったはいいが、なかなか懐妊の兆しがなかった。
 それでもう一人、と入れられたのが第五側妃だった。

「そうね、私にアマニができたのも、あの方が王に進言下さったからだし……」
「私もさすがに、その頃の再度のお渡りで子ができなかったなら、仕方ないとあきらめがつきましたもの」

 第一、第二側妃はそもそもそれぞれ一人ずつしか王女を持っていなかった。
 だが、タルカにアマニという二人目の王女が生まれたことで、アマイデやトレスに比べれば上、という微妙な差異が生まれた。
 最初に側妃として入れられた彼女の気持ちはある程度落ち着いたと言える。
 なおかつ、そこで王子でなく王女だったことも、後継争いの元にならずに済んでいるのだ。

「ただ、それはできすぎていると思いませんか?」

 そこにやはり、クイデが疑問を投げかけるのだ。
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