135 / 168
辺境伯令嬢の婚約者は早く事件を解決したい
32 新たなドレスとパーティの始まり
しおりを挟む
「デタームから八角盤をもらって飾りと思ってかけておいた、と言っても、おそらく彼女はあれが何だか知っていて掛けている。じゃあ何故隠す?」
そんな疑問がバルバラの中に湧いた様だ。
「この三人が故郷でどういう関係だったのか、調べさせないとな」
「あああと、マスリーさん!」
俺は厨房担当の彼を呼んだ。
「何だ一体? お嬢お帰りなさい。何かありました?」
「私は無いんだが、私の命令ってことで此奴から言うことがあるみたいだ」
そう言って俺を指す。
俺は第三側妃のお茶の仕入れ先を調べて欲しい、と頼んだ。
「茶ねえ。皆一緒だと思ってたんだが違ったのかい?」
「厨房では皆一緒なんですか?」
「食料は管理するところが決まっていて、まあ茶なんかもよっぽどの要望が無い限りは、一括で仕入れているらしい。でも第三側妃のところだけ違うのかどうか、は調べてみるよ」
「頼みます」
「とりあえず我々も茶にするか」
淹れますよ、とマスリーは厨房へ飛んでいった。
*
さて幾つもの事実が判ると、幾つもの疑問も生じてくる。
その上、新たな要素が付け加えられてくる訳だ。
滞在して一年程経った頃、俺達は王家の殆どの人間達とそれなりに仲良き付き合いをしていた。
バルバラも王女達に多少おもちゃにされつつ、新たなドレスの可能性がどうとか、で試着させられたりもしていた。
「まあこんな感じなら、きつくも無いしいいか」
するとアマイデ妃は拳を握りしめて力説する。
「ですよね! 無理に締めなくとも身体のラインを強調したい時にはそこに飾りを入れたり外したりすることで視線を集めることができますし、正直結構パーティの時期によっては、男性にとっては暑すぎたり女性にとっては寒すぎたりすることも今のドレスではあるのですよ! それに肌を出したくないという女性も実のところ結構おりまして!」
バルバラはこのアマイデ妃の合理性と美的感覚と商業的利益を追求する姿勢は面白いと思ったらしく、思った以上に協力していた。
その傍らでちくちくとゼムリャがユルシュ王女に刺繍の柄を教えたりしている。
俺はこの第二側妃の離れに来た時には本当に何をしていいのか判らなくなることが多い。
「シェイデン! どうだこれは!」
そうバルバラが聞いてくることはあるのだが、「良いではないんですか」ぐらいしか言い様が無い。
そしてその新たなドレスとやらを着て、ユルシュ王女の誕生パーティに参加することになった。
それまで今一つ引きつった笑顔だった貴族達も、アマイデ妃とユルシュ王女の共同で意匠を作り新たに製作したものであるなら、これはもう宮廷では「今後の流行にしますからね」と言われた様なものだった。
「今年の風邪はしつこいと聞きますし、肩を出さないドレスも良いのではないかと思いまして」
そして実際アマイデ妃とユルシュ王女も、その風味を入れたドレスを着て登場したのだ。
それを見たセイン王子は当然の様に不機嫌だった。
彼が何故こうも不機嫌なのか、は俺達も次第に気がつきつつあった。
が、まだ決定的な言動は現れていない。
そしてこのパーティで危険な言動のきっかけとなる女が現れたのだ。
そんな疑問がバルバラの中に湧いた様だ。
「この三人が故郷でどういう関係だったのか、調べさせないとな」
「あああと、マスリーさん!」
俺は厨房担当の彼を呼んだ。
「何だ一体? お嬢お帰りなさい。何かありました?」
「私は無いんだが、私の命令ってことで此奴から言うことがあるみたいだ」
そう言って俺を指す。
俺は第三側妃のお茶の仕入れ先を調べて欲しい、と頼んだ。
「茶ねえ。皆一緒だと思ってたんだが違ったのかい?」
「厨房では皆一緒なんですか?」
「食料は管理するところが決まっていて、まあ茶なんかもよっぽどの要望が無い限りは、一括で仕入れているらしい。でも第三側妃のところだけ違うのかどうか、は調べてみるよ」
「頼みます」
「とりあえず我々も茶にするか」
淹れますよ、とマスリーは厨房へ飛んでいった。
*
さて幾つもの事実が判ると、幾つもの疑問も生じてくる。
その上、新たな要素が付け加えられてくる訳だ。
滞在して一年程経った頃、俺達は王家の殆どの人間達とそれなりに仲良き付き合いをしていた。
バルバラも王女達に多少おもちゃにされつつ、新たなドレスの可能性がどうとか、で試着させられたりもしていた。
「まあこんな感じなら、きつくも無いしいいか」
するとアマイデ妃は拳を握りしめて力説する。
「ですよね! 無理に締めなくとも身体のラインを強調したい時にはそこに飾りを入れたり外したりすることで視線を集めることができますし、正直結構パーティの時期によっては、男性にとっては暑すぎたり女性にとっては寒すぎたりすることも今のドレスではあるのですよ! それに肌を出したくないという女性も実のところ結構おりまして!」
バルバラはこのアマイデ妃の合理性と美的感覚と商業的利益を追求する姿勢は面白いと思ったらしく、思った以上に協力していた。
その傍らでちくちくとゼムリャがユルシュ王女に刺繍の柄を教えたりしている。
俺はこの第二側妃の離れに来た時には本当に何をしていいのか判らなくなることが多い。
「シェイデン! どうだこれは!」
そうバルバラが聞いてくることはあるのだが、「良いではないんですか」ぐらいしか言い様が無い。
そしてその新たなドレスとやらを着て、ユルシュ王女の誕生パーティに参加することになった。
それまで今一つ引きつった笑顔だった貴族達も、アマイデ妃とユルシュ王女の共同で意匠を作り新たに製作したものであるなら、これはもう宮廷では「今後の流行にしますからね」と言われた様なものだった。
「今年の風邪はしつこいと聞きますし、肩を出さないドレスも良いのではないかと思いまして」
そして実際アマイデ妃とユルシュ王女も、その風味を入れたドレスを着て登場したのだ。
それを見たセイン王子は当然の様に不機嫌だった。
彼が何故こうも不機嫌なのか、は俺達も次第に気がつきつつあった。
が、まだ決定的な言動は現れていない。
そしてこのパーティで危険な言動のきっかけとなる女が現れたのだ。
3
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる