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建国 編【L.A 2064】
てきは だれ
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辿り着いた娼館は、異様な空気を纏う。ドレアスはあまりに濃すぎる血のにおいに思わず顔面を腕で遮った。勢いよく開けられた扉からは悲鳴を上げながら男が飛び出す。しかし、その男はあと一歩で外の地面に踏み出せたというのに後ろへひっくり返ったのだ。扉からはみ出た足はしばらくの間、痙攣を続けてくたりと動かなくなる。
そして中から聞こえるのは多くの悲鳴。窓に飛び散る血飛沫。一体、中で何が起こっているのだ。
「おいトーマ!無事か……って、おい、なにしてんだお前ら」
意を決してドレアスは娼館へと踏み込む。扉の前には血だらけの男たちが積み上げられていた。その山の向こうには……アオイに剣を構えるトーマが歯を食いしばりながら鋭く睨みつけている。
「助ける女性たちや私を守ったのはいいです……ですが、なぜ、ここまでしなければならなかったんですか」
アオイやトーマの周りにも、同じように男たちが血塗れで倒れている。不思議だったのは、こんな惨状だというのに多くの者に息がある……いや、死んでいるという者が見当たらないのだ。壁にしがみついて震える女性たちは皆、首や手足に枷をつけている。
「奴らはきっと、ここまでされても同じことを繰り返す。奴隷を当たり前だと思っている感情は……簡単に消えない」
なんの感情もない、慈悲も躊躇いもない声。自身に向けられているものではないと分かっているものの、体の表面がやけに冷たい。いや、それはすぐに体の芯まで浸透していた。
「……殺しちゃいねーな?」
「寸前で止めさせましたよ、アオイは殺す気でした」
アオイの外套には血の一滴すら付着していないし、その手にだって何も握っていない。サイロンとドレアス、そしてトーマで一気に攻撃を仕掛けたことを思い出した。アオイが、攻撃しようと思っていれば自分たちだってこの男たちのように体中を切り裂かれ血みどろになっていたのだろうか。
この商人たちに同情という気持ちはない、しかしアオイに対してここまでやらなくても、という気持ちはある。
「……なぜ殺してはいけないの?」
ゾクリと、心臓まで冷たくなるような言葉に体が硬直する。これは、なんだというのだ。無邪気なのか、無知なのか、または無関心とでもいうのか。あまりに気分が悪い、血の匂いに酔ったにしては遅すぎる吐き気がこみ上げる。
なぜ、こんなにもアオイの言葉が心をかき乱すんだ。
「あなたは……っ!! それなりに評価していましたが、感情だけは最悪です! よくその口でベネット様の導き手になるなんて言えましたね……っ」
「殺しちゃいけない理由を言ってないよ」
「ベネット様に、その血に塗れた手で触れさせたくない」
「それは君もじゃない? 俺はこんなの、今更だよ。殺さなきゃ終わらないもの」
トーマの顔が苦し気に歪む。言い返せないのだ、無論ドレアスにも。アオイだけを批難すること自体が間違っているのかもしれない。だって、自分たちも同じだったじゃないか。どうして、魔族を殺していたんだ?殺してはいけないということを、理解できなかったからだろう。
「おい! とにかくここにこれ以上長居するわけにはいかねぇ! さっさと帰るぞ」
外から大人数の足音が近付いている。騒ぎを聞きつけた者たちが集まってきたのだろう。閑散としているとはいえ、街は街だ。裏通りには住宅地も密集している地域だったはず。
「……ジェロシアも別に殺してよかった。君たちは、殺すことで手が汚れるなんて理由であいつを生きたまま帰したの?」
「ジェロ……シア……? あの男を生かしておいたのですか」
言葉が伝わっていないことに焦り、小さく舌打ちをするがそれは少女の声にかき消された。
「君は……」
「どうして殺さなかったのです!! あいつはっ、あいつはマーのパパとママを……!!」
獣人の少女が激しく叫びながらトーマの元へ歩み寄る。大粒の涙を溢すその目には、悲しみよりも憎しみが強く宿っていた。
「くっそ、次から次へと……っ」
扉から外を盗み見ると、兵隊に囲まれている。押し入られるのも時間の問題だろう。
「殺すことは一つの終わりでもある。君たちがそれを否定するなら、君たちの前では殺さないようにするね。帰ろっか」
「……ッ、よく、つらつらと物を言えますね」
ドレアスはどちらの加勢も擁護もできなかった。アオイの言葉は過去の自分たちであり、トーマは過去の自分たちの行動を悔やみ、間違いだと認めた上での言葉だった。
「マーは行きません、行けません。あなたたちは助ける女性たちと言いました。だから、行かないのです」
「いいや、お前も首枷をつけているんだ、来てもらうぞ」
すっかり怯え切った女性たちはアオイに目を向けることすら恐れるように、体を縮こまらせてこれ以上下がらないのに逃げようとしている。トーマは懸命に彼女たちへ声を掛け、移動魔術の展開場所へ誘導していた。
「他の奴隷たちを連れて行くなら、マーはいない方がいいのです!!」
「だめだ、静かにしてろ」
小さな肩を引き寄せ首の後ろに手刀を打ち込む。首枷を嵌められていることもあってうまくできなかったら可哀想だと思ったが、いざ本当に気絶させてもやはり可哀想だった。
「強引ですね」
「これ以上はまずい、兵隊が来るぞ」
「……分かりました」
建物内に隠れていた奴隷たちはいつの間にかアオイが引っ張り出していたらしく、突入される前に城へ戻った。アオイが商人たちにとどめを刺さないように見張りながら。自分たちの前では殺さないようにする……つまり、見ていなければ殺すと言ったのだから。
「おかえりなさっ……い……」
髪を後ろでくくって、袖もたくし上げなら額の汗を拭うベネットが出迎える。あまりに久しぶりのような感覚だったが、ほんの少ししか時間は経っていないはずなのだ。どっと疲れが噴き出して、ドレアスは目いっぱいのため息を吐きだした。
「何か……あったんですか?」
誰も血を浴びていないのに、鼻の奥に残る血のにおいがこびりついてベネットが何を気にしているのか察せない。浴びていなくても他者にはにおいが分かってしまうほどだったのだろうか、と。
ただ、それは一時の杞憂にすぎなかった。ベネットの視線は明らかに不機嫌なトーマと、女たちから怯えられているアオイに向けられていたのだから。
「……大丈夫だ、怪我もしないで戻って来たぜ」
「おかえりぃ。トーマ……すごい怒ってる」
「あいつに同行したのが僕でよかったですよ、本当に」
「口調が大分崩れているね、よほどのことがあったのかな」
「ありましたよ……あいつとはしばらく口を利く気になりません」
何があったかを知らないままであれば、トーマが子供のように拗ねているようにでも見えるだろうか。原因を目の当たりにしたドレアスでさえ、きっと言うべきことなのだろうと思っているが中々言い出せないでいる。
「あぁ……ああ!妻と、娘です……!本当に、ありがとうございました……!」
大きな声を上げながら男は喜んでいた。そして他の多くの者たちも、娘や孫、親族との再会を喜んでいた。魔族以外にも獣人やヒト族までも混ざっていることに驚く。アラルは同族であるヒト族ですら奴隷にしているのかと。
「皆さん、こちらへどうぞ。きちんとした水場がまだ用意できなくて……桶だけですが、温めてありますから。服もたくさん用意しました!」
自分たちが奴隷だった頃に着ていたようなボロ衣をくくっただけの服はあまりに心もとない。湯気が立ち昇る桶が配られ頭や手足を流す。枷が邪魔だと言いたそうに眉をしかめる者もいるが、それも間もなく外されるはずだ。ここで着替えるというわけにはいかないから、彼女たちをベネットが城内へ案内しようとした瞬間。
「……どうして」
「うん?」
ガンッ、と大きな音を立てて桶が石畳に打ち付けられる。ちょうど隣にいたジェイソンは、桶を落とした少女の顔を覗きこんでいた。
「どうしてあいつがいるの!! 私達はっ、あいつに売られたようなものよ!」
「なになに、どうしたの」
少女の指差す方向にはドレアスがいた。ジェイソンは「へぇっ!?」と素っ頓狂な声を出したが、視線に気付いたドレアスが振り向くとその影には気を失っている獣人の少女が座り込んでいる。なんだそっちか、と息をついたがそれはそれで大変だ、とジェイソンは隣の少女と獣人の少女を交互に見ていた。
「う……ん……ッ!!」
なかなか目を覚まさない少女を心配して、ドレアスはしばらく肩をゆすったりしたからか少女はようやく目を覚ました。そして少しぼんやりしたあと、自分を指差す少女を認識して表情を固くする。
「同じ奴隷なのに……っ、早く売り出すために買い手を斡旋したり、ずっと自分たちは奴隷だからって洗脳するみたいに言い聞かせたりして……!! どうやって商人に取り入ったか知らないけど……知りたくもないけど、あんたのせいで!!」
「奴隷になったのはマーのせいじゃありません!! マーだって両親を魔術師に殺されて、自分は奴隷にされて、全部無くしたのです!」
娼館にいた女性たちと、馬車で運ばれようとしていた少女たちはあまりに差があった。娼館に捕らわれていた女性たちは体も痩せこけ、傷が多すぎる。そして怯え方にも激しい差が見て取れた。手酷く扱われていたのだろうと察する。そしてそれは獣人の少女も同様で。あまりに細すぎる手足は骨と皮だけじゃないかと疑うほどに。
そしてこの少女はジェロシアの名前も、おそらく容貌も知っていた。両親を殺した魔術師というのはジェロシアなのだろう。
「買い手を斡旋したのは奴隷を殺すようなやつを調べて、まだマシそうなやつを選んだのに……っ、早く売り出されないとあの娼館のクソ商人にいたぶられて買われる前に死んでしまうからなのです! 奴隷になっても、ご飯と寝るところをもらえます……でも、死んだら今度こそ全部なくなるのです」
「一生奴隷で苦しむなら死んだ方がマシよ!」
少女の声は彼女に届かなかった。強く言い返していた少女は耳をパタリと伏せ、肩を震わせながら俯く。
そして中から聞こえるのは多くの悲鳴。窓に飛び散る血飛沫。一体、中で何が起こっているのだ。
「おいトーマ!無事か……って、おい、なにしてんだお前ら」
意を決してドレアスは娼館へと踏み込む。扉の前には血だらけの男たちが積み上げられていた。その山の向こうには……アオイに剣を構えるトーマが歯を食いしばりながら鋭く睨みつけている。
「助ける女性たちや私を守ったのはいいです……ですが、なぜ、ここまでしなければならなかったんですか」
アオイやトーマの周りにも、同じように男たちが血塗れで倒れている。不思議だったのは、こんな惨状だというのに多くの者に息がある……いや、死んでいるという者が見当たらないのだ。壁にしがみついて震える女性たちは皆、首や手足に枷をつけている。
「奴らはきっと、ここまでされても同じことを繰り返す。奴隷を当たり前だと思っている感情は……簡単に消えない」
なんの感情もない、慈悲も躊躇いもない声。自身に向けられているものではないと分かっているものの、体の表面がやけに冷たい。いや、それはすぐに体の芯まで浸透していた。
「……殺しちゃいねーな?」
「寸前で止めさせましたよ、アオイは殺す気でした」
アオイの外套には血の一滴すら付着していないし、その手にだって何も握っていない。サイロンとドレアス、そしてトーマで一気に攻撃を仕掛けたことを思い出した。アオイが、攻撃しようと思っていれば自分たちだってこの男たちのように体中を切り裂かれ血みどろになっていたのだろうか。
この商人たちに同情という気持ちはない、しかしアオイに対してここまでやらなくても、という気持ちはある。
「……なぜ殺してはいけないの?」
ゾクリと、心臓まで冷たくなるような言葉に体が硬直する。これは、なんだというのだ。無邪気なのか、無知なのか、または無関心とでもいうのか。あまりに気分が悪い、血の匂いに酔ったにしては遅すぎる吐き気がこみ上げる。
なぜ、こんなにもアオイの言葉が心をかき乱すんだ。
「あなたは……っ!! それなりに評価していましたが、感情だけは最悪です! よくその口でベネット様の導き手になるなんて言えましたね……っ」
「殺しちゃいけない理由を言ってないよ」
「ベネット様に、その血に塗れた手で触れさせたくない」
「それは君もじゃない? 俺はこんなの、今更だよ。殺さなきゃ終わらないもの」
トーマの顔が苦し気に歪む。言い返せないのだ、無論ドレアスにも。アオイだけを批難すること自体が間違っているのかもしれない。だって、自分たちも同じだったじゃないか。どうして、魔族を殺していたんだ?殺してはいけないということを、理解できなかったからだろう。
「おい! とにかくここにこれ以上長居するわけにはいかねぇ! さっさと帰るぞ」
外から大人数の足音が近付いている。騒ぎを聞きつけた者たちが集まってきたのだろう。閑散としているとはいえ、街は街だ。裏通りには住宅地も密集している地域だったはず。
「……ジェロシアも別に殺してよかった。君たちは、殺すことで手が汚れるなんて理由であいつを生きたまま帰したの?」
「ジェロ……シア……? あの男を生かしておいたのですか」
言葉が伝わっていないことに焦り、小さく舌打ちをするがそれは少女の声にかき消された。
「君は……」
「どうして殺さなかったのです!! あいつはっ、あいつはマーのパパとママを……!!」
獣人の少女が激しく叫びながらトーマの元へ歩み寄る。大粒の涙を溢すその目には、悲しみよりも憎しみが強く宿っていた。
「くっそ、次から次へと……っ」
扉から外を盗み見ると、兵隊に囲まれている。押し入られるのも時間の問題だろう。
「殺すことは一つの終わりでもある。君たちがそれを否定するなら、君たちの前では殺さないようにするね。帰ろっか」
「……ッ、よく、つらつらと物を言えますね」
ドレアスはどちらの加勢も擁護もできなかった。アオイの言葉は過去の自分たちであり、トーマは過去の自分たちの行動を悔やみ、間違いだと認めた上での言葉だった。
「マーは行きません、行けません。あなたたちは助ける女性たちと言いました。だから、行かないのです」
「いいや、お前も首枷をつけているんだ、来てもらうぞ」
すっかり怯え切った女性たちはアオイに目を向けることすら恐れるように、体を縮こまらせてこれ以上下がらないのに逃げようとしている。トーマは懸命に彼女たちへ声を掛け、移動魔術の展開場所へ誘導していた。
「他の奴隷たちを連れて行くなら、マーはいない方がいいのです!!」
「だめだ、静かにしてろ」
小さな肩を引き寄せ首の後ろに手刀を打ち込む。首枷を嵌められていることもあってうまくできなかったら可哀想だと思ったが、いざ本当に気絶させてもやはり可哀想だった。
「強引ですね」
「これ以上はまずい、兵隊が来るぞ」
「……分かりました」
建物内に隠れていた奴隷たちはいつの間にかアオイが引っ張り出していたらしく、突入される前に城へ戻った。アオイが商人たちにとどめを刺さないように見張りながら。自分たちの前では殺さないようにする……つまり、見ていなければ殺すと言ったのだから。
「おかえりなさっ……い……」
髪を後ろでくくって、袖もたくし上げなら額の汗を拭うベネットが出迎える。あまりに久しぶりのような感覚だったが、ほんの少ししか時間は経っていないはずなのだ。どっと疲れが噴き出して、ドレアスは目いっぱいのため息を吐きだした。
「何か……あったんですか?」
誰も血を浴びていないのに、鼻の奥に残る血のにおいがこびりついてベネットが何を気にしているのか察せない。浴びていなくても他者にはにおいが分かってしまうほどだったのだろうか、と。
ただ、それは一時の杞憂にすぎなかった。ベネットの視線は明らかに不機嫌なトーマと、女たちから怯えられているアオイに向けられていたのだから。
「……大丈夫だ、怪我もしないで戻って来たぜ」
「おかえりぃ。トーマ……すごい怒ってる」
「あいつに同行したのが僕でよかったですよ、本当に」
「口調が大分崩れているね、よほどのことがあったのかな」
「ありましたよ……あいつとはしばらく口を利く気になりません」
何があったかを知らないままであれば、トーマが子供のように拗ねているようにでも見えるだろうか。原因を目の当たりにしたドレアスでさえ、きっと言うべきことなのだろうと思っているが中々言い出せないでいる。
「あぁ……ああ!妻と、娘です……!本当に、ありがとうございました……!」
大きな声を上げながら男は喜んでいた。そして他の多くの者たちも、娘や孫、親族との再会を喜んでいた。魔族以外にも獣人やヒト族までも混ざっていることに驚く。アラルは同族であるヒト族ですら奴隷にしているのかと。
「皆さん、こちらへどうぞ。きちんとした水場がまだ用意できなくて……桶だけですが、温めてありますから。服もたくさん用意しました!」
自分たちが奴隷だった頃に着ていたようなボロ衣をくくっただけの服はあまりに心もとない。湯気が立ち昇る桶が配られ頭や手足を流す。枷が邪魔だと言いたそうに眉をしかめる者もいるが、それも間もなく外されるはずだ。ここで着替えるというわけにはいかないから、彼女たちをベネットが城内へ案内しようとした瞬間。
「……どうして」
「うん?」
ガンッ、と大きな音を立てて桶が石畳に打ち付けられる。ちょうど隣にいたジェイソンは、桶を落とした少女の顔を覗きこんでいた。
「どうしてあいつがいるの!! 私達はっ、あいつに売られたようなものよ!」
「なになに、どうしたの」
少女の指差す方向にはドレアスがいた。ジェイソンは「へぇっ!?」と素っ頓狂な声を出したが、視線に気付いたドレアスが振り向くとその影には気を失っている獣人の少女が座り込んでいる。なんだそっちか、と息をついたがそれはそれで大変だ、とジェイソンは隣の少女と獣人の少女を交互に見ていた。
「う……ん……ッ!!」
なかなか目を覚まさない少女を心配して、ドレアスはしばらく肩をゆすったりしたからか少女はようやく目を覚ました。そして少しぼんやりしたあと、自分を指差す少女を認識して表情を固くする。
「同じ奴隷なのに……っ、早く売り出すために買い手を斡旋したり、ずっと自分たちは奴隷だからって洗脳するみたいに言い聞かせたりして……!! どうやって商人に取り入ったか知らないけど……知りたくもないけど、あんたのせいで!!」
「奴隷になったのはマーのせいじゃありません!! マーだって両親を魔術師に殺されて、自分は奴隷にされて、全部無くしたのです!」
娼館にいた女性たちと、馬車で運ばれようとしていた少女たちはあまりに差があった。娼館に捕らわれていた女性たちは体も痩せこけ、傷が多すぎる。そして怯え方にも激しい差が見て取れた。手酷く扱われていたのだろうと察する。そしてそれは獣人の少女も同様で。あまりに細すぎる手足は骨と皮だけじゃないかと疑うほどに。
そしてこの少女はジェロシアの名前も、おそらく容貌も知っていた。両親を殺した魔術師というのはジェロシアなのだろう。
「買い手を斡旋したのは奴隷を殺すようなやつを調べて、まだマシそうなやつを選んだのに……っ、早く売り出されないとあの娼館のクソ商人にいたぶられて買われる前に死んでしまうからなのです! 奴隷になっても、ご飯と寝るところをもらえます……でも、死んだら今度こそ全部なくなるのです」
「一生奴隷で苦しむなら死んだ方がマシよ!」
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