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一章
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名古屋市中区栄町の繁華街。12月24日、今夜はクリスマスイブということで、多くのカップルが肩を寄せ合い、腕を組んだり繋いだり楽しそうに歩いていた。その風景を見ながら、中型ビルの1階にあるカフェバー『ゼア・イズ』では2人の女性が時々溜め息を吐きながらも夕食を楽しんでいた。1人は澤田優子で、東名医科大学付属病院の内科医として働き、愛知県警の刑事大神崇の妻であるので、正式には大神優子である。もう1人は糸川美紀で、4年制大学の法律学部を卒業後、弁護士を目指して朝比奈法律事務所でパラリーガルとして働いていた。
「何か2人でクリスマスイブを迎えるなんて寂しいよね。今日は朝比奈さんが居ると思って誘ったんだけど、お休みなんですね」
窓の外に映し出された風景を見ながら優子が呟いた。
「今は、ウイルスに対してのまん延防止法の為に、営業時間が制限されてしまったから、この店も仕方なく午後10時までの営業にしたそうです。それに伴って、他のアルバイトの子も中々シフトには入れなくなったから、自分が他のバイトをすることで助けてやってるんだなんて言ってましたけど、実際はどうなのか分かりません」
アイスコーヒーを、ストローで掻き回しながら答えた。
「でも、今日はクリスマスイブなんだから気を使ってくれても良いのにね」
優子も、同じようにアイスミルクティーを掻き回した。
「そんな気を使える人ではないと諦めています。でも、優子さんのご主人の方はお休みを取ったり、最悪でも仕事を早く切り上げることはできるんじゃないですか」
優子のご主人が部下を持つ管理職だと知っていて尋ねた。
「部下といっても2人しかいないし、今日も名古屋駅前の警備を依頼されて、帰りはきっと私が寝てからだと思うわ。そう言えば、同じ班の高橋刑事は、美紀さんのお父さんだったよね」
「今は一緒に住んでいないし、お父さんといっても、ずっと一緒に過ごしてきた訳じゃないし、お母さんの夫って感じだからね。でも、夫が刑事で、妻が医療関係者って、優子さんと何か似ていますね」
2組の夫婦を想像して比較していた。
「私も夜勤があったりして、会える時間が少ないの。ある程度想像していたんだけど、これが擦れ違い夫婦の現状なんだって実感しているわ」
ゆっくりとした夫婦の時間が取れたのは、いつだったのかと目を瞑って考えてみた。
「ご主人が勤めている、愛知県警広域特別捜査班と言うのは、実際にどんな仕事をされているのですか」
前から疑問に思っていたことを言葉にしてみた。
「詳しくは分からないけど、名目的には名古屋市内だけでなく、愛知県下で起こったあらゆる事件を捜査する部門となっているけど、捜査部の離れ小島と呼ばれていて、テレビドラマでの『相棒』の特命課みたいな感じだって言ってたわね」
そう言われていても、本当にそんな部署が存在するのか半信半疑だった。
「あっ、優作が変な事件を持ってくるから、仕事を増やしているのですね。朝比奈先生からも、釘を刺されているのに懲りないんだから」
憎たらしい顔が浮かんできた。
「でも、朝比奈さんが事件に首を突っ込んだから、美妃さんも助けられ付合うきっかけにもなったんでしょ。それにこうして私とも友達になれたんだからね」
「確かにそうだけど。そう言えば、優子さんと大神さんも事件で知り合ったんですよね」
「初めは、兄を殺害した犯人と疑ったりして、迷惑を掛けました」
「同じ事件絡みの出会いでも、相手は全然違いますよね。大神さんは、東大在学中に司法試験も受かった超エリートですよね。それに比べて優作は、今も定職に就かずバイトの掛け持ちなんですからね」
羨ましそうに優子の顔を見た。
「でも、イブの夜に会えないなんて、どうなのかな」
「ご主人は日本の治安を守る大事な仕事を担っている訳ですから。優作は何処で何をしているのか、連絡もつかないんですからね」
「そんな喧嘩や愚痴を言い合えるうちが華かもしれないよ。だって、どうしても合わないと感じたら、別れることもできるからね。あっ、そうだ、2人はいつ結婚するの」
「まだ全然。お母さんはせっついているみたいけど、優作は考えてもいないみたい。前の彼女のことを引きずっているんじゃないのかな」
淋しそうな表情で外を見た。
「あれは、朝比奈さんの優しさだった訳で、恋愛とは違うと思うわ。時が解決してくれるんじゃないかな」
慰める言葉で覆うことにした。
「優しさですか・・・・・でも、今のままでは無理ですね。あっ、そう言えば、昭和製薬の後継者の件はどうなりました。2人とも新宮司家には戻らないんですか」
美紀が話を変えた。
「一緒に暮らしてもいないのに、突然祖父や兄と言われても・・・・・・それに、私には実子でもないのに大切に育ててくれた父と母がいますし、崇さんとも結婚しています。それに、川瀬さんとはじっくりと話し合う時間がなくて、どうしたいかはっきりとは聞いていませんが、刑事を辞めてまでも昭和製薬の跡を次ぐことはないと思いますよ」
「確か、川瀬さんは広域特別捜査班、ご主人と一緒に働いていらっしゃるんですよね。余程、居心地がいいからじゃないのですか」
「どうでしょう。私が崇さんと結婚して義兄弟、それも上司が義弟になったんだから、お互いやりづらいんじゃないのかな」
「警察も組織で動いていますから大変ですね。でも、跡を継がなくても、相続権はありますよね。昭和製薬の社長となると遺産は数百億になるんでしょ。血の繋がった親族は優子さんと川瀬さんの2人しかいないのだから、2人で分け合うことになるんでしょ」
「そんな大金想像もつかないし、別に今の生活で不自由している訳ではないからね。でも、跡を継がなければ、遺言状で何処かに寄付ってこともあるんじゃないのかな」
「遺言状では最大でも遺産の半分までですので、全額を寄付することはできません。2人が相続放棄でもしない限り遺産は発生するんですよ」
「流石、将来有望な弁護士さんですね。でも、新宮司社長は病気もすっかり治って元気ですから、まだまだ先のことですよ」
入院中は優子が内科医として見守っていた。
「テレビドラマでは、遺産問題で揉めて殺人まで犯すってこともあるでしょ。数千万でも起こるのに、新宮司家は数百億なんだから、何が起こってもおかしくないですよ。相続する権利があるのは、本当に2人だけなんですか。他に隠し子が居たりしてしてね」
「まさか、相続する人間が居ないから、私たちを探し出そうとしたんですよ」
「そうですか。あっ、優子さんこれからどうします。愚痴酒と行きたいところですが、私も優子さんもお酒強くないですからね。デパ地下をぶらぶらしましょうか」
「そうね。付き合ってくれる相手がいないどうし、買い物も兼ねてぶらぶらしましょうか」
「クリスマスイブに、こんな素敵な奥様をほっといたバツです。いっぱい買い物をしても文句は言えないわね」
「よーし、今夜は買いまくるぞー。付き合ってね」
2人は精算を終えて『ゼア・イズ』を後にして、大名古屋ビルへと向かった。そしてしばらく歩いたところで『あなたの人生占ってもいいですか』と問い掛ける占いの館の看板が2人の目に入った。
「優子さん、1回3000円で、クレジット払いもできるようですよ。ちょっと寄ってみませんか」
美紀が先に声を出し、優子が頷いた。
「色々あるんですね」
建物の中に入ると、タロット占い・西洋占星術・姓名人相判断・手相など、いくつもの部屋に分かれていた。
「優子さん、どれにする」
壁に貼られたポスターを指差した。
「姓名判断は流石に変わったばかりだし、美紀さんも苗字が変わるかもしれないから、西洋占星術に占ってもらおうか」
年配の女性が柔和な表情で写っているポスターを見て答えた。
「ちょっと待ってください。一応、インターネットで調べてみます」
美紀は、スマホを取り出して占い師について調べ始めた。
「あっ、そのポスターの『サニー・優』って占い師が良く当たると有名みたですね。ただ、占う日が不特定と記載されています」
スマホの画面を優子に見せた。
「ちょっと確認してみようか」
2人は『サニー・優』と表示された部屋の前で立ち止まった。部屋中では、年配の男性が、占い師の最後の占い結果を聞いていた。
「色々とお話しましたが、ここまでのは他の占い師もするでしょう。当たるにしても当たらないにしても、悪いことは占いませんからね。でも、僕は自分が学んだことによって導き出した将来について、本人に告げることが占い師の義務と考えています。そうですね、あなたは近い将来、金銭か命に関わるトラブルに巻き込まれる可能性があると出ています。
まずは一度、病院で検査をしてもらってください」
そう伝え終えると、相手の男性は神妙な表情で立ち上がり、頭を下げると料金を支払って扉を開けて外へと出てきた。
「次の人どうぞ」
中からの掛け声に従って2人は部屋に入った。狭い個室は、一面黒い壁紙が貼られ、占ってもらう客側にはライトが当てられ明るくされていたが、占い師側は真っ暗な状態で異様な感じであった。それでも2人は用意されていた椅子に腰を下ろし、ボーラーハット、ミラーのサングラス、大きめのマスク、カッターにネクタイとスーツまで黒で統一した男性と対面することになった。
「サニー・優と言います。どちらのお客様から占いましょうか」
男性の言葉に2人が顔を見合わせた後、年上の優子が椅子をずらして占い師の前に座り直した。
「まずは両手を手の平を上にして見せていただいても良いですか」
優子は指示に従って両手を差し出すと、占い師は大き目のメモ用紙にボールペンで書き込んだ。
「分かりました。それでは、何も考えず自然に両方の手の平を組み合わせてください」
優子は目を瞑って組み合わせた。
「手相は科学的な占いと言われています。それは、感情や思考を司る大脳皮質と手が密接に繋がっている為で、手を見ることでその人の性格やその時の感情が、手に表れるからです。では、いざ手を見る時には、右手と左手のどちらを見るべきなのでしょう。西洋流手相では、『左手はもって生まれた手、右手はつくった手』と言われ、左手で才能や素質と言った先天的な素養を、右手で現在の運勢や未来の展望と言った後天的なものを見ることが多いです」。
「あの、見ていただく前に、サングラスでは見づらくはないですか」
入店時から感じていた疑問を投げ掛けた。
「ああっ、これはマジックミラーを使ったサングラスです。警察の取調室で使われているものと同じで、暗い場所からは反対にはっきりと見ることができるのです」
「黒ずくめの衣装にも意味があるのでしょうか」
「これは、当たるも八卦当たらぬも八卦の言葉通り、全て正しく占えるとは限りません。当館へクレームを言いに来るのは構いませんが、本名や顔をさらけ出して道端で突然襲われても困りますからね」
「そっ、そうなんですか」
少し緊張してきた。
「ああっ、話がずれましたが、手相家によって色々な鑑定法があります。私の場合は、今あなたが組み合わせた時の、親指の位置によって占う手を決めています。組んだ時に、親指が下になった手を『積極的な手』と呼び、反対に上になった方の手を『消極的な手』と言います。親指が下になった『積極的な手』の方が、手のシワ・線などの変化が現れやすいことが長年の研究から明らかにされています。この為、その人の性質や考え方などが変化として現れやすい手を『積極的な手』と表現しています」
「私は右利きだから右の親指が下になっているんではないんですか」
組んでいた手を解いて尋ねた。
「利き手と『積極的な手』は必ずしも同じではありませんが、人間の五感・行動が全て脳の働きで制御されているのを考えれば、手相の変化も大いに脳からの発信があるものと考えてもいいと思います。それでは本題ですが、何について占いましょうか」
もう一度、優子の『積極的な手』の右手を正面に差し出すように合図を送った。
「これからの生活について見ていただけますか」
少し悩んで答えを出した。
「それでは、まず過去に遡って見ていきましょう。そうですね、子供の頃から大学までは特に変化はなかったと思います。合理的な考えの持ち主で、コミュニケーション能力に長けていて、細かいところに手が届く温和で優しい性格。真面目な努力家で、人を助ける仕事に就く人が多い。ただ、感情に流されやすく、衝動的に行動を起こし失敗することも多い。つい最近、人生において変化が起こりましたね」
「あっ、はい、結婚しました」
病院という職柄、優子は結婚指輪はしていなかったのに、どうしてわかったのか不思議だった。
「家族についても、乱れがありますので、ちょっと複雑なんでしょう。それについても悩み事がこれから起こる可能性がありますが、財運線はしっかりしていますので、お金で困ることはないどころか、生涯裕福に過ごせるでしょう。それと、結婚線には乱れがありませんので、今のご主人と添い遂げることが出来ると思います」
「あの、具体的なことをお聞きしたいのですが、今は夫婦共働きなのですが、私は仕事を辞めて家庭に入った方がいいのでしょうか」
そんなことまでは手相では分からないとは思ったが、今の擦れ違いの生活を不安に感じ尋ねずにはいられなかった。
「そうですね・・・・・・どうでしょう、子供が出来た時に考えるとして、今はそれぞれの仕事を頑張ればいいと思います」
「わっ、分かりました。ありがとうございます」
お礼を言うと、美紀に場所を譲った。
「あなたのどんなことを占いましょう」
優子がしたことと同じ動作をしてから占い師が右手を近づけて尋ねた。
「しょっ、将来どんな家庭を持てるかを占ってください」
美紀も緊張していた。
「まず、性格と過去についてですが、知識欲が強く真面目な努力家、義理人情に厚く誠実で自分に正直な人。頑固なのに人の意見に左右されやすいタイプですね。あなたも、人を思いやる気持ちが強く、先程の人とは違う意味で人を助ける仕事に向いていますね。家庭環境については、少し乱れがありますので両親が揃っていなかった可能性が高いですが、最近変化があって穏やかには過ごせているのではないですか」
美紀の表情を伺っているようであった。
「大体は当たっています。あの、優子さんが先程占っていただいたように、結婚について教えてください」
優子さんの顔をチラッと見た。
「現在付き合っている方はいらっしゃるのですか」
「あっ、はい。ただ、優柔不断で、変にうんちくを語りだし、他人の意見を全く効かない人間なんです。変わったところが多くて、それが原因で友人は少なく、1つのことに熱中すると周りが見えなくなって、皆に迷惑を掛けっぱなしなんです」
悪いことは次から次へと頭に浮かんできた。
「良いところは無いんですか」
「良いところね・・・・・・・ただ、ある事件で助けてもらって、付き合うようになったのです」
「良いところは無くてもその恩を感じて仕方なくズルズルと付き合ってきたのですか」
「確かに、彼がいなければ今の私はない訳ですから、感謝は感じています。でもそれだけじゃないのに、その気持ちは彼には届いていないみたいで・・・・・・この後、どう接していけばいいのか分からなくて」
「どうでしょう。その気持ちは、心配しなくても伝わると思います」
「本当ですか」
「信じるも信じないもあなた次第ですが、僕の占いは意外と当たるとの評判です」
「ありがとうございました」
2人はお礼を言って占いの館を後にした。
「美紀ちゃんどう思った?」
建物を出たところで優子が頭を傾げながら言葉を発した。
「手相だけで、本当に性格や過去の人生まで分かってしまうのでしょうか。合ってただけに、何だか気持ち悪いですね」
占い師の言葉を思い出して身震いをした。
「私も、途中から怖くなったわ。でも、参考程度にしておきましょう」
頭を振って歩き出した。
「優子さん、どうかしたのですか。やっぱり、占いのことが気になるのですか」
占いの館から出てからの優子の様子の違いに違和感を抱いていた。
「あっ、占いについても少しは気にはなるけど、私たちの前に占ってもらっていたお客さんが居たでしょ」
「なにか深刻な表情で出てきた年配の男性のこと」
メガネを掛け強面で背広姿の背の高いの男性の姿を思い出していた。
「その男性、どこかで会った気がするのよ。擦れ違いだったけど、何か怯えていたような感じがしたものだから」
優子もその時の様子を頭に呼び戻した。
「患者さんとかその家族じゃないですか。優子さんは、たくさんの人に関わっているんですもの」
「いえ、今の病院に勤めてそんなに期間も立っていなし内科ですから、患者さんとは長く付き合う場合が多いので、一応顔と名前は覚えているつもりなんだけど」
思い出そうとしたが思い浮かばず頭を捻った。
「何か、あの占い師に良くないことでも言われたのかもしれないね。ズバズバとはっきり言う占い師だったから」
今度は黒ずくめの占い師の口調が気になってきた。
「そうかもね」
「優子さんしんみりしないで、それよりショッピング楽しみましょう。今日はイブなんですから」
「行きましょうか」
思いを吹っ切って急ぎ足となった。
「何か2人でクリスマスイブを迎えるなんて寂しいよね。今日は朝比奈さんが居ると思って誘ったんだけど、お休みなんですね」
窓の外に映し出された風景を見ながら優子が呟いた。
「今は、ウイルスに対してのまん延防止法の為に、営業時間が制限されてしまったから、この店も仕方なく午後10時までの営業にしたそうです。それに伴って、他のアルバイトの子も中々シフトには入れなくなったから、自分が他のバイトをすることで助けてやってるんだなんて言ってましたけど、実際はどうなのか分かりません」
アイスコーヒーを、ストローで掻き回しながら答えた。
「でも、今日はクリスマスイブなんだから気を使ってくれても良いのにね」
優子も、同じようにアイスミルクティーを掻き回した。
「そんな気を使える人ではないと諦めています。でも、優子さんのご主人の方はお休みを取ったり、最悪でも仕事を早く切り上げることはできるんじゃないですか」
優子のご主人が部下を持つ管理職だと知っていて尋ねた。
「部下といっても2人しかいないし、今日も名古屋駅前の警備を依頼されて、帰りはきっと私が寝てからだと思うわ。そう言えば、同じ班の高橋刑事は、美紀さんのお父さんだったよね」
「今は一緒に住んでいないし、お父さんといっても、ずっと一緒に過ごしてきた訳じゃないし、お母さんの夫って感じだからね。でも、夫が刑事で、妻が医療関係者って、優子さんと何か似ていますね」
2組の夫婦を想像して比較していた。
「私も夜勤があったりして、会える時間が少ないの。ある程度想像していたんだけど、これが擦れ違い夫婦の現状なんだって実感しているわ」
ゆっくりとした夫婦の時間が取れたのは、いつだったのかと目を瞑って考えてみた。
「ご主人が勤めている、愛知県警広域特別捜査班と言うのは、実際にどんな仕事をされているのですか」
前から疑問に思っていたことを言葉にしてみた。
「詳しくは分からないけど、名目的には名古屋市内だけでなく、愛知県下で起こったあらゆる事件を捜査する部門となっているけど、捜査部の離れ小島と呼ばれていて、テレビドラマでの『相棒』の特命課みたいな感じだって言ってたわね」
そう言われていても、本当にそんな部署が存在するのか半信半疑だった。
「あっ、優作が変な事件を持ってくるから、仕事を増やしているのですね。朝比奈先生からも、釘を刺されているのに懲りないんだから」
憎たらしい顔が浮かんできた。
「でも、朝比奈さんが事件に首を突っ込んだから、美妃さんも助けられ付合うきっかけにもなったんでしょ。それにこうして私とも友達になれたんだからね」
「確かにそうだけど。そう言えば、優子さんと大神さんも事件で知り合ったんですよね」
「初めは、兄を殺害した犯人と疑ったりして、迷惑を掛けました」
「同じ事件絡みの出会いでも、相手は全然違いますよね。大神さんは、東大在学中に司法試験も受かった超エリートですよね。それに比べて優作は、今も定職に就かずバイトの掛け持ちなんですからね」
羨ましそうに優子の顔を見た。
「でも、イブの夜に会えないなんて、どうなのかな」
「ご主人は日本の治安を守る大事な仕事を担っている訳ですから。優作は何処で何をしているのか、連絡もつかないんですからね」
「そんな喧嘩や愚痴を言い合えるうちが華かもしれないよ。だって、どうしても合わないと感じたら、別れることもできるからね。あっ、そうだ、2人はいつ結婚するの」
「まだ全然。お母さんはせっついているみたいけど、優作は考えてもいないみたい。前の彼女のことを引きずっているんじゃないのかな」
淋しそうな表情で外を見た。
「あれは、朝比奈さんの優しさだった訳で、恋愛とは違うと思うわ。時が解決してくれるんじゃないかな」
慰める言葉で覆うことにした。
「優しさですか・・・・・でも、今のままでは無理ですね。あっ、そう言えば、昭和製薬の後継者の件はどうなりました。2人とも新宮司家には戻らないんですか」
美紀が話を変えた。
「一緒に暮らしてもいないのに、突然祖父や兄と言われても・・・・・・それに、私には実子でもないのに大切に育ててくれた父と母がいますし、崇さんとも結婚しています。それに、川瀬さんとはじっくりと話し合う時間がなくて、どうしたいかはっきりとは聞いていませんが、刑事を辞めてまでも昭和製薬の跡を次ぐことはないと思いますよ」
「確か、川瀬さんは広域特別捜査班、ご主人と一緒に働いていらっしゃるんですよね。余程、居心地がいいからじゃないのですか」
「どうでしょう。私が崇さんと結婚して義兄弟、それも上司が義弟になったんだから、お互いやりづらいんじゃないのかな」
「警察も組織で動いていますから大変ですね。でも、跡を継がなくても、相続権はありますよね。昭和製薬の社長となると遺産は数百億になるんでしょ。血の繋がった親族は優子さんと川瀬さんの2人しかいないのだから、2人で分け合うことになるんでしょ」
「そんな大金想像もつかないし、別に今の生活で不自由している訳ではないからね。でも、跡を継がなければ、遺言状で何処かに寄付ってこともあるんじゃないのかな」
「遺言状では最大でも遺産の半分までですので、全額を寄付することはできません。2人が相続放棄でもしない限り遺産は発生するんですよ」
「流石、将来有望な弁護士さんですね。でも、新宮司社長は病気もすっかり治って元気ですから、まだまだ先のことですよ」
入院中は優子が内科医として見守っていた。
「テレビドラマでは、遺産問題で揉めて殺人まで犯すってこともあるでしょ。数千万でも起こるのに、新宮司家は数百億なんだから、何が起こってもおかしくないですよ。相続する権利があるのは、本当に2人だけなんですか。他に隠し子が居たりしてしてね」
「まさか、相続する人間が居ないから、私たちを探し出そうとしたんですよ」
「そうですか。あっ、優子さんこれからどうします。愚痴酒と行きたいところですが、私も優子さんもお酒強くないですからね。デパ地下をぶらぶらしましょうか」
「そうね。付き合ってくれる相手がいないどうし、買い物も兼ねてぶらぶらしましょうか」
「クリスマスイブに、こんな素敵な奥様をほっといたバツです。いっぱい買い物をしても文句は言えないわね」
「よーし、今夜は買いまくるぞー。付き合ってね」
2人は精算を終えて『ゼア・イズ』を後にして、大名古屋ビルへと向かった。そしてしばらく歩いたところで『あなたの人生占ってもいいですか』と問い掛ける占いの館の看板が2人の目に入った。
「優子さん、1回3000円で、クレジット払いもできるようですよ。ちょっと寄ってみませんか」
美紀が先に声を出し、優子が頷いた。
「色々あるんですね」
建物の中に入ると、タロット占い・西洋占星術・姓名人相判断・手相など、いくつもの部屋に分かれていた。
「優子さん、どれにする」
壁に貼られたポスターを指差した。
「姓名判断は流石に変わったばかりだし、美紀さんも苗字が変わるかもしれないから、西洋占星術に占ってもらおうか」
年配の女性が柔和な表情で写っているポスターを見て答えた。
「ちょっと待ってください。一応、インターネットで調べてみます」
美紀は、スマホを取り出して占い師について調べ始めた。
「あっ、そのポスターの『サニー・優』って占い師が良く当たると有名みたですね。ただ、占う日が不特定と記載されています」
スマホの画面を優子に見せた。
「ちょっと確認してみようか」
2人は『サニー・優』と表示された部屋の前で立ち止まった。部屋中では、年配の男性が、占い師の最後の占い結果を聞いていた。
「色々とお話しましたが、ここまでのは他の占い師もするでしょう。当たるにしても当たらないにしても、悪いことは占いませんからね。でも、僕は自分が学んだことによって導き出した将来について、本人に告げることが占い師の義務と考えています。そうですね、あなたは近い将来、金銭か命に関わるトラブルに巻き込まれる可能性があると出ています。
まずは一度、病院で検査をしてもらってください」
そう伝え終えると、相手の男性は神妙な表情で立ち上がり、頭を下げると料金を支払って扉を開けて外へと出てきた。
「次の人どうぞ」
中からの掛け声に従って2人は部屋に入った。狭い個室は、一面黒い壁紙が貼られ、占ってもらう客側にはライトが当てられ明るくされていたが、占い師側は真っ暗な状態で異様な感じであった。それでも2人は用意されていた椅子に腰を下ろし、ボーラーハット、ミラーのサングラス、大きめのマスク、カッターにネクタイとスーツまで黒で統一した男性と対面することになった。
「サニー・優と言います。どちらのお客様から占いましょうか」
男性の言葉に2人が顔を見合わせた後、年上の優子が椅子をずらして占い師の前に座り直した。
「まずは両手を手の平を上にして見せていただいても良いですか」
優子は指示に従って両手を差し出すと、占い師は大き目のメモ用紙にボールペンで書き込んだ。
「分かりました。それでは、何も考えず自然に両方の手の平を組み合わせてください」
優子は目を瞑って組み合わせた。
「手相は科学的な占いと言われています。それは、感情や思考を司る大脳皮質と手が密接に繋がっている為で、手を見ることでその人の性格やその時の感情が、手に表れるからです。では、いざ手を見る時には、右手と左手のどちらを見るべきなのでしょう。西洋流手相では、『左手はもって生まれた手、右手はつくった手』と言われ、左手で才能や素質と言った先天的な素養を、右手で現在の運勢や未来の展望と言った後天的なものを見ることが多いです」。
「あの、見ていただく前に、サングラスでは見づらくはないですか」
入店時から感じていた疑問を投げ掛けた。
「ああっ、これはマジックミラーを使ったサングラスです。警察の取調室で使われているものと同じで、暗い場所からは反対にはっきりと見ることができるのです」
「黒ずくめの衣装にも意味があるのでしょうか」
「これは、当たるも八卦当たらぬも八卦の言葉通り、全て正しく占えるとは限りません。当館へクレームを言いに来るのは構いませんが、本名や顔をさらけ出して道端で突然襲われても困りますからね」
「そっ、そうなんですか」
少し緊張してきた。
「ああっ、話がずれましたが、手相家によって色々な鑑定法があります。私の場合は、今あなたが組み合わせた時の、親指の位置によって占う手を決めています。組んだ時に、親指が下になった手を『積極的な手』と呼び、反対に上になった方の手を『消極的な手』と言います。親指が下になった『積極的な手』の方が、手のシワ・線などの変化が現れやすいことが長年の研究から明らかにされています。この為、その人の性質や考え方などが変化として現れやすい手を『積極的な手』と表現しています」
「私は右利きだから右の親指が下になっているんではないんですか」
組んでいた手を解いて尋ねた。
「利き手と『積極的な手』は必ずしも同じではありませんが、人間の五感・行動が全て脳の働きで制御されているのを考えれば、手相の変化も大いに脳からの発信があるものと考えてもいいと思います。それでは本題ですが、何について占いましょうか」
もう一度、優子の『積極的な手』の右手を正面に差し出すように合図を送った。
「これからの生活について見ていただけますか」
少し悩んで答えを出した。
「それでは、まず過去に遡って見ていきましょう。そうですね、子供の頃から大学までは特に変化はなかったと思います。合理的な考えの持ち主で、コミュニケーション能力に長けていて、細かいところに手が届く温和で優しい性格。真面目な努力家で、人を助ける仕事に就く人が多い。ただ、感情に流されやすく、衝動的に行動を起こし失敗することも多い。つい最近、人生において変化が起こりましたね」
「あっ、はい、結婚しました」
病院という職柄、優子は結婚指輪はしていなかったのに、どうしてわかったのか不思議だった。
「家族についても、乱れがありますので、ちょっと複雑なんでしょう。それについても悩み事がこれから起こる可能性がありますが、財運線はしっかりしていますので、お金で困ることはないどころか、生涯裕福に過ごせるでしょう。それと、結婚線には乱れがありませんので、今のご主人と添い遂げることが出来ると思います」
「あの、具体的なことをお聞きしたいのですが、今は夫婦共働きなのですが、私は仕事を辞めて家庭に入った方がいいのでしょうか」
そんなことまでは手相では分からないとは思ったが、今の擦れ違いの生活を不安に感じ尋ねずにはいられなかった。
「そうですね・・・・・・どうでしょう、子供が出来た時に考えるとして、今はそれぞれの仕事を頑張ればいいと思います」
「わっ、分かりました。ありがとうございます」
お礼を言うと、美紀に場所を譲った。
「あなたのどんなことを占いましょう」
優子がしたことと同じ動作をしてから占い師が右手を近づけて尋ねた。
「しょっ、将来どんな家庭を持てるかを占ってください」
美紀も緊張していた。
「まず、性格と過去についてですが、知識欲が強く真面目な努力家、義理人情に厚く誠実で自分に正直な人。頑固なのに人の意見に左右されやすいタイプですね。あなたも、人を思いやる気持ちが強く、先程の人とは違う意味で人を助ける仕事に向いていますね。家庭環境については、少し乱れがありますので両親が揃っていなかった可能性が高いですが、最近変化があって穏やかには過ごせているのではないですか」
美紀の表情を伺っているようであった。
「大体は当たっています。あの、優子さんが先程占っていただいたように、結婚について教えてください」
優子さんの顔をチラッと見た。
「現在付き合っている方はいらっしゃるのですか」
「あっ、はい。ただ、優柔不断で、変にうんちくを語りだし、他人の意見を全く効かない人間なんです。変わったところが多くて、それが原因で友人は少なく、1つのことに熱中すると周りが見えなくなって、皆に迷惑を掛けっぱなしなんです」
悪いことは次から次へと頭に浮かんできた。
「良いところは無いんですか」
「良いところね・・・・・・・ただ、ある事件で助けてもらって、付き合うようになったのです」
「良いところは無くてもその恩を感じて仕方なくズルズルと付き合ってきたのですか」
「確かに、彼がいなければ今の私はない訳ですから、感謝は感じています。でもそれだけじゃないのに、その気持ちは彼には届いていないみたいで・・・・・・この後、どう接していけばいいのか分からなくて」
「どうでしょう。その気持ちは、心配しなくても伝わると思います」
「本当ですか」
「信じるも信じないもあなた次第ですが、僕の占いは意外と当たるとの評判です」
「ありがとうございました」
2人はお礼を言って占いの館を後にした。
「美紀ちゃんどう思った?」
建物を出たところで優子が頭を傾げながら言葉を発した。
「手相だけで、本当に性格や過去の人生まで分かってしまうのでしょうか。合ってただけに、何だか気持ち悪いですね」
占い師の言葉を思い出して身震いをした。
「私も、途中から怖くなったわ。でも、参考程度にしておきましょう」
頭を振って歩き出した。
「優子さん、どうかしたのですか。やっぱり、占いのことが気になるのですか」
占いの館から出てからの優子の様子の違いに違和感を抱いていた。
「あっ、占いについても少しは気にはなるけど、私たちの前に占ってもらっていたお客さんが居たでしょ」
「なにか深刻な表情で出てきた年配の男性のこと」
メガネを掛け強面で背広姿の背の高いの男性の姿を思い出していた。
「その男性、どこかで会った気がするのよ。擦れ違いだったけど、何か怯えていたような感じがしたものだから」
優子もその時の様子を頭に呼び戻した。
「患者さんとかその家族じゃないですか。優子さんは、たくさんの人に関わっているんですもの」
「いえ、今の病院に勤めてそんなに期間も立っていなし内科ですから、患者さんとは長く付き合う場合が多いので、一応顔と名前は覚えているつもりなんだけど」
思い出そうとしたが思い浮かばず頭を捻った。
「何か、あの占い師に良くないことでも言われたのかもしれないね。ズバズバとはっきり言う占い師だったから」
今度は黒ずくめの占い師の口調が気になってきた。
「そうかもね」
「優子さんしんみりしないで、それよりショッピング楽しみましょう。今日はイブなんですから」
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弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
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