2つの糸

碧 春海

文字の大きさ
16 / 18

十五章

しおりを挟む
 「あっ、そうだ、今回のお礼に昼食を奢るよ。実は、寝坊して珍しく姉さんが作ってくれた朝食を食べ損ねてお腹がペコペコなんだ」
 車のハンドルを握って直ぐに良い店が頭に浮かんだ。
「どれくらいのお礼なのか期待させていただきます」
 友紀か笑顔で答えた後、朝比奈が向かったのは、そのクリニックからそんなに離れてはいない、朝比奈が卒業したA大学の近くにある『車屋』というレストランで昼食をとることにした。
「レストランで屋号が『車屋』なんて珍しいですね」
 レストランというよりは食堂と言った方が似合っている店の入口にあった大きな看板を見て友紀が驚いていた。
「店主のおじさんが車が大好きで名付けたそうです。大学も近くにあって、学生に大人気の安くて美味しいお店なんですよ」
 自慢気に扉を開けた。
「そうなんだ」
 期待していた友紀は当てが外れて不満気であった。そんな友紀を連れていつもの座っていた席に腰を下ろした。
「あれ、朝比奈君じゃないの、久しぶりじゃない」
 注文を取りに来た年配の女性が、朝比奈の顔に気がついた。
「卒業して1度はきましたが、3年ぶりですかね」
 一応メニューを開いた。
「まぁ、こんな素敵なお嬢さんとデートならこんな食堂じゃなくて、もっと豪華なレストランでフランス料理でもご馳走してもらわなきゃね」
「あっ、はい」
 友紀は曖昧な返事をした。
「おばさん、誤解ですよ。彼女は恋人なんかじゃないですよ」
 朝比奈は慌てて否定した。
「別に照れなくてもいいじゃない。このチャンスに恋人になっちゃえばね」
 友紀に同意を求めたがどう答えたらいいのか困惑していた。
「勘弁してくださいよ。注文いいですか」
 その様子を見て話を外らそうとした。
「そう言えば、朝比奈君は大学の在学中には、とうとう彼女を連れては来なかったわね。性格は良いんだけど、何故か女性には分かってもらえないみたいだね。まぁ、変なところもいっぱいあって皆んな変人扱いしてたからなぁ」
「ちょっとおばさん、今言うことじゃないよね」
 友紀の視線が気になった。
「朝比奈君に言われるとは思わなかったわ。でもね、朝比奈君は本当に良い子だから彼女になっちゃいなさい。私が保証するから」
 2人の会話に友紀は入ることができなかった。
「おばさん、注文いいかな」
 朝比奈は話を変えようと必死になった。
「はいはい、何にされますか」
 おばさんは伝票を手に話したいのに仕方なく注文を聞くことにした。
「一緒で良いよね」
 朝比奈の言葉に友紀は頷いた。
「それでは、車屋弁当のスペシャルを2つください」
 朝比奈はメニューを見ないで注文した。
「はい、車屋弁当のスペシャルにサーロインステーキセットですね」
 納得して頷いた。
「おばさん、サーロインステーキセットは頼んでませんよ」
 朝比奈は慌てて否定すると、おばさんは舌を出して笑い、その情景に友紀は笑いを堪えていた。
「それは申し訳ありませんでした。車屋弁当のスペシャルをお2つですね。しばらくお待ちください」
 そう言って厨房へと戻っていった。
「おばさん、本当変わってないな」
 朝比奈は溜息を吐いて顔を左右に振った。
「あの、スペシャルどころか、車屋弁当っていうメニューもありませんよ」
 友紀はどんな料理なのか確認しようとメニューを捲ってみたが何処にもそんな品物は存在しなかった。
「大丈夫ですよ。お得意さんの為だけの、特別メニューなんですから。でも流石にスペシャルってのは無かったんですけどね。どんなものが出てくるのか楽しみです」
 友紀が開いて見ていたメニューを閉じて元の位置に戻した。
「何度も聞こうと思っていたのですが、朝比奈さんには本当に付き合っている人は居ないのですか」
 先程のおばさんの言葉が気になっていた。
「付き合うという定義がよく分かりませんが、こうして女性とずっと一緒に居るのは姉以外では生まれて初めてかもしれません。高校時代はラグビーに必死でしたし、大学ではアルバイトをしながら免許や資格を取るのに夢中で、デートをする時間なんて無かったって皆んなには言い訳したけれど、姉に言わせると性格的に問題があるそうです」
 余り深く追求されないように、水を手にして店内を眺めた。
「でもバレンタインデーの日にチョコレートをもらったことはないのですか。高校の時はあったでしょ」
 朝比奈の意外な言葉に質問を続けた。
「高校かぁ。悪友の大神って奴は毎年沢山もらってたけど・・・・・・あっ、そう言えば、3年の時部活のロッカーにチョコレートが入っていたことがあったな。でも、手紙なんかも入っていなかったし、義理チョコかなって余り気にしなかったけど」
 左の顳かみを叩いた。
「そのチョコレートはピンクの箱に入ってなかった?」
「えっ、どうして知ってるの」
 言い当てたことに驚いた。
「それはお姉ちゃんの手作りのチョコレートだったと思いますよ。いくら手紙がなくても、部活のロッカーにチョコレートを入れられる人物は限られるでしょう。普通は、誰なのか気付くし、チョコレートだけで気付いて欲しいと思う女心が分からないのですか。本当にもう、大丈夫なんですか」
 こんなことが分からない人が、本当に犯人に辿り着けるのか不安になってきた。
「あの、女心と事件の推理は違いますよ。でも、緑川クリニックの先生が話してくれたように、もし仮に僕が友美さんの気持ちに気付いて、付き合っていればこんな悲惨な事件は起きなかったと思うと、申し訳ないです」
 神妙な顔で答えた。
「それは朝比奈さんの責任ではありませんよ。勝手にフラれたと思って、諦めてしまったのですから」
「その話を聞いて、尚更この事件を解決しなければと思いました」
「でも、犯人を限定する決定的な証拠は無いんですよね」
「その証拠をこれから見付に行くんですよ。ちょっと不謹慎かもしれませんが、『面白くなってきたんじゃない』って感じですよ」
 役になりきって言い放った。
「えっ、そうなんですか」
 ちょっと引き気味に答えた。
「先ずは、腹が減っては戦ができぬと言いますから」
 2つの弁当を持って現れたおばさんは、それぞれの前に大きな弁当箱を置くと今度は無言で戻っていった。
「それではいただきましょうか」
 朝比奈は友紀が蓋を開けるのを少し待っていた。
「えっ、これは確かにスペシャルですね」
 感動する友紀の先には、エビフライ・ヒレカツ・若鶏の唐揚げ・白身のフライ・ロースハムのチーズ巻き・ハンバーグ・ナポリタンスパゲッティ・半熟卵、大盛りご飯の上にはうなぎの蒲焼の切り身がこれでもかとばかりに載っていた。
「学生の頃はここまで豪華じゃなかったよ。今日は特別に気を使ってくれたんだろうね」
 朝比奈が厨房の方を見ると、おばさんが右手の親指を突き上げて微笑んだ。その後は、2人とも弁当を食べることに集中し、おばさんとおじさんにお礼を告げて店を出ることになった。
「事件のこともあって、お父さんのことを沖田刑事に調べてもらったのですが、上司の話では会社での評判はとても良くて、他人に親切で思いやりがあり良く働く人だったそうです。他の社員にも聞いてみたそうですが、人物像に関して同じような意見で、とてもそんな事件を起こすような人物ではないと言っていたそうです。今僕がこうして捜査し犯人を探し出したところで、お父さんやお姉さんの命を取り戻すことはできませんが。でも、お父さんの名誉を傷付け、お姉さんの幸せを奪った犯人が僕は憎い。2人の供養の為にも絶対に犯人に罰を与えてやります」
 助手席で友紀は小さく頷いたが、事件の専門家である警察でさえ犯人に惑わされて、父を犯人と断定している現状で、本当に朝比奈が真犯人に辿り付けるのかは半信半疑であった。
「あっ、友紀さんは、そんな偉そうなことを言っても、ど素人の僕が見付け出せる訳ないって思ってるでしょ。でもね、ど素人だからこそ前例や慣習に囚われて勝手に決めつけたりすることはないし、他の会社などと同じ、いやそれ以上に縦社会の構造が確立されていて、上司の命令は絶対に逆らえないし、外部からの圧力も掛かることもない自由な環境ですからね」
 信号で止まった時に朝比奈は横目で困惑する友紀の表情を見た。
「あの、今から何処へ行くのですか」
 悟られないように話を摩り替えた。
「先程訪れた緑川クリニックで院長先生の話を聞いて、犯人の動機も何となく分かりました。後は決定的な証拠を集める必要があるのです。今からそれを見付に行くんですよ」
 嬉しそうに微笑むと、広々とした高級住宅が目に入ってきて、その住宅地の中で敷地面積が最も広い一軒家の駐車場のシルバーメタルのベンツの隣に車を止めた。
「どちら様でしょう」
 車を降りて早速インターフォンを押すと、女性の声が聞こえてきた。
「今日、お約束をしています、朝比奈と申します」
 インターフォンに顔を近づけて答えた。
「はい、承っております。どうぞ中にお入りください」
 そう言うと、門が自動的に開いた。2人は少し緊張して豪邸の中へと進むと、エプロンを付けた家政婦と思われる女性が玄関の扉を開け、リビングまで案内してくれた。
「朝比奈優作です。本日は父親の代理として伺わせていただきました」
 朝比奈は橋下潤一国交副大臣に向かって頭を下げた。
「まぁ、どうぞ、お父上から直接お電話いただき、息子のあなたと会うようにお願いはされましたが、その内容までは伺ってはいないのですよ。一体どのような要件で訪問されたのでしょうか」
 席を勧め家政婦がお茶を置いて立ち去った後で口を開いた。
「橋下先生は、名古屋ニューグランドホテルで行われた、国友・内田家の結婚披露宴に招待されていらっしゃいますので、新婦の殺害事件のことは勿論ご存じですよね」
 早速本題を提示した。
「ああっ、結婚式には呼ばれてたが、披露宴は顔を出す程度で直ぐに帰ったからね。事件のことは、後でマスコミの報道で知って驚いたんだよ」
 警戒しながら朝比奈の表情を見ていた。
「始め警察は、披露宴を終えたばかりの新婦を、その父親が殺害して後日自殺したと考えていました。しかし、その自殺は偽装で、犯人が別に居ると改めて捜査を開始しました」
 朝比奈も橋下の表情の変化を探っていた。
「そうだったんですか。しかし、それが私にどの様な関係があるといわれるのですかね。私が事件に関与しているなんて疑われているのではないですよね」
 呆れ顔で答えた。
「まさか、滅相もない。私が捜査した結果に因りますと、どうも犯人は残念なことではありますが、新郎であった国友鉄男に間違いないようです。事件後は一応警察は関係者として話を聞こうとしたようですが、何処かに身を潜めているのか今のところ所在がはっきりしないのです。ひょっとすると、既に海外に逃亡したかもしれませんね」
 朝比奈の言葉に友紀は目を丸くして驚いていた。
「えっ、それは本当のことなのか」
 橋本も流石に驚いていた。
「はい、私の捜査情報と、父の命令で極秘に動いていた検察官の情報を照らし合わせたもので、間違いないと思います。まぁ、居所が発見されず、事件も犯人不逮捕のまま未解決になればいいのですが、何しろ愛知グループ総帥のお孫さんという情報がマスコミなどに漏れると、それは大変な事になります。そのことに父が大変心配しておりまして、できれば有耶無耶にできないものかと、橋下先生にお願いできないかと頼まれたのです。父も努力はしたようなのですが、検察庁からだけでは無理だったようなのです」
 朝比奈の説明に友紀は、事件をもみ消そうとしていることを知り、何か裏切られたようで肩を落とした。
「ちょっと質問させて頂いてもいいかな。私がどうしてそのようなお願いを警察に依頼しなければならないのかね」
 暫く目を閉じて考えてから言葉に出した。
「今は大丈夫でしょうが、橋下先生の息子さんの徹也さん、私の高校時代の同級生なのですが、どうもご縁があって愛知グループの総帥のお孫さん、確か国友沙織さんと婚約が済んでご結婚されるという情報もあります。そうなれば逆玉の輿、愛知グループの何処かの部門の社長は間違いない。鉄男が居なければひょっとすると実力次第ではグループのトップだって夢ではない。しかし、そんな時に、お孫さんである鉄男が殺人犯としてマスコミなどで報道されたら、結婚どころではなくなると思います」
 薄気味悪い笑い顔を作った。
「確かにそれは・・・・・ちょっともう少し事件について説明してくれないか。それでないと、軽々しく判断ができる案件ではないと思いますから」
 いくら検察庁のナンバー3の提案だとしても、リスクマネージメントを考えれば安易に受けることはできなかった。
「そうですね。そもそも、私がこの事件に関与したのは、橋下先生も色々と情報を集められてご存知だとは思いますが、事件後警察に真っ先に連行された人物が居まして、正にその人物こそが私だったのです。実は、殺害された友美さんとは高校卒業後もずっと付き合っていまして、だけど友美さん、いや友美は鉄男と結婚するから別れてほしいと告げられました。まぁ、相手は愛知グループの跡継ぎで有り玉の輿ですから、初めは私も長い付き合いでしたので渋りましたが、比べるものもなく敵う相手ではありませんので、結局は彼女の幸せを考え泣く泣く別れることになりました。でも、同級生に彼女を奪われるという悔しさもあり、手切れ金と口止め料として多額のお金を要求しました。そして、そのお金の受け渡し日も、昨年のクリスマスイブの日に敢えて指定し、鉄男と会う前に受け取る予定にしていました。しかし、運悪くその現場を早く訪れた鉄男に見られていたようで、2人の関係を疑うことになり色々調べて、二股交際の事実を知ってしまったのだと思います。普通のカップルであれば、婚約破棄で慰謝料を請求するとは思いますが、愛知グループの婚姻とすればそんなに簡単にはいかなかった。あの日、美容室からこっそり抜け出した彼女の姿を見た鉄男は、私とこっそり会うのだと察してあとを付けた。そして、彼女が見知らぬ男と会うところ見て、このチャンスを利用することを考えて、彼女を殺害して先ずはその男を犯人に仕立てることを考えた。その後、その男が彼女の父親だと知った鉄男は、一旦は父親を自殺と見せ掛けて殺害したのですが、その自殺が見破られると身を隠さざるを得なくなったのでしょう」
 左の顳かみを叩きながら、ドラマの台本を読んでいるようにスラスラと語った。
「そうか、良く分かりました。それで、捜査を終えた君とお父様は、私達や愛知グループ一家のことを案じて、私のところにこうして来てくださったという訳ですね。ところで、今の詳しい捜査内容を既に警察は掴んでいるのかね」
 探りを入れてきた。
「今のところは父親と、その命を受けて捜査した検察官と私、それと彼女に橋下先生だけです。ですから、事件の真相を知られる前に、警察へ橋下先生からお話いただければ、ご両家に傷が付かなくて済むのではないかと思っています」
 朝比奈が次々と語る話は、今までの話しとは全く違う内容で友紀はどうなっているのか全く理解できないでいた。
「それで、どの様な条件を呑めばその捜査内容を忘れていただけるのでしょうか」
 人気銀行員ドラマの専務のような表情で答えた。
「話が早いですね。1つは父親の後ろ盾になっていただきたいということと、もう一つはわたし達にはこれ程はいただかないと」
 朝比奈は右手の指を使って大きく広げた。
「5千万円ですか。まぁ、妥当なところでしょう。分かりました、用意しましょう。ただし、振込ではなく、現金でお渡ししますので取りに来ていただきますか」
 朝比奈は5百万円のつもりで出したが、桁の違いに流石に驚いたが冷静に応対して頷いて見せた。
「それでは明日、同じ時間にもう一度伺いますので、その時までに用意していただけますか。その時に、息子の徹也さんにも同席していただきたいのですよ。先日、ホテルで会ったのですが、正式にお祝いの言葉を述べたいものですからね」
 負けないくらいの悪顔で答えた。
「分かった、呼んでおこう。それでは、お父さんにもよろしくお伝えください」
 納得して立ち上がり出口の扉を右手で示した。
「あっ、それからもう1つ、披露宴の引き出物でとても素敵なペアのビアグラスをいただいたのですが、内の家族は3人ともビールが大好きで、取り合いになってしまうのです。できれば1つお譲りいただけないでしょうか」
 朝比奈も立ち上がってキッチンの方に向かった。
「その棚に置いたんじゃないか。よければ、2つ共持って行って構わんよ」
 橋下はキッチンにの棚に置かれていたグラスを取り出して朝比奈に手渡した。
「ありがとうございます。それでは、明日を楽しみにしています」
 グラスを手に朝比奈は頭を下げ、友紀と一緒に屋敷を出た。友紀は朝比奈の変貌に怖さを感じ、家に戻るまで声を掛けることができなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その人事には理由がある

凪子
ミステリー
門倉(かどくら)千春(ちはる)は、この春大学を卒業したばかりの社会人一年生。新卒で入社した会社はインテリアを専門に扱う商社で、研修を終えて配属されたのは人事課だった。 そこには社長の私生児、日野(ひの)多々良(たたら)が所属していた。 社長の息子という気楽な立場のせいか、仕事をさぼりがちな多々良のお守りにうんざりする千春。 そんなある日、人事課長の朝木静から特命が与えられる。 その任務とは、『先輩女性社員にセクハラを受けたという男性社員に関する事実調査』で……!? しっかり女子×お気楽男子の織りなす、人事系ミステリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...